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回復魔導士は私だけ  作者: たまごがわ
第1章
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第18話 勝利

 魔王は千尋たちに向かって攻撃魔法を断続的に放ってきていた。だが、それはかわすことも出来るし、(かす)ったとしても、すみれの補助魔法のおかげで、ダメージにほとんどならなかった。だが、それは魔王も同じだった。こちらの攻撃が当たっても、HPのゲージはミリ単位でしか減っていない。

 魔王は自分たちがすみれの補助魔法によって補っていることを、一人だけでこなしている。こんな耐久力の化け物を相手に、すみれがいても、こちらはいつまでもつか。そんな不安が千尋たちの心に押し寄せてくる。

 それでもその不安をかき消すように、千尋たちは攻撃を続ける。城の外ではまだ、他のプレイヤーたちが、魔王側の者たちと戦っているはずだ。彼らの頑張りを無駄にするわけにはいかない。

 そうやって懸命に向かってくる千尋たちに、魔王は憐れむような眼差しを向ける。

「そなたたちも、もう分かっているだろう。そなたたちの攻撃では、余の命には届かない」

「それでも、オレたちはここで負けるわけにはいかないんだ!」

 魔王の言葉を遮るように、スグリは叫ぶ。そんな彼に魔王は呆れたように言う。

「これでもまだ、力の差を理解していないのか―――――」

 その直後、魔王は突然よろめく。それから攻撃した途端、魔王のHPのゲージは三分の二まで一気に削れた。

 あの頑丈さに時間制限があったのか、理由は分からないが、今がチャンスなのは、その場にいる全員が分かっていた。

「畳みかけるぞ!」

 スグリの声と同時に、彼らの攻撃は激しさを増す。必死に攻撃をかわしていた魔王だったが、やがて耐えきれなくなったように、片膝をつく。

「これで、終わりだっ……!」

 そんな言葉と共に、スグリは魔王の胸元に刃を突き立てた。

「あ――――」

 そんな微かな声を上げて、魔王はその場に倒れた。HPのゲージはゼロを示す真っ白な状態になっていた。

「……終わったのか?」

 リュウがまだ弓を構えたまま、倒れた魔王を見下ろす。だが、魔王はぴくりとも動かない。

 千尋もタケルもアマリリスもエニシダも、魔王を見下ろしたまま、その場から動かなかった。突然訪れた戦いの終わりに、勝利の喜びを味わうことが出来ずにいる。

 そんな困惑した空気を壊したのは、スグリだった。

「魔王との戦いは終わったんだ! もうこの世界の滅びに怯えることはないし、オレたちは元の世界に帰ることができるんだ!」

 スグリがはっきりと言い切ったことで、すみれたちはようやく、自分達が魔王に勝利したことを実感した。

 それぞれが喜びに浸る中、すみれは千尋に駆け寄る。

「先輩! お怪我はありませんか?」

 少し心配そうなすみれに千尋は微笑みながら頷く。

「うん。すみれちゃんがサポートしてくれたおかげだね」

 普段と変わらない様子の千尋を見て、すみれは安堵する。

 HPのゲージが全く減っていなかったので、大丈夫なのは分かっていたのだが、それでも千尋本人に聞くまでは不安だったのだ。

「これで、やっと元の世界に帰れるんですね……」

「うん、やっと帰れるんだ」

 すみれと千尋はそう呟きながら、この世界に来てからの日々に思いを馳せる。

 この世界でのことが楽しくなかったと言ったら、嘘になる。危険と隣り合わせなことが多かったが、それでもとても楽しかった。だが、やはり元の世界に戻りたい気持ちが確かにある。

 元の世界でどれくらい時間が経ったか分からない。あまり経っていなければいいのだが、もしかしたら家族を心配させているかもしれない。

 自分が無事だと、安心させる為にも、早く元の世界に帰ろう。


 そしてすぐに、すみれたちは、魔王を倒したことを城の外で戦っていたプレイヤーたちと、魔王側の者たちに告げて、この戦いは終わりを告げた。


次話は5月29日に投稿予定です。

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