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回復魔導士は私だけ  作者: たまごがわ
第4章
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第46話 臆病者

 魔族の仲間が全て生き返った後、魔族の男はすみれに頭を下げた。

「疑ってすまなかったな。仲間を生き返らせてくれて、ありがとう」

 そんな魔族の男にすみれは首を横に振る。

「いいえ。仲間の方を亡くされたばかりで、疑うのは当然です」

 そして魔族の男は、気づいたように言う。

「そういえばまだ名乗っていなかったな。俺の名はフィーデスだ」

「私もまだでした。私はすみれです」

 それからフィーデスは、ふと気づいたようにすみれに尋ねる。

「ここに来られたってことは……ヴィオラチュームと会ったのか?」

 思ってもみなかった名前が出てきて、すみれは驚く。

「ヴィオラチュームさんをご存知なのですか?」

 すみれの言葉にフィーデスは頷く。

「ああ。俺は“ナイトメア” だからな。夢と夢で繋がって一度会ったんだ」

 ナイトメア。その名の通り、決めた相手に悪夢を見せる魔族だ。確かに夢を扱う者同士なら、そういうことも可能なのかもしれない。

「俺たちは元々、魔王さまの配下だった。だが、魔王さまの為に討伐派として行動して、この世界を元に戻す為に動いている」

 フィーデスの言葉にすみれははっとする。

「じゃあ、フィーデスさんは、この世界の時間が何度も巻き戻っていることを……」

「知っている。俺だけじゃなく、ここにいる仲間全員も」

 すみれはヴィオラチュームが、フィーデスたちに会うように言った理由が分かった気がした。確かに彼らならば、自分たちと目的が同じで、すぐに協力してくれるだろう。

 そこでふと、すみれは気づいた。

 確かに協力してくれる人数が増えるのはありがたい。だが、ここにいるのはフィーデスを合わせて四人だ。ほとんどが傀儡の魔王についていると言っても、魔王の配下ならばもう少し人数が多くてもおかしくないのだが。

 そんな疑問が顔に出ていたのか、フィーデスは複雑そうな顔をする。

「……最初はもっと仲間がいたんだ。イウスティオと名乗る人間が俺たちを裏切るまでは」

 フィーデスから出た名前に、すみれは背筋に冷たいものが流れたのを感じた。

 ここでも彼は、そんなことをしていたのか。




 フィーデスたちがイウスティオと出会ったのは、二十二回目のループの時だそうだ。

 この世界の異変を認識できる者同士、最初は互いに協力して世界を元に戻そうとしていた。その頃はまだ、フィーデスたち討伐派は二十人ほどいたという。


 だが、三十一回目のループから、状況がおかしくなっていった。

「回復魔導士がヴィオラチュームを始めに全て殺されて、この世界には最初から存在しないことになってしまったんだ」

 フィーデスたちは全て覚えている。だから、ヴィオラチュームだけがいなくなった“最強の七人”にすぐに問いただした。だが、世界がループしていることを知らない者たちは彼女のことを覚えておらず、知っているはずのイウスティオまで、彼女のことを知らないと言い出したのだ。

 だが、その時はまだ、イウスティオがヴィオラチュームを殺したという確証がなかった。それに、今までは時間が巻き戻れば、その前に死んだ者は生き返っていた。ヴィオラチュームが死んで生き返らないという異常事態に、フィーデスたちは動揺しつつも、まだ表面上ではイウスティオたちと協力することにした。

 しかし、ヴィオラチュームが死んでからは、一回のループごとに一人ずつ、フィーデスの仲間が何者かに殺されて、時間が巻き戻っても生き返らなくなってしまった。


 三人目が殺された後の夜、フィーデスとヴィオラチュームは夢の中で再会した。そこでヴィオラチュームがイウスティオに殺されたことを知った。

 そしてヴィオラチューム以外の、他の回復魔導士も次々とイウスティオに殺されていることを知り、フィーデスたちはイウスティオたちと協力することをやめた。その後すぐに、今まで使用していた隠れ家を捨てて、イウスティオに見つからないように隠れ家を変えながら、この世界を元に戻す為に奮闘した。

「だが、しびれを切らした俺の仲間の一部が、イウスティオを殺そうと、あの人間のもとに行ってしまった」

 仲間の仇を討ちたい気持ちは痛いほど分かっていたから、彼らを止めることなど、できなかった。イウスティオのもとに向かった仲間は数日後、境界の森で物言わぬ骸となって見つかった。回復魔導士が誰もいない世界で、蘇生することは叶わない。

 それに怯えず、怒りで仇討ちをしようとする者が、ここには多すぎた。

 それからも同じようにイウスティオのもとに向かった仲間たちが骸と成り果てるのが続き、仲間はフィーデスを含めた四人だけとなっていた。

 こうなるまで、どうして止められなかった。この話を聞いてそう思う者がほとんどだろう。だが、仲間を殺された。敵は人間一人だけ。倒せないわけがない。それが小さくとも頭の片隅にあれば、動いてしまう。それが全てなのだ。

 残ったのは、イウスティオ(あのにんげん)を正しく恐れた者だけだ。悪い言い方をすれば、臆病者だけが、生き残ったのだ。

 しかし、イウスティオは魔王討伐派の魔族全てを殺そうとした。

 フィーデスたちの隠れ家を探し回り、そして見つけたのだ。

 フィーデスだけが次の隠れ家探しに別行動をしていた時、イウスティオは隠れ家に残っていた仲間三人を殺した。

 フィーデスは仲間たちの亡骸を見て、頭が真っ白になった。仇討ちが脳裏に浮かぶことも、この場から逃げることも何も考えられず、立ち尽くした。

 その翌日、すみれが現れたのだ。


次話は7月8日に投稿予定です。

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