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回復魔導士は私だけ  作者: たまごがわ
第1章
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第17話 作戦開始

 翌日、雲一つない晴天に、魔王討伐の作戦は開始された。

 魔王側の者たちは、プレイヤーたちが来るのは予測していたらしく、冷静に対処しようとしていた。だが、向かってくるプレイヤーたちの数はかなり多く、魔王側の者たちの体制は徐々に崩れていく。

「数に圧されるな! 城に一人たりとも入れるな!」

 たちまち魔王の居城の前は戦場と化し、怒号と悲鳴が飛び交う。

 その様子を物陰から見ていた最強の七人の中で、スグリが言った。

「よし、そろそろ行くぞ」

 スグリの言葉にすみれたちは頷き、作戦通りに、戦いに紛れて魔王の居城に、抜け穴から侵入した。


 外とは違い、城の中はとても静かだった。途中で魔王の配下などが立ち塞がるかと思ったのだが、全くその気配がない。

「これって、もしかして罠なんじゃ……」

 思わずそう呟くエニシダの言葉を、スグリは即座に否定する。

「いや。魔王は必ずこの城の奥にいるはずだ」

 スグリの言葉に真実味が増すように、気づけば最強の七人の前には、大きな扉があった。この先に、おそらく魔王がいる。

 その時、動く気配のなかった扉が重々しい音を響かせながら、ゆっくりと開く。

 扉が完全に開き、再び静かになった城内で、スグリは静かに言った。

「……行こう」

 それぞれが武器を構え直し、扉の中へ入った。


 扉の向こうは、広く、とても天井の高い部屋だった。

「―――――来たか」

 厳かな声の主の姿に、すみれたちは瞠目する。

 すみれたちの視線の先にある、細かに装飾された漆色の玉座に、一人の少女が座っていた。

 薄いベージュの髪は腰に届くほどまであり、こちらを見下ろす大きな瞳は血を溶かしたように赤い。足まで隠れるほどの裾の黒いドレスは、ふんだんにレースが使われている。年は十歳いくかいかないかくらいに見える。

「よくぞ来たな。異邦の強者たちよ」

 見た目もその高い声も、(はた)から見たら可愛らしい少女だが、彼女の体から放たれる強く禍々しい魔力が、魔王であることを証明している。

 魔王は玉座から立ち上がると、すみれたちに不敵な笑みを浮かべて言った。

「さあ! この世界を滅ぼすのを止めたくば、余を倒してみせよ!」

 魔王の魔力がさらに強まる。これ以上、話をするつもりはないらしい。


 そして戦いの火蓋が切って落とされた。


 こうなることは、想定内だった。むしろ、予定通りだろう。

「補助魔法かけます!」

 その言葉と共に、すみれは自分を含めた最強の七人全員に補助魔法をかける。それによって彼らのステータスは大きく上昇し、ある程度の攻撃ではダメージすら通らない。だが、それは今までの魔物を相手にした場合だ。魔王相手に、自分の補助魔法がどこまで通用するか、すみれは不安だった。

 すると、そんな気持ちを察した千尋が、すみれの頭を優しく撫でる。

「大丈夫。必ず魔王を倒してくるから」

 すみれが頷くのを確認すると、千尋は他の五人と同じように武器を構えて魔王の方へ駆け出した。一人魔王から離れた場所に残っているすみれは、魔王と戦っている千尋たちを見守りながら、両手を握りしめて、祈る。

「どうか、先輩たちが勝ちますように……」

 それが、戦えない自分ができることだから。


次話は5月15日に投稿予定です。

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