第54話 創生の書
世界が滅びるまで140日。傀儡の魔王を討伐して宴の後、十一回目のループに突入した。
宿舎の自室で目を覚ましたすみれは、机の上の日記を見て日付が三か月前まで戻ったことを確認すると、身支度を整えて宿舎から出る。
千尋のもとに向かい、ヤマトの集落の外で待つ魔王の分身と会い、白の遺跡の隠し部屋に向かう。千尋に水晶に触れてもらい、今までの記憶を思い出してもらう。
そこまでが、今のところのルーティンである。
その翌日、すみれはフィーデスたちの隠れ家の前までやってきた。
少しの間待っていると、木の影からフィーデスが姿を現す。すみれの姿を見たフィーデスは、安堵の表情を浮かべる。
「お互い無事で良かった。早速だが、話し合いをしよう」
「はい」
そして彼らは、隠れ家の中に入った。
すみれが隠れ家の中央にある大きなテーブルの前の椅子に腰をかけると、フィーデスたちが何か書かれた数十枚の紙の束を持ってきて、テーブルの上に乗せる。
「これは、この世界で起きている異変に、関係ありそうな書物の内容をまとめたものだ」
時間が巻き戻ってしまうと、自分たちの記憶以外は全てその時間まで巻き戻ってしまう。だからこの紙も、己の記憶を見返して書き直したのだ。
「それは……本当に、お疲れ様でした」
「魔王さまの苦しみと比べたら、どうってことないさ」
すみれの労いの言葉に、フィーデスはそう返す。
フィーデスの言葉にすみれは何も言えなくなる。
おそらく、彼の本心だ。
何よりも大切な魔王を救う為なら、フィーデスたちはなんでもできてしまう。
空気が静まり返ったことに気づき、フィーデスはそれを切り替えるように言う。
「じゃあそろそろ、話し合いを始めよう」
「はい、分かりました」
すみれも気持ちを切り替えるように頷いた。
フィーデスはテーブルの上に順に資料を広げていく。
「まずはこれを読んでくれ」
そう言ってフィーデスはすみれに資料を数枚手渡す。
「これは、創生の書の一部を抜粋したものだ」
「創生の書?」
「この世界の成り立ちについて書かれている。まあ、おとぎ話みたいなものだがな」
すみれは丁寧に書き写された文章に目を通す。
この世界は、二柱の神によって創られた。
一柱は大地と海を。一柱は人間と魔族を創った。
そして二柱の神は世界から姿を消した。
そこから、人間と魔族の世界が始まった。
そこで一度文章が終わり、いくつか行を空けたところから、再び文章が書かれていた。
人間と魔族が文明を確立した頃、二柱の神が姿を現した。
この世界は、十二の月を越えた後、滅ぶだろうと告げた。
滅びの理由を突き止めて、世界を救えと告げた。
人間で最も勇気ある者と。魔族で最も知恵ある者。
一人は世界を救う筆頭に。一人は世界を留める楔に。
たとえ滅びが近づいたとしても、その前まで何度も時を戻そう。
世界が救われて、時が再び進むまで。
次話は10月28日に投稿予定です。




