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回復魔導士は私だけ  作者: たまごがわ
第2章
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幕間2

 そろそろ、このループに気づくと思っていた。他の回復魔導士もそうだったから。

 近頃のループでは使っていなかったものを動かす時が来たようだ。

 そして、今まで放置してきた、彼女の周りの人間もそろそろ使おう。

 失敗しても問題はない。彼女は他の者にはこのことを話していないようだし、いくらでもやり直すことができるのだから。




 世界が滅ぶまで、339日。

 夕暮れの薄暗い境界の森の中を、大志(たいし)麗美(れみ)絵美里(えみり)が必死に駆けていた。

 十数分前にこの世界に来て、森を抜け出そうとした時に魔物が現れ、倒そうとしたところ、攻撃魔法を使っていた亜里沙(ありさ)が、魔物に一瞬で殺されてしまったのだ。

 そこから逃げ出した大志たちだったが、次の獲物を狙うように、魔物は大志たちを追いかけてきていた。

 その後、大志から牽制するように言われ、麗美が弓を(つが)え、絵美里が攻撃魔法を魔物に向かって放とうとする。だが、麗美も魔物に一撃で殺されてしまう。それを見て、絵美里は少し先を走る大志と再び逃げ出した。

 二人だけになった息遣いと、魔物の足音が夜になった森の中に聞こえる。

 走り続けられればいいのだが、体力の限界というものがある。

 やがて絵美里の足がもつれて、転んでしまう。すぐ後ろには、疲れを知らない様子の魔物が迫ってきていた。

「……待って、部長……」

 苦しげな声で助けを求める絵美里を見た大志だったが、すぐに前を向き、走っていく。

「待って、部長……助けて、助けてよ……!」

 もう駄目だ。絵美里がそう覚悟して目を閉じた時。

 魔物の叫び声がした直後、魔物の気配が消える。いつまでも魔物が攻撃して来ず、絵美里は恐る恐る目を開ける。すると、絵美里の目の前には、いつの間にか黒に近い灰色のローブを纏った者が立っていた。

「―――大丈夫かい?」

 若い男の声に、絵美里は頷き、ゆっくり立ち上がる。その様子に安堵したようにローブの男は唯一見える口元に微笑を浮かべる。

 そこへ大志が駆け寄ってくる。大志は居心地が悪い表情をしていた。そんな大志を責めたくなる絵美里だったが、何も言わない。きっと、自分が大志と同じ立場ならば、見殺しにしていただろうから。

 魔物がいなくなり、微かに風の音がするだけの境界の森の中で、灰色のローブの男は二人に言う。

「君たちは違う世界から来たんだろ? 他にもたくさん君たちみたいな人たちが来ているんだ。ここから一番近い集落まで案内するよ。そこなら、魔物に遭遇することもないからな」

 灰色のローブの男からの提案に、大志と絵美里は頷く。これ以上、この森にい続けたくなかったし、早く安全な場所に行きたかった。

 大志と絵美里の頷きに、男は嬉しそうに再び微笑む。

「頷いてくれて嬉しいよ。じゃあ、オレについてきてくれ」

 そして男は彼らに背を向けて、歩き出す。だが、すぐに何かに気づいたように足を止める。

「そういえば自己紹介がまだだったな。オレの名前は“イウスティオ”だ。これからよろしく頼むよ」


次話は10月16日に投稿予定です。

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