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回復魔導士は私だけ  作者: たまごがわ
第2章
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第23話 夢じゃない

 すみれは急いで着替え、乱れた髪を雑に整えて、部屋の外に出た。

 宿舎から出たすみれは、千尋を探して集落を進む。少しして、その後ろ姿を見つけた。

「先輩……!」

 すみれの声に、千尋が振り返り、優しい笑みを浮かべる。

「おはよう、すみれちゃん」

「お、おはようございます」

 三か月前にも見た同じ笑みに、すみれは嫌な予感がした。

「どうしたの? 何かあった?」

 不思議そうに見つめる千尋に、すみれはあの時と同じ言葉を言った。

「三か月間みんなでレベル上げを頑張って、魔王を倒したっていう夢を見たので……」

 そして千尋の言葉を待つ。これで、彼が前にも同じことを言っていたと指摘してくれればいい。だが。

「そっか。それが夢じゃなくて本当になるように、みんなで頑張らないとだね!」

 全く同じセリフに、すみれは絶句した。三か月前に戻っているのに、千尋は気づいていない。おそらく、他のプレイヤーたちやこの世界の住人たちも。

「すみれちゃん、大丈夫? 顔色が悪いみたいだけど」

 心配そうな千尋の言葉に、すみれははっとする。

「……大丈夫です! 今日からのレベル上げ、一緒に頑張りましょう!」

 千尋に迷惑をかけまいと、三か月前と同じセリフを、すみれは笑顔で言った。


 千尋と別れた後、すみれはヤマトの集落を見て回ったが、プレイヤーたちは普段通りの様子で、すみれのように戸惑っている者はいなかった。時々、他のプレイヤーに声をかけられて話をするが、誰も三か月前に戻っていると言わなくなった。

 やはりあれは夢だったのだろうか。いや、あそこまで鮮明な日々が夢なわけがない。

 また同じ三か月を続けなければいけないのかと困っていた時、すみれはふと思い出す。

 そういえば、「夢」から目覚めた日、集落の外に見覚えのない女の子がいた。あの子がもしかしたら、何かを知っているのかもしれない。

 今はそれに賭けるしかなく、すみれは集落の外に向かった。


 集落の外に出て、すみれは小さな女の子がいた場所まで来て、辺りを見回す。

 いない。あの子は自分に何かを伝える為にいたのではなく、偶々(たまたま)いたのだろうか。

 これからどうしようと思った時。

「―――思ったより、気づくのが早かったね」

 そんな声が聞こえ、すみれは後ろを振り向く。そこには、探していた女の子がいた。見た目よりも大人びた様子の女の子に、すみれは少し緊張しながら、声をかけた。

「……この世界について、何か知ってるんだね」

 そう言うと、女の子はすみれに背を向ける。そして一言。

「ついてきて」

 歩き出した女の子の後ろから、すみれはついていくことにした。


次話は8月7日に投稿予定です。

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