第14話 スグリとタケル
金髪の青年が暮らしているという、宿舎の一部屋に、すみれと千尋が案内される。思ったよりも広い室内のソファに座るように促され、すみれと千尋は座る。その正面のソファに、金髪の青年と赤毛の男性が座る。
「まずは自己紹介をしないとだね。オレの名前はスグリ。さっきまで装備していた大剣で分かると思うけど、役職は剣士だよ」
スグリの自己紹介を聞いて、すみれは納得する。そうか、どこかで見たことがある気がすると思ったら、最強の七人の中の剣士だ。
ということは、もう一人の男性は、おそらく召喚士のタケルだ。ゲームで見た時よりも身長はさらに高く見えて、見下ろす視線は鋭く感じて、少し怖い。
すみれは若干怯えながら、男性の自己紹介を待つ。すると。
「初めまして! アタシの名前はタケルよ! スミレちゃんには随分と助けてもらったわね!」
高いテンションで、しかも想像していなかった口調に、スミレは驚きを隠せない。
そんなすみれの様子に、タケルは微笑む。
「あら、驚いた? 確かに、今までチャットでしか話したことがないものね」
すみれは少し冷静さを取り戻して、ようやくタケルに話しかける。
「チャットの時と、全然話し方が違かったもので……」
「だって、チャットでわざわざこの口調で打つのって、面倒くさいのよね。不愛想になってるのは、ちょっと気になったんだけど」
そう言ったタケルを見て、すみれはふと思った。
確かに最初は、ゲームの時と印象がだいぶ違く、驚いた。だが、今考えると、チャットでの会話に、今の彼にある気遣いが確かにあったのだ。だから今ではもうタケルの口調に慣れている。
そしてゲームをしている時に、どこかタケルに安心感を覚えていたのは、彼の人柄を何となく感じ取っていたからなのかもしれない。
二人が自己紹介をした後で、すみれは確認するように尋ねる。
「私も一応、自己紹介をした方がいいですか?」
「しなくて大丈夫よ、スミレちゃんのことは分かっているから。スグリくんも大丈夫よね?」
タケルがスグリの方を見ると、スグリは大きく頷く。
「ああ、もちろんさ。スミレさんにはいつも助けてもらってたからね」
スグリもタケルも自分のことを覚えてくれていたようで、すみれはほっとする。
話が一区切りついたのを察して、スグリが声を上げた。
「自己紹介も終えたし、ここからちょっと真面目な話をするよ」
スグリの落ち着いた声に、すみれたちは背筋を伸ばす。
「スミレさんが来たことによって、この世界に“最強の七人”全員がそろった。だから一度、七人全員集まって、これからのことを話し合おうと思うんだ」
これからのこと。つまり、魔王討伐についてだ。
「今日から330日後に、この世界は魔王によって滅ぼされてしまう。だから、その前に魔王を倒さないといけない」
スグリの言葉にすみれたちは頷く。自分たちがこの世界に来てしまった理由は分からないが、死ぬ為に来たわけではない。
「それで、今から十日後にヤマトの首都の城で、人王と最強の七人で、魔王を倒す為にどうするか、話し合いをするつもりなんだけど……みんなはそれで大丈夫かな?」
もちろん、他の三人には了承を得ているよ、とスグリは言葉を付け足す。
スグリの確認にすみれたちは頷く。
「はい、大丈夫です」
「僕も大丈夫です」
「アタシもそれで大丈夫よ」
三人の言葉にスグリはほっとしたように微笑む。
「ありがとう。時間は日にちが近くなってから知らせるから、今日はこれで解散しよう」
そんなスグリの言葉で、すみれたちは一度、解散した。
次話は4月3日に投稿予定です。




