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回復魔導士は私だけ  作者: たまごがわ
第3章
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第38話 ヴィオラチューム

 ループをいくつか経ても、すみれは相変わらず悪夢を見続けていた。だが。


 ―――スミレさん、悩みがあるなら聞くよ


 ―――安心して。オレはスミレさんの味方だから


 自分以外の最強の七人に、特にスグリに精神的に支えられて、心を壊さずにいた。

 悪夢を見るのはやはり辛いが、実際に起こるよりはマシだ。ならば、しばらくはこのままの流れでループが続いても悪くないかもしれない。

 そんな気持ちから、すみれはあまり今までと違う行動をしなくなっていた。



 世界が滅ぶまで155日。


 すみれはこの日も、悪夢を見ていた。

 冷たい牢獄の中で、ずっと罪のない人たちが目の前で殺されていく。

 彼女らが死ぬ前の、恐怖に怯えた声が、ずっと耳に残って離れない。

 でも、大丈夫だと自分に言い聞かせる。

 これは夢だから、実際に誰かが死んでいるわけではない。それに、自分にはスグリも千尋もタケルもアマリリスもリュウもエニシダもいる。彼らが自分を支えてくれるから、何度でもこの悪夢に立ち向かえるのだ。

 しばらく耐えていれば、そのうち悪夢から目覚められる。

「―――――それじゃあ、覚める悪夢も覚めないですよね」

 そんな声が聞こえた直後、すみれの前で広げられていた惨劇は消えていて、真っ白な空間が無限に広がっていた。

 いつの間にか手足を縛っていた縄も無くなっていて、すみれは戸惑いながら立ち上がる。

「安心してください。もうこれ以上、あなたはこの悪夢を見ることはありません」

 穏やかな声が聞こえた方を振り向くと、淡い緑色のローブを纏った女性が立っていた。被っているフードから、暗めの茶髪が零れている。この女性に見覚えはない。

「本当はもう少し早く助けたかったのですが……死人なのでどうしても制限がかかってしまいまして」

 申し訳なさそうにする女性の言葉に、すみれは少し驚く。

 死人。つまり女性は既に死んでいるということか。ならば、彼女はどうして自分を悪夢から助けてくれたのだろうか。

 そんな疑問をすみれの表情から察したらしい女性は、はっとした様子でフードを外す。

「自己紹介が遅れてしまいましたね。私の名前はヴィオラチューム。あなた方の前に「最強の七人」と呼ばれていたうちの、回復魔導士です」

 そう言った碧眼の女性は、どこかすみれと姿が似ていた。


 自分たちの前に「最強の七人」と呼ばれていたうちの、回復魔導士。ということは、ヴィオラチュームはプレイヤーではなく、おそらく元からこの世界にいた人物ということか。

 だが、まだ分からない。

「……あなたはどうして私を助けてくれたのですか?」

 いくら同じ回復魔導士と言っても、会ったことすらない人物だ。それも死んでいるのに、助けるとは、一体どういうことなのだろうか。

「あなたを助けたのは、魔王と同じく、この世界の異変を止めてほしいからです。そして、あなた方の本当の敵を知ってほしいからなのです」

「本当の、敵?」

 ヴィオラチュームの言葉に、すみれの心がざわつく。

 何か、知りたくないことを知ってしまう。そんな気がした。

 すると、二人の目の前に直径2メートルほどの薄紅色の水晶が現れる。

 そして、ヴィオラチュームは水晶を指さす。

「これは、白の遺跡にあるものと同じです。それに触れて、私の過去を見てください」

 そう言われるが、すみれはすぐに水晶に触れられなかった。

 きっと、これは見なければならない。それは分かっているが、怖くて仕方ない。

 果たして自分に、受け止められるのか。

 そんな不安から手が震えてしまう。だが、ヴィオラチュームの両手で優しく手を包まれる。夢の中だからか、死人でも彼女の手は、温かい。

「……大丈夫です。あなたが水晶に触れられるまで、待ちますから」

 優しい微笑に、すみれの心は落ち着いていき、やがて手の震えも止まった。

「ありがとうございます。きちんとあなたの過去を、見てきます」

 覚悟なんてできていない。それでも、見る勇気は出た。

 そしてすみれは、水晶に右手でそっと触れた。

 直後水晶は真っ白な光を放ち、すみれの頭の中に映像が流れ込んできた。


次話は3月18日に投稿予定です。

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