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回復魔導士は私だけ  作者: たまごがわ
第1章
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第16話 魔王討伐作戦

 人王(じんおう)には、最初に来たプレイヤーたちが自分たちのことについて、全て話した。突然現れた数百人の人間に、この世界の住人たちは驚き、警戒した。

 今でもこの世界の住人全てがプレイヤーたちに対して警戒を解いたわけではない。だが、その態度は最初と比べればだいぶ軟化している。その理由は、人王がこの世界の人間に向けて、こう告げたからだ。


 ―――この者たちは、魔王を止める為に来た強者だ。決して我らに仇なす存在ではない。彼らが魔王を止めるのに集中できるよう、皆も協力してほしい


 人王はプレイヤーたちの言葉を信用し、異なる世界から来た彼らを受け入れた。そしてこの世界の住人もまた、魔王を倒す力を持つ者なら、疎んじている場合ではないと、受け入れることにしたのだ。

 人王は身分によって差別するような人間ではなかった。だからこそ、人王と最強の七人が対等な立場で会談することができたのだ。


「これからやるべきことはまず、オレたちプレイヤーと、こちらの世界の兵士のレベル上げだ」

 スグリの発した言葉に、その場にいる全員が耳を傾ける。

 この世界の兵士や冒険者の中には、「自分たちも魔王を倒す為の力になりたい」と言っている者も多い。だが、そのレベルは高くても50前後だ。通常のダンジョンならば、それでも問題はない。だが、今回は違う。

 もとの世界で攻略サイトを制作していたプレイヤーたちが、魔王の居城付近を調べたところ、ゲームと同じく、レベル60前後の魔王側の者たちが城の周囲に張り付いていた。最低でもこちらのレベルも60にしなければ、死ぬ可能性が高い。

 すみれが使える「蘇生」によって、生き返らせることはできるものの、一人につき一度きりであることを考えると、それに頼りきりになるのは危険だろう。

「これからだいたい……三か月くらい、各々のレベル上げと魔王討伐の細かい作戦を練るのに使って、確実に魔王を倒せるようにしたい」

 もとの世界で魔王と戦ったことのあるプレイヤーは一人もいない。だから魔王のレベルや強さは分からない。だから、実際に魔王と戦う予定の、最強の七人である自分たちも、レベル上げは必要だろう。

 スグリの言葉に人王が頷く。

「あいわかった。こちらの兵士たちと冒険者たちにも、それを伝えておこう」

 人王の言葉にスグリは頭を下げる。

「ありがとうございます。人王さま」

「いや、礼を言うべきなのは、こちらの方だ。そなたたちが来ていなければ、この作戦すら立てることができなかったからな」


 その後、これからのことについて、細かな話をして、話し合いを終えることになった。

 そして人王が一足先に立ち去る前、彼はすみれたちに向き直る。

「改めて、そなたたちに頼む。どうか魔王を……打ち倒してくれ……」

 人王は、どこか苦しげに、振り絞るような声で言った。


 それからすみれたちは、それぞれが滞在していた集落に戻ると、プレイヤーたちに話し合いで決まったことを話した。そしてそこから三か月の間、すみれたちを含むプレイヤーたちは、レベル上げをし始めた。そして、すみれたちは加えて、魔王を倒す為の作戦の内容を一週間に一度は話し合うようにした。




 そして三か月後、魔王討伐の作戦に参加する予定の全てのプレイヤーと兵士、冒険者のレベルが60を超えた。すみれもレベルが84から90に、千尋は70から80になっていた。

 魔王討伐の作戦を前日に控え、すみれたち最強の七人と人王は、最後の話し合いをしていた。

「―――オレたちの予定通り、こちらのレベルが全員、60以上になった」

 スグリの言葉に、その場にいた全員が頷く。そしてスグリは、人王の方を向いて続ける。

「では、明日の魔王討伐の流れを説明します」

 まずは魔王の居城の前で、大半のプレイヤーと兵士が、魔王側の者たちと戦う。

 こちらはあくまで陽動だ。だから、できるだけ魔王側の者たちを殺さないようにする。これは、人王からの願いでもあった。魔王以外はできるだけ殺さないでほしい、と。

 そして、その間に最強の七人である自分たちが、城の裏にある抜け穴から城内に侵入し、魔王と戦う。

 魔王のレベルや強さは戦うまで分からない。だが、最強の回復魔導士であるスミレがいることから、即死することはないだろう。


 それをスグリが言うと、すみれは小さく頷く。

 正直、自分にスグリたちの命を預けられていると思うと、責任感で押しつぶされそうになる。だが、ここまでレベルが高い回復魔導士は自分しかいない。だから、とうに腹は括っている。


 そして残りのプレイヤーは、魔王側の者たちが、無関係の者たちを襲わないように、町や村の警備にあたる。


 魔王討伐の流れを聞き、人王は大きく頷く。

「私は戦う力を持たぬ故、そなたたちを送り出すことしかできない。……そなたたちに、勝利があらんことを……!」

 人王の激励にすみれたちは大きく頷いた。


 人王の城から出た後、すみれの隣を歩いていた千尋が言った。

「……いよいよ、明日だね」

「はい……」

 千尋の言葉に頷くと、すみれは無意識のうちに胸を両手で押さえる。

 明日、魔王を倒すことができれば、おそらく元の世界に帰れるはずだ。千尋たちのレベルはとても高いし、きっと魔王を倒して、この世界が滅ぶのも防げると思う。

 それでも、「もしも」を考えてしまう。

 もしも、魔王が自分たちよりも圧倒的に強くて、こちらが全滅させられてしまったら。

 そのせいで魔王の言葉の通り、世界を滅ぼされてしまったら。

 すみれは頭を振って、その考えを打ち消そうとする。だが、不安はどうしても消えてくれない。

 すると、すみれの肩を千尋が優しく叩く。それに気づいたすみれが千尋の方を見ると、彼はすみれに微笑んで言った。

「こう簡単に言うのは無責任かもしれないけど……きっと大丈夫。僕たちは絶対に勝てるよ」

 千尋の言葉に、すみれの中の不安は小さくなる。

 そうだ。ここまで頑張ったのだから、きっと大丈夫だ。

「先輩、ありがとうございます……!」

 すみれは千尋と同じように、微笑みを返した。


次話は5月1日に投稿予定です。

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