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回復魔導士は私だけ  作者: たまごがわ
第2章
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第34話 壊滅後

 すみれたちが拉致された人々を、ヤマトの集落へ運んでいる頃、ナオとイウスティオが、教会からほど近い場所にある酒場で話をしていた。

「―――イウスティオさん。彼女が即死魔法を覚えているなんて、聞いていませんよ」

 少し責めるような言い方に、イウスティオは眉を下げて謝る。

「ああ。それは本当に悪かったと思っているよ。まさか回復魔導士にそんな力があるなんて、思っていなかったからな」

 今まで会ったことのある回復魔導士は、すみれほどのレベルではなかった。だから情報があまりにも少なかったのだ。

 そのせいで、信者たちはほぼ全て死亡し、「モーサ・アウェクリアス」は事実上、壊滅してしまった。

「初めて大きく動いてみたから、“今回”は仕方ない。あの回復魔導士をどうにかするのはまた次の機会にするさ」

 イウスティオの話に区切りがついたのを察したナオは、静かな口調で尋ねる。

「ところで、あの二人はどうするんですか?」

 あの二人とは、すみれを攫う為に助けた大志と絵美里のことだ。

「あいつらはしばらく必要ないから、放っておく」

 すみれを動揺させる目的はある程度成功したが、あまり効果があったとは言えない。ならば、余計なものは不要だ。

 ここであの二人を殺すのは簡単だが、それですみれに、自分の正体に気づかれる可能性が少なからずあるのなら、リスクは冒すべきではないだろう。

「今これ以上動いても、彼女を殺すことも手元に置くのも難しいだろう。今回のループは、あとはいつも通りに動くつもりだ」

「分かりました」

 イウスティオの言葉にナオは頷く。すると、イウスティオはナオに笑いかける。

「今のうちに言っておくけど、次のループでも頼むぞ」

 そんなイウスティオに、ナオは苦笑いを浮かべる。

「俺はあなたみたいに、次のループ後に記憶を引き継げないのですが……」

「心配ない。オレがまた口説きに行くからさ」

 そう言ってイウスティオが笑うと、ナオもつられて笑う。


 きっと、その前も、もっと前も、そうやって彼に口説かれてきたのだろうから。



 夕方頃、すみれたちはヤマトの集落に到着した。そこですみれはすぐに、「モーサ・アウェクリアス」によって殺された人々を蘇生魔法で生き返らせた。

 彼らは生き返った直後は、殺された恐怖を思い出して混乱していたが、やがて落ち着きを取り戻すと、すみれたちに礼を言って、自分たちが暮らす町に帰っていった。


 その後すみれは、最強の七人の仲間を集めて、教会へ連れ去られた時のことを話した。

 話している間にすみれはその時の恐怖を思い出し、体は震え始め、顔が青くなっていった。

 そんなすみれに、千尋が彼女の肩にそっと手を置いて言う。

「これ以上、無理に話さなくていいよ」

「でも……」

 話さなければ。教会の中にいたプレイヤーは自分だけだ。だから、覚えている範囲は全て話さないと。

 話を続けようとするすみれを、リュウも止める。

「チヒロ君の言う通りだよ。ここでお嬢さんが無理に話す必要はない。大事なことはしっかり言ってくれたからね」

 リュウの言葉に、他のメンバーも同意するように頷く。

 そんな彼らの気遣いに、すみれは感謝の言葉を述べる。

「……はい。皆さん、ありがとうございます」

 すみれは深呼吸をして、気持ちを落ち着かせる。いつの間にか速くなっていた鼓動も、徐々に元の速さに戻る。

「でもまさか、プレイヤーの中にそんな人がいるなんて……」

 エニシダが肩を震わせて呟く。

 プレイヤーの中に、「モーサ・アウェクリアス」の方につき、罪のない人々を殺していた。それはすみれから話を聞いた今でも、信じられない。いや、信じたくないことだった。

「確かに単純に裏切ったかもしれないけど、その教祖っていうのが高レベルの魔導士とかだったら、魔法で彼を操っている可能性もあるな」

 スグリが顎に手を添えて言ったことにも、千尋たちは頷く。

 「リレヴァーメン」において、敵を操るような魔法や攻撃は無い。ここはリレヴァーメンの元になった世界だが、完全に同じわけではないだろう。魔法などで人を操れる可能性も考慮するべきかもしれない。

 すみれは、大志と絵美里のことは話さなかった。千尋たちに話すことを止められなかったとしても、話すつもりは全くなかった。

 絵美里はともかく、大志は千尋の友人だった。たとえ縁を切ったとしても、あのことを知ればきっと、千尋は悲しむと思ったのだ。

「ほら、今日はここまでにして、スミレちゃんは早めに休みなさい」

「そうそう。今回一番あんたが頑張ったんだから、しっかり休みな」

 タケルとアマリリスから言われ、すみれは微笑む。

「はい、ありがとうございます」

 本当に、自分は恵まれている。

 最強の七人からの温かい言葉に、すみれの心も温かくなった気がした。



次話は1月22日に投稿予定です。

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