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回復魔導士は私だけ  作者: たまごがわ
第2章
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第22話 再びの宴と

 その日の夜、魔王討伐を祝して、宴が行われた。

 夢でも見た光景の中、すみれは宴をあまり楽しめずにいた。

 どこか機械じみた様子の魔王。死ぬ直前に何かを伝えようとしていた魔王。

 あれは本当に、自分達が倒すべき存在だったのか。

 ずっと頭の中で、そんな疑問が(くすぶ)っていた。

「―――ごめん。ちょっとお腹がいっぱいになっちゃった。腹ごなしに、その辺を散歩してくるね」

 少ししか食事をしていないすみれに気を遣い、千尋はそう言って彼女の手を引いて、その場から離れた。


 少し歩いたところで、千尋はすみれに心配そうに尋ねる。

「あまり料理を食べてなかったみたいだけど、具合でも悪い?」

 千尋の問いにすみれは首を横に振る。

「……いえ。少し、疲れたのかもしれません」

 魔王について考えていたなんて、さすがに言えなかった。

 だが、千尋は一応それで納得したのか、それ以上追及はせず、すみれに言う。

「じゃあ、ゆっくり休まないとだね。部屋まで送るよ」

「はい……ありがとうございます」

 千尋に気を遣わせて、申し訳ない気持ちになったが、すみれもそれ以上は何も言わなかった。

 住んでいる宿舎の、すみれの部屋の前まで二人で行くと、千尋はすみれの頭を撫でて微笑む。

「おやすみ。ゆっくり休んでね」

「はい。おやすみなさい」


 千尋を見送り、部屋に入ったすみれは、机の前の椅子に座り、日記を開く。

 夢の中では書かなかった今日の日記を、書き始める。



 世界が滅ぶまで、140日。天気は晴れ。

 朝八時、予定通りに魔王討伐作戦を開始した。

 魔王の城の前で、こちらにいる大半のプレイヤーとこの世界にいる兵士たちで、

 魔王についたひとたちと戦闘。

 その間に、七人で魔王城に突入。城の奥で魔王と戦い、勝利する。



 普段だったら、ここで書くのをやめる。だが、すみれはその続きを書いた。



 魔王に違和感があった。自分の意思で動いていないような感じがした。

 最後に魔王は、私に何を伝えようとしていたのだろう。

 私は、魔王が倒されたことを、素直に喜べなかった。



 そこまで書いて、すみれは日記を閉じた。日記の中なら、いくらでも思いを吐き出せる。その時に思ったことを、日記を開けば、いつでも思い出せる。あの魔王との戦いも。

 すみれは椅子から立ち上がると、ベッドまで行き、横になる。

 魔王のことは気になるが、それでも元の世界には帰りたい。これできっと、元の世界に帰ることができるはずだ。

 すみれは、そっと目を閉じた。



 翌朝、すみれは窓から差し込む陽の光で目を覚ました。

 目覚めに既視感を覚え、すみれは胸騒ぎがした。

 胸がざわめく中、すみれはベッドから起き上がると、机の上にある日記帳を開く。だが、中身を見てすみれは愕然とした。

「……そんな」

 昨日までは確かに書いていた日記の内容が、三ヶ月前の日付までごっそりと無くなっていた。

 同じことが二回も続けば、さすがに昨日までのことが夢だったとは思えない。

「一体どうなってるの……?」

 すみれは呆然と呟いていた。


次話は7月24日に投稿予定です。

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