第47話 協力
フィーデスの話を聞いて、すみれは納得した。イウスティオに仲間の多くを殺され、復讐心に駆られながらも、耐えてきたのだ。隠れ家で残りの仲間を殺されれば、あれくらい警戒されるのは当然だ。
それでも、一日後に来て良かった。
もしも三人の仲間が殺された当日に自分がここに来ていたら、フィーデスにナイフを突きつけられるだけでは、済まなかったのかもしれない。
その考えが顔に出ていたのか、フィーデスはばつが悪そうに言う。
「お前があの人間と一緒にいたのを見たからな。俺まで殺しに来たんだと思ったんだよ」
確かに、自分は最強の七人として、スグリと一緒に行動していることが多い。フィーデスから見たら、そう思うのは当たり前だし、自分もフィーデスの立場だったら同じように考えるだろう。
「それで、フィーデスさんたちは……」
不安そうな顔のすみれに、フィーデスは大きく頷く。
「お前は命の恩人だ。もちろん協力する」
その言葉を聞いて、すみれは顔をぱっと明るくさせる。
「ありがとうございます!」
「ただ、この隠れ家は捨てる。イウスティオにばれた以上、ここに居続けるわけにはいかない。お前たちも、それで構わないな?」
フィーデスが振り返り確認すると、仲間の三人は頷く。
そして、仲間三人が一度死んでいることから、本格的に協力関係になるのは、次のループからということになった。
「同じループで二度生き返ることは出来ないからな。せいぜいこいつらと次のループまで逃げ切ってみせるよ」
隠れ家の場所は夢を通して伝えると言って、フィーデスたちは森の奥に消えていった。
フィーデスたちを見送った後、すみれは今の時刻を確認する。木の影の位置はそこまで変わっていない。おそらく、そこまで時間は経っていないだろう。ならば、ここからは予定通りに行動しよう。
すみれは、周囲を一回見回した後、人界の方へと歩き出した。
そして日が落ちかけている頃、すみれは一人、ヤマトの集落に戻ってきた。
すみれのもとにいち早く駆け寄ってきたのは、スグリだった。
「スグリさん、どうしたんですか?」
もしかして、こちらの行動に感づかれたか。
そう警戒しつつ、すみれは努めて冷静に尋ねる。
「依頼を受けたから、スミレさんも誘おうかと思ってたんだけど、集落のどこにもいないから、少し心配してたんだ」
覚えのある言葉に、すみれはひとまず安心する。そして、その時と全く同じ言葉を返す。
「すみません……ヤマトの人から依頼を受けたので、それで出かけてました」
申し訳なさそうに言うと、スグリはあの時と同じように、気にしていない様子で笑う。
「いや、前もって言ってなかったからね。全然大丈夫だよ」
会話の流れはまだあの時と同じだ。このまま明日の話になってくれれば。
だが。
「ところで、何の依頼を受けたか聞いてもいい?」
あの時とは違うスグリの問いにすみれは一瞬動揺するが、すぐに気持ちを落ち着かせる。
大丈夫だ。そんなことを聞かれてもいいように、依頼自体は本当に受けてある。
すみれは依頼の内容が書かれている依頼書を、スグリに渡す。
「この世界の兵士の方たちがレベル上げをする為に、補助魔法でサポートできる人を求めていたので、その依頼を受けました」
依頼書を見たスグリは、特に怪しむ素振りは見せず、ありがとうと言ってすみれに依頼書を返した。
すみれは心の中で安堵する。
どうやらフィーデスたちと会ったことは、気づかれずに済んだようだ。
「明日は依頼に誘っても大丈夫かな?」
以前と同じ会話に戻ったことに気づき、すみれは頷く。
「はい、大丈夫です」
「ありがとう。じゃあ、また明日!」
そう言ってスグリは、集落の雑踏に消えていく。
スグリの姿が完全に見えなくなったところで、千尋がすみれのもとに来る。
「スグリさんと何か話していたようだけど、大丈夫だった?」
少し心配そうな千尋に、すみれは安心させるように微笑む。
「ありがとうございます。大丈夫でしたよ。ところで、私が出かけている間は、どうでしたか?」
「特にスグリさんに怪しい動きはなかったよ」
それを聞いてほっとした顔のすみれの肩に、千尋がぽんと手を乗せる。
「スグリさんのことは僕が見ておくから、すみれちゃんは遠慮しないで自由に動いていいからね」
「はい、ありがとうございます」
そう言いながらすみれは、秘密を一緒に抱えてくれる人がいることの心強さを噛みしめていた。
次話は7月22日に投稿予定です。




