第13話 集落
朝食を食べた後、すみれと千尋は町を出発して、ヤマトの首都に到着した。
今まで訪れた村や町とは比べ物にならないほどの活気に、すみれは驚く。
「すごいですね。こんなに賑やかだなんて……」
驚きつつも目を輝かせているすみれを見て、千尋は微笑む。
「うん。僕も最初は驚いたよ。一緒に見て回りたいところだけど、まずは集落に行こう。こっちだよ」
千尋に促されて、すみれは頷き、賑やかな都市を後にした。
首都から少し離れて、賑やかさが収まってきたと思った時、再び賑やかさが戻ってくる。
もしかして、とすみれが千尋を見ると、千尋は微笑む。
やがて塀で囲まれた、住居が所狭しと建てられた場所が見えてきた。
「ようこそ、すみれちゃん。ここが、ヤマトで一番大きな集落だよ」
千尋によると、ここは元々ヤマトの兵士の訓練場兼宿舎だったが、首都から近い為、訓練時の騒音が問題となり、移転した後に残った場所なのだという。
塀の中に入り、プレイヤーの集落を二人で歩いていると、自然と千尋の周りに他のプレイヤーが集まってきて、彼に話しかけはじめる。それを隣で見ながら、すみれは高校生の頃のことを思い出す。
そういえば、高校でも千尋の周りには、男女関係なく人が集まっていた。誰にでも好かれるタイプである千尋のことを、すみれは少し羨ましいと思っていた。
自分も、千尋のようになれたら、どれだけ楽しいのだろう、と。
だが、それで終わりだ。自分が今更そのようになれるわけがないのが分かっていたから、嫉妬のような醜い感情が生まれることがなかったのだ。
だから今も、そんな千尋を隣で見ても、嫌な気持ちにはならない。ただ少し、今だけ千尋が遠い存在になってしまったような気がして、寂しいだけだ。
そんなことを考えていると、すみれの存在に気づいた一人のプレイヤーが声をあげる。
「あれ……もしかして、回復魔導士のスミレさんですか?」
突然声をかけられて、すみれは驚きつつも頷く。
「は、はい。そうです」
すると先ほどまで千尋と話していたプレイヤーたちが一気にすみれの方に来る。
「クエスト行く時はいつもありがとうございました!」
「難易度高い時、スミレさんに本当に助けられて、感謝してます!」
「スミレさんがいるだけで、すごく安心できるんですよ!」
次々と言われる感謝の言葉に、すみれは戸惑いながら、ぎこちない笑みを浮かべる。
直接、こんなに多くの人に感謝されるのは初めてだ。ゲームで助っ人をするたびに「ありがとう」とは言われていたが、直接言われると、自分が、ゲームでの存在がどれほど心強いものなのかが、分かった気がする。
照れながらも他のプレイヤーと話をするすみれを、千尋は隣で優しい目で見つめていた。
他のプレイヤーと話をして少しした時、すみれと千尋の後ろから声が聞こえてきた。
「―――人だかりができてると思ったら、チヒロか!」
その声にその場にいた全員が振り返る。そこには、二人の青年がいた。
一人は千尋より少し身長が低い、金髪碧眼の青年。もう一人は、身長が二メートルくらいありそうな、濃い紫色の髪をオールバックにした、茶色の瞳の、二十代半ばくらいの男性だ。
彼らの姿を見たプレイヤー、特に女性プレイヤーたちが色めき立つ。
その様子を見た金髪の青年が、困ったような顔をして、こめかみ辺りを掻く。
「……とりあえず、落ち着けるところで話そうか」
次話は3月20日に投稿予定です。




