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回復魔導士は私だけ  作者: たまごがわ
第2章
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第27話 三度目

 それからすみれは、今までの行動を(かえり)みながら、時々違う行動をとってみた。それでも、あまり変化を感じることが出来ないまま、魔王討伐の日が来てしまった。

 すみれたち最強の七人は、今までと同じように魔王の居城に侵入し、魔王の座する場所まで辿り着いた。

「―――――来たか」

 厳かな声でそういう言う魔王の姿に、すみれはそっと目を伏せる。

「よくぞ来たな。異邦の強者たちよ」

 操られている魔王の言葉を聞いているだけで、胸が苦しく、許されるのならば、耳を塞ぎたかった。

「さあ! この世界を滅ぼすのを止めたくば、余を倒してみせよ!」

 戦う気力に満ち溢れたスグリたちとは対照的に、すみれは複雑な気持ちのまま、彼らに補助魔法をかけた。

 すみれのそんな気持ちが表情に出ていたのか、千尋が、すみれの頭を優しく撫でる。

「大丈夫。必ず魔王を倒してくるから」

 そんな千尋にすみれは曖昧に頷く。どうやら魔王討伐に不安を抱いていると思われたらしい。これからは、あまり顔に出さないようにしなければ。

 すみれが頷くのを確認すると、千尋は他の五人と同じように武器を構えて魔王の方へ駆け出した。


 三度目の戦いも、今までとほぼ同じ流れで進んでいく。そしてセリフが決まっているように、魔王がスグリたちを憐れむように言う。

「そなたたちも、もう分かっているだろう。そなたたちの攻撃では、余の命には届かない」

「それでも、オレたちはここで負けるわけにはいかないんだ!」

 魔王の言葉を遮るように、スグリは叫ぶ。そんな彼に魔王は呆れたように言う。

「これでもまだ、力の差を理解していないのか―――――」

 その直後、魔王は突然よろめく。それから攻撃した途端、魔王のHPのゲージは三分の二まで一気に削れた。

「畳みかけるぞ!」

 スグリの声と同時に、彼らの攻撃は激しさを増す。必死に攻撃をかわしていた魔王だったが、やがて耐えきれなくなったように、片膝をつく。

 理由は分からないが、どうやらこの世界は魔王に戦いを挑めば、確実に勝てるようにできているらしい。途中で弱体化する要因は、それしか考えられない。そして、魔王を討伐した後、この世界の時間は巻き戻る。

 そんなことを考えて、目の前で起きている望まれない戦いから目を背ける。だが、すみれはそこで一旦思考の海から浮上し、今回の「魔王の最期」を見届ける。こればかりは、目を背けてはいけない。

「これで、終わりだっ……!」

 そんな言葉と共に、スグリは魔王の胸元に刃を突き立てた。

「あ――――」

 そんな微かな声を上げた直後、魔王の瞳に小さな光が戻る。

 魔王はすみれの方に目だけ向けて、そっと微笑む。だがすぐに瞼は閉じられて、動かなくなる。微かに残った魔王の笑みに、すみれの心はつきりと痛んだ。


 スグリたちが勝利の喜びに浸る中、すみれは千尋に歩み寄り、尋ねる。

「先輩、お怪我はありませんか?」

「うん。すみれちゃんがサポートしてくれたおかげだね」

 三度目の同じ会話に、すみれの心が微かに曇る。やはり自分以外は誰も、この戦いを繰り返していることに気づいていないようだ。

「早く城の外で戦ってくれているみんなにも伝えないとだね」

「はい、そうですね」

 微笑む千尋にすみれも微笑んで返す。


 これ以上、魔王が苦しまないようにする為にも、早くこの世界を元に戻そう。

 すみれは一人、強く決意した。


次話は10月2日に投稿予定です。

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