第30話 雨中の作戦
翌日、スグリはプレイヤーたちに宗教団体「モーサ・アウェクリアス」の壊滅の依頼について説明し、四人パーティで十組、計四十人が参加することになった。そして念には念を入れて、宗教団体の人数が予想よりも多かった場合に備えて、他に三十人が隣町付近で待機することになった。
すみれは、今回同じパーティになるプレイヤーたちのもとに向かい、その内二人の顔を見て瞠目する。
「……久しぶりだな、雲井」
どこか気まずそうに、美術部部長の伊刈大志が声をかけてきた。その横には、美術部員の太田絵美里もいる。
「……伊刈先輩たちも、こちらの世界に来ていたんですね」
すみれは努めて冷静に返す。喉に力を入れていないと、声が震えそうだった。
そしてすみれは気づく。絵美里はいつも吉田麗美、柴田亜里沙と一緒にいたのに、その二人がいない。他のパーティにいるのか、別の集落にいるのか。それとも、とそこですみれは考えるのをやめた。
彼女たちのことは苦手だったが、そこまで恨んではいない。
「―――君たちもしかしてリアルの知り合い? 交流を温めるのは、全部終わってからにしてよ」
もう一人のパーティのメンバーであるナオに言われて、すみれたちははっとする。もう時間か。
互いに思うことはあるが、今はそれを考えている場合ではない。
さあさあと雨が降る中、「モーサ・アウェクリアス」壊滅作戦が開始された。
作戦としては、「モーサ・アウェクリアス」の教祖と幹部を拘束して、一気に壊滅に追い込む。言葉にすると簡単だが、実際はそう簡単にはいかないだろう。
元々、「リレヴァーメン」の攻略サイトを運営していたプレイヤーたちの調査によると、この作戦を予期してか、教会の周囲には手練れと思われる兵士が複数いて、それ以上の情報が掴めていないという。
他にもプレイヤーたちを迎え撃つ暗殺者を何人か雇っている可能性があることから、それらを先に倒す為、すみれたちはあえて境界の森を進んで、件の暗殺者を探していた。
教会がある町の傍の境界の森を進む中、すみれたちは三人の暗殺者を倒していた。ここから町まではあまり距離はない。こちらにはもう暗殺者はいないのだろうか。
一度歩みを止めたところで、ナオが、すみれに向き直る。
「―――さて、ここら辺でいいか」
「え?」
そんな声が聞こえた直後、すみれの鳩尾に拳が叩き込まれる。
「……っ」
突然の痛みに、すみれは悲鳴も上げられずに、その場にうずくまる。
動けないすみれを、ナオが軽々と抱き上げる。
「君たち、ご苦労だったね。後はこの子がいないことを、しばらく誤魔化してくれればいいから」
そして男は、そのまま雨の中に消えていった。
二人きりになった大志と絵美里はその場に立ち尽くす。こうなることは分かっていた。すみれを拘束する為に協力するよう、頼まれたのだから。
「……これで良かったんだよ」
大志は、自分に言い聞かせるように呟いた。
次話は、11月27日に投稿予定です。




