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回復魔導士は私だけ  作者: たまごがわ
第4章
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第43話 信頼できる人

 ヤマトの集落に戻ってきたすみれは、ある人物を探していた。

 この世界が巻き戻っていること。魔王が敵ではないこと。本当の敵はスグリであること。それを最初に伝える人物だ。

 遺跡で魔王に話した時から、決めていた。

 しばらく集落の中を歩いていると、見つけた。千尋だ。

 すみれは人混みの中に消えそうな千尋に何とか追いつき、声をかける。

「先輩!」

 すみれの声に千尋が振り向く。

「すみれちゃん、どうしたの?」

 不思議そうに首をかしげる千尋を前に、すみれは一度周囲を確認する。

 どうやら近くにスグリはいないようなので、ひとまず安堵する。

 そしてすみれは千尋に向き直って言った。

「先輩。少しお時間よろしいでしょうか?」


 誰にも聞かれたくない話だと、千尋を宿舎の自室に連れてきたすみれは、部屋の扉を閉めると、ようやく話し始めた。


「―――つまり、明日、僕はすみれちゃんと、その女の子について行けばいいんだね?」

 千尋の確認にすみれは頷く。

「はい。なので明日は、依頼を入れないでおいてください。それと……」

 すみれは一度間をおいて続ける。

「このことは、私達二人だけの秘密でお願いします」

「うん、分かった。ありがとう」

 頷いた千尋は感謝の言葉を述べて、すみれは思わず瞬きをする。

「先輩? なんで私にお礼を?」

 首をかしげるすみれに、千尋は優しい笑みを浮かべる。

「久しぶりにすみれちゃんが、僕のことを頼ってくれて、嬉しかったんだよ」

 そう言われてすみれは、少し顔を赤くして微笑みを返した。



 翌朝、宿舎の前で合流したすみれと千尋は、誰とも会わないようにしながら、ヤマトの集落を抜け出した。

 そしてすぐに、人間の少女に姿を変えている魔王の分身を見つけた。

 魔王の分身は千尋を見て、小さく呟く。

「……やはり、その男なのだな」

 その声がすみれと千尋に届くことはない。

「じゃあ行こう、お姉ちゃん、お兄ちゃん」

 歩き出した魔王に、すみれと千尋はついて行く。


 魔王とすみれと千尋は、白の遺跡の裏側まで行くと、転移魔法で遺跡の隠し部屋に入る。千尋が転移魔法で入った部屋を物珍しい表情で見回していると、魔王は人間の女の子の姿から、本来の姿に戻る。

「魔族!?」

 思わず槍を構える千尋を、すみれは慌てて止める。

「待ってください! 魔王さまは味方です!」

「魔王……? 味方……?」

 千尋は胡乱(うろん)げに魔王を見返して、気づく。

 魔王から殺気は放たれていない。それに、彼女から感じる魔力は、魔族にしてはあまりにも弱々しかった。おそらく、戦う力もほとんどないだろう。

 ひとまず危険ではないと判断して、千尋は槍を納める。それを見てすみれはほっとした。

「それで、僕は何をしたらいいのかな?」

 すみれの方に向き直って尋ねる千尋の表情は、少し硬いが比較的穏やかだ。

 まだ魔王のことを信じきれていないからだろうが、当然のことだろう。

 魔王がそれを察して何も言わないことに気づいたすみれは、かつて自分が魔王に言われたことを千尋に言った。

「その水晶に触れてください。それで魔王さまの過去と、私がこの世界で今まで何をしてきたのかを、見ることができます」

「分かった」

 千尋は頷くと、水晶に右手で触れて魔王の過去と、すみれが、この世界で何をしたのかを見始めた。


次話は5月27日に投稿予定です。

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