第26話 別の行動を
気持ちを落ち着かせたところで、すみれは魔王に尋ねる。
「それで、世界が繰り返すのを止めるには、具体的にどうすればいいんですか?」
これだけ魔王はやってきたのだから、何か方法も分かっているのではないだろうか。
「分からぬ」
「え?」
予想外の返事にすみれは戸惑う。
「こうなったそもそもの原因がまだ分からぬのだ。……口惜しいがな」
魔王は言葉に歯がゆさを滲ませる。
「世界が繰り返していることに気づいた者に初めて会って、舞い上がってしまっていたな。期待させてすまない」
頭を下げる魔王にすみれは首を横に振る。
「いえ、こちらこそ……」
互いに謝った後、魔王が考える。
「だが、我らがここで別の動きをし始めれば、繰り返す世界に何か変化が起きるかもしれない」
魔王の言葉にすみれは頷く。
そうだ。今の前の時はほとんど同じように過ごした。だから今度はそれを変える。
「……と言っても、余の本体は自由に動けぬからな。そなたに頼むしかないが」
申し訳なさそうな魔王にすみれは微笑む。
「任せてください、とまでは言えませんが、微力ながら頑張ってみます」
遺跡から出たところで、魔王は立ち止まり、すみれに言う。
「このことはまだ、他の者には秘密にしておいてほしい。余はまだそなたしか信頼していないからな」
「分かりました」
そこですみれと魔王は別れた。
ヤマトの集落に一人戻りながら、すみれは考えていた。
「そうは言っても、別の行動って、何をすればいいんだろ……」
レベル上げや最終的な魔王討伐は、他のプレイヤーなどに秘密にする為には、結局やらなければならない。そこは着実にこなしつつ、何かしらやるということになるが、やはり魔王の分身と自分だけでは、できることは少ない。
どうしようかと悩んでいると、前方から誰かがこちらに向かって駆けてくる足音が聞こえてきた。見知った金髪碧眼の青年の姿に、すみれは首を傾げる。
「スグリさん? どうしたんですか?」
普段通りの様子のすみれに、スグリはほっとしたように軽く息を吐き出す。そして答える。
「依頼を受けたから、スミレさんも誘おうかと思ってたんだけど、集落のどこにもいなかったから、少し心配してたんだ」
すみれは心の中で、はっとする。
そういえば、今までは魔王といた時間は、スグリ達のパーティと依頼をこなしていたのだった。
「すみません……ヤマトの人から依頼を受けたので、それで出かけてました」
申し訳なさそうにするすみれに、スグリは気にしていないと言うように返す。
「いや、前もって言ってなかったからね。全然大丈夫だよ」
そう言われ、すみれはひとまずほっとする。
「ところで、明日は依頼に誘っても大丈夫かな?」
スグリに尋ねられ、すみれはすぐに頷く。
「はい、大丈夫です」
「ありがとう。じゃあ、また明日!」
そう言ってスグリは集落の雑踏の中に消えていった。
一人になったすみれは小さくため息をつく。
「……いくら時間が戻ると言っても、あまり人に心配はかけたくないな」
人に心配をかけず、別の行動をする。なかなかの難題なのではと、すみれは再び悩み始めた。
次話は9月18日に投稿予定です。




