第53話 情報収集2
その翌日は、千尋とリュウが担当だった。
千尋が傍にいる安心感を覚えつつ、すみれは気になったことをリュウに尋ねる。
「リュウさんが「リレヴァーメン」をやり始めたきっかけとかって、あるんですか?」
見た目からして、リュウの年齢は四十代くらいだろう。こちらの世界に来ているプレイヤーも、十代や二十代が多く、一回り以上離れているリュウは、少し浮いて見えた。
「元々は、俺の娘がやっていたんだけどね」
リュウには、高校生の娘がいる。娘が流行に乗って「リレヴァーメン」を始めて、リュウ自身はその時はほとんど興味がなかった。
だがある日、娘が部活動の合宿で、しばらくゲームをプレイできなくなるからと、その間だけやってほしいと頼まれた。
基本的な操作を教わり、リュウは娘の代わりにゲームを進めた。最初は頼まれたからやっていただけだったが。
「気づいたら、俺もハマっちゃってね」
娘のデータでやっていたが、自分のデータを新しく作り直した。そこから、会社から帰宅して夕食の後は、ほぼ毎日プレイするようになっていた。
それからは時々娘とオンラインプレイをしたり、その後にプレイし始めた妻にプレイの仕方を教えたりした。その日々はリュウにとって、とても楽しい日々だった。
「それで、あのメンテナンス明けにログインしたら、この世界に来ていたわけさ」
リュウの言葉を聞いて、千尋が尋ねる。
「そういえば、リュウさんの娘さんや奥さんは……」
心配そうな千尋に、リュウは微笑む。
「それは大丈夫だよ。あの二人はまだ、レベルが50になっていなかったから、こっちに来ていないと思うよ」
それを聞いて千尋とすみれはほっとする。
そうだ。この世界に来たプレイヤーには、自分たちもそうだが、家族がいる。もしかしたら、家族や大切な人と一緒に来てしまった人もいるかもしれない。
この世界に来て、色々ありすぎて忘れてしまっていた。
「だからかな……」
そう言ってリュウは、すみれと千尋の頭を軽く撫でる。
「君たちは娘と年が近いから、余計に心配しちゃうのかもしれないね」
そしてさらに翌日は、スグリとタケルが担当だった。
簡単な依頼を終えた後、すみれは二人に尋ねる。
「お二人は、最初会った時からよく一緒にいますけど、元の世界でもお知り合いだったんですか?」
我ながら、かなり攻めた質問だと思った。
スグリはまだ、こちらが彼の秘密を知っていることに気づいてはいないだろうが、果たしてどう答えてくるか。
「いや。タケルとは、こっちに来てから初めて会ったんだ。オレもタケルも、ヤマトの集落に近いところで目を覚ましたから、そこから何となく一緒にいる感じかな」
「ええ。こっちで初めて顔を合わせた時、見た目ですぐスグリくんだって分かったわ。一人にしていると、すぐ女の子たちに囲まれちゃうから、依頼が終わるまでは一緒にいるってわけ」
「……はは、面目ない」
タケルの言葉に、スグリは苦笑する。
二人の言葉を聞いたすみれは、少し安堵した。
もしも、スグリとタケルが元の世界で知り合いだった場合、本物のスグリを知っていたタケルが危なかったかもしれない。
「リレヴァーメン」をプレイしていた頃はまだ、本当にスグリというプレイヤーがいたのだと思う。それをどういう方法かは分からないが、イウスティオが成り代わったのだろう。その時点で本物のスグリは死んでしまった可能性が高いが。
すみれはこれ以上、ここで二人に質問しようとは思わなかった。
本物のスグリしか知らないようなことを聞いて、スグリが答えられなかった場合、こちらに刃を向ける可能性は充分ある。
それに、タケルがスグリの仲間である可能性も、まだ残っているのだから。
次話は10月14日に投稿予定です。




