表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
回復魔導士は私だけ  作者: たまごがわ
第2章
25/89

第24話 魔王

 すみれは、女の子の後をついて行き、ヤマトの都市から離れ、境界の森のすぐ近くまでやってきた。そのすぐ傍には、白い石で造られた建物があり、そこは見覚えがあった。「白の遺跡」。攻略推奨レベル30のダンジョンだ。

 だが女の子は、その遺跡の入り口には向かわず、遺跡の入り口の裏側。本来地下へと続くこのダンジョンの、地表の壁の前に来て、手のひらで触れる。

 すると、赤い魔法陣が現れ、光り輝く。直後、すみれと女の子は、遺跡の中と思われる場所にいた。すみれは驚きつつも、感心する。

 これが、ファンタジーでよく使われる転移というものか。

 すみれが、ここが遺跡の中だと認識したのは、遺跡の外と同じ白い石で壁が造られていたからだ。正方形の部屋は、四方に篝火(かがりび)が置かれていて、部屋の中を淡く照らしている。そして部屋の中央には、直径二メートルほどの薄紅色の丸い水晶が浮いている。

 時々、篝火の爆ぜる音が聞こえるだけの静かな場所で、沈黙を破ったのは、女の子の方だった。

「……まずは、こちらの正体を明かさないとならないね」

 すると女の子は、一瞬で姿を変える。その姿を見たすみれは目を丸くする。それは、この世界を滅ぼそうと宣言した者の姿だった。

「余の名はカモミール。そなたたちの言う、魔族を導く者。魔王だ」


 すみれは予想外の人物に驚くが、すぐにはっとする。

 思わず一人でついてきてしまったが、戦いになる可能性を考慮していなかった。自分には、戦う力がないのに。

 少し顔が青ざめているすみれに、魔王は穏やかな口調で言った。

「案ずるな。そなたを殺すつもりはない。むしろ、余を助けてほしいのだ」

 すみれは魔王を見つめる。

 確かに、城で見た時と違い、魔王の体からあの禍々しい魔力は放たれていない。そして何より、今の魔王には機械じみた感じがなく、生者の温かさがあった。

「助けるって一体、どういうことですか?」

 魔王への恐ろしさが少し消え、すみれは尋ねる。

「そなたも気づいただろう。この世界の時間が巻き戻り、繰り返されていることを」

 魔王の言葉にすみれは頷く。

 そうだ。“魔王”を倒すと、来るはずの明日が来ずに、三か月前に時間が戻ってしまうのだ。

「これは夢ではない。紛れもない現実だ。……もっとも、別の世界から来たお前たちには、この世界も夢のようなものかもしれないがな」

 自嘲気味の笑みを浮かべた魔王に、すみれは何も言えなくなる。確かに、自分にとってこの世界はゲームの世界のような感覚だ。だが、ゲームとは違って痛みもあるし、死ぬ可能性もある。ここは、自分たちが生きてきた世界と同じ現実なのだ。

 すみれの複雑そうな表情に、魔王は話を切り替える。

「……話が逸れてしまったな。助けてほしいというのは無論、世界が繰り返すを止めてほしいということだ。だが、まずは余の昔語りをさせてくれ」


次話は8月21日に投稿予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ