第33話 デメリット
罪のない人たちと、信者たちの亡骸が転がる牢獄で、すみれは即死魔法のデメリットを受けていた。ゲームではクエストクリアになった為、デメリットは全く関係なかったのだが、今は違う。もしも後から、この教会の外から誰かが来たら、自分は確実に殺されるだろう。
即死魔法によって逆に自分の命が危機に陥ってしまったのを感じながらも、すみれは逃げることが出来ずにいた。
その時、誰かの足音がこちらに向かっているのが聞こえて、すみれは呼吸が早くなるのを感じた。もしかしたら、ナオが死なずに戻ってきたのかもしれない。
足音がどんどん近づいてくるのを聞くことしかできずにいると、すみれの耳に聞きたかった声が入り込んできた。
「―――すみれちゃん!?」
千尋だ。
千尋は、すみれがいる牢獄の扉の鍵を壊して、すみれのもとに駆け寄る。見たことがないほど白くなったHPゲージと赤く染まった服に顔を青くしながらも、千尋はすみれの手首と足首の縄を外した。
そして自分が纏っているマントを外し、すみれの肩にかけて、彼女に尋ねる。
「……一体何があったの?」
千尋がいたパーティは、教会の近くに潜み、侵入する機会をうかがっていた。しばらく待っていた時突然、教会の周囲にいた兵士たちが倒れたのだ。彼らのHPゲージが真っ白になっているのを確認すると、千尋たちは他のパーティと共に、教会に侵入した。
教会の中にいる信者たちと戦うかと思っていたが、外にいた兵士と同様に信者たちは全員が倒れていて、既に死んでいることを確認したのだ。そして、姿の見えない教祖や幹部を探していた時、牢獄で囚われていたすみれを見つけたのだ。
千尋の話を聞き、すみれは他の信者たちも即死魔法の範囲内だと知った。不安そうな顔をしている千尋に、すみれは安心させるように微笑む。だが、その笑顔はまだぎこちない。
「……即死魔法を使ったデメリットです。もう少しで解除されると思います」
すみれの言った通り、すぐに彼女のHPは回復し始めて、間もなくHPゲージは満タンになった。
千尋はそれを見て安心しつつも、複雑な表情をする。
即死魔法。前にすみれから一度だけ聞いたことがある。あまりにも強すぎたから、使わなくなったという。
そんな即死魔法を使うほど、彼女は追い詰められていたのか。
すみれが「モーサ・アウェクリアス」に狙われる可能性は高いと分かっていたはずなのに、すぐに回復するから大丈夫だと、どこかで油断していた。
ちゃんと気にかけていれば、彼女に痛い思いをさせずに済んだかもしれないのに。
拳を握りしめている千尋に、すみれは彼が考えていることを察して、あえて話を変える。
「あの、先輩。この人たちを……」
そう言ってすみれは牢獄の扉の近くで折り重なって倒れている、女性たちの方を見る。
「教会の……幹部に殺された方たちです。なので、早く生き返らせたくて」
すみれの言葉に千尋ははっとして、一度深呼吸をすると、頷いた。
「うん。僕たちでまずは安全な場所に運ぶから、その後は頼めるかな」
「はい、もちろんです!」
千尋の顔に少し笑みが戻ったことに、すみれは安心しつつ言葉を返した。
次話は1月8日に投稿予定です。




