第49話 今度は最初から二人で
陽の光を感じて、すみれは自室のベッドの上で目を覚ます。
机の上にある日記を見て再び三か月前まで時間が巻き戻ったことを確認すると、すみれは身支度を整えて宿舎から出る。
そして朝の人通りが少ない道を、怪しまれない程度に警戒しながら進み、千尋が寝泊まりしている宿舎へ向かう。
千尋の部屋の前まで来ると、すみれは扉をノックする。
「先輩、おはようございます。すみれです。今、大丈夫でしょうか」
するとすぐに足音が聞こえてきて、鍵が開く音の直後に扉が開かれる。そこには、まだ少し眠そうな千尋がいた。
「……すみれちゃん? おはよう、どうかした?」
千尋の様子を見て、すみれは察する。
やはり、前のループの記憶はないか。ならば、予定通りに行動しよう。
「先輩にお願いがあるですが―――――」
千尋の身支度が整った後、すみれは千尋を連れてヤマトの集落を抜け出す。そしてすぐに人間の少女に姿を変えた魔王の分身を見つける。
魔王は二人を見て小さく頷いて言う。
「じゃあ行こう。お姉ちゃん、お兄ちゃん」
魔王とすみれと千尋は、白の遺跡の裏側まで行くと、転移魔法で遺跡の隠し部屋に入る。
そしてすみれは部屋の中央にある水晶を指差して、千尋に言う。
「その水晶に触れてください。それで今までのことを、思い出すことができます」
「よく分からないけど……分かった」
千尋は少し困惑しつつも頷くと、水晶に右手で触れて魔王の過去と、すみれが、この世界で何をしたのかを見始めた。
しばらくして、千尋は水晶から右手を離した。そして少し離れたところで見守っていたすみれに近づき、彼女の頭をそっと撫でる。その顔は穏やかだ。
「約束通り、思い出させてくれてありがとう。スグリさんのことは、僕に任せて」
千尋の言葉と表情に、すみれと魔王はほっとする。
どうやら、記憶を取り戻したようだ。
その後、すぐに魔王が、すみれが前回のループで何をしたのか確認する為に。水晶に手を触れる。
すみれの記憶を見た魔王は、水晶から手を離すと、どこか懐かしそうで寂しそうな表情をしていた。
「……会ったのだな」
魔王の言うそれが、フィーデスたちだということは、すぐに分かった。
「会わなくていいのですか?」
すみれが尋ねると、魔王は首を横に振る。
「良い。今会うのは互いに危険なだけだし、この状態で会えば……あ奴らを苦しめてしまうだろうからな」
そう言って魔王は微笑んだ。その微笑みがあまりにも美しくて儚くて、すみれも千尋も何も言えなくなった。
次話は、8月19日に投稿予定です。




