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回復魔導士は私だけ  作者: たまごがわ
第3章
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第37話 仲間なんだから

 魔王に会ってからも、すみれは悪夢を見続けていた。だが、他の誰にも。特に千尋に心配をかけたくないと、すみれは何事もないようにふるまい続けた。


 世界が滅ぶまで、190日。

 レベル上げの為に受けた依頼をこなして、ヤマトの集落に帰ってきた時、すみれは同じパーティにいたスグリに、唐突に声をかけられた。

「―――スミレさん、大丈夫?」

「え?」

 すみれはスグリの言葉の意味が分からず、目をしばたたかせる。

「最近、顔色が悪いから心配しちゃってさ」

 スグリにそう言われ、すみれは思わず自分の頬に触れる。

 隠していたつもりだが、気づかれてしまったらしい。

 もう隠せないと悟り、すみれは観念して答える。

「……毎晩、夢を見るんです。それが怖い夢なので、眠るのが怖くなってしまって」

 もうあの出来事は無かったことになった。覚えているのは、自分だけだ。

 だから、無いことの残滓(ざんし)への悩みを、覚えていない人に背負わせる必要はない。

「すみません。夢くらいで心配をかけてしまって。でも、大丈夫ですよ」

 スグリを安心させるように、すみれは微笑む。だが、スグリの表情は険しいままだ。

「……無理しちゃだめだよ。たかが夢だなんて思っていないし、辛い時は辛いって言っていいんだよ」

 すみれの顔に張り付けていた笑みが剥がれそうになる。

「このくらいの悪夢に、私は負けませんから」

 全然平気だと、再び笑顔を張り直す。それでも、スグリは引かない。

「一人で抱え込まないでくれ。オレたちは仲間なんだから、もっと頼ってほしいんだ」

 仲間という言葉に、すみれは瞠目する。


 ―――やってくれるよね? ウチら“友達” なんだから


 過去に言われた、自分を利用する為だけの言葉とは、まるで違う。本当に、“仲間”だと思ってくれている。

 スグリの言葉に、すみれは気づいたら泣いていた。

 そうか。人に話すだけで、苦しみを認めてくれるだけで、こんなに心が軽くなるのか。

 突然泣き出したすみれに、スグリは慌てる。

「ど、どうしたの!? オレ、何か悪いことでも言ったかな?」

 おろおろするスグリに、すみれは首を横に振る。

「……いえ。ありがとうございます、スグリさん」

 涙を拭いながら、すみれは久しぶりに、作らずに笑顔を浮かべることができた。


 それからまた時が経ち、最強の七人で魔王を倒した。そして宴の後、世界は再びループした。


 ループした最初の頃に魔王の分身と会って情報を共有し、その後はレベル上げの為に依頼をこなして、また魔王を倒す。

 それを繰り返しているうちに、すみれが来てから、この世界のループは八周目に入っていた。


次話は3月4日に投稿予定です。

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