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回復魔導士は私だけ  作者: たまごがわ
第1章
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第12話 旅立ち

 千尋から集落に一緒に行ってほしいと言われた翌日、すみれは千尋と共に滞在していた村を発つことになった。

 村を出発することを告げると、二人を見送ろうと多くの村人が集まった。

「……おねえちゃん、行っちゃうの?」

 シオンは寂しそうな顔をして、すみれを見上げている。そんなシオンの頭をすみれは優しく撫でる。

「うん。私たちがやらなきゃいけないことがあるから、ごめんね」

 シオンが、魔王を倒さなければこの世界が滅んでしまうことを知っているかは分からない。だが、わざわざはっきりと言うべきことでも無い気がした。

 それでもシオンは、大事なことだと分かったのか、すみれたちをそれ以上引き留めようとはしなかった。

「だったら仕方ないね。でも、いつかまた来てくれたら嬉しいな!」

 何とか寂しい気持ちを振り切ろうとしているシオンに、すみれは微笑む。

 この子は本当に優しい。自分たちに気を遣って、「絶対に」とは言わなかった。だから自分も、「きっとまた会えるよ」などと確実性のない言葉を言わずに済むのだ。

 その後、村長がすみれと千尋に袋いっぱいに入ったお金と、たくさんの食べ物を渡してくれた。申し訳なくて一度返そうとしたが、村長から「遠慮せずに受け取ってくれ!」と言われ、受け取った。ここで返したら、さすがに失礼だ。

 そしてすみれと千尋は、村人たちに温かく見送られながら、村を出発した。


 それからすみれと千尋は、集落を行く過程で通る村や町の宿屋に泊まりながら、集落を目指した。集落に向かう間、特に大きな事件には遭わなかったのは、運が良かったと言える。

 集落に着く前日、ある町で食事をしている時、“最強の七人”について話題に上がった。

「そういえば先輩は、他の最強の七人の方には会ったんですか?」

 すみれの問いに千尋は頷く。

「うん。剣士のスグリさんと、召喚士のタケルさんにはもう会ってるよ」

「どういう方なんですか?」

 すみれはこの世界に来てから、千尋以外の他のプレイヤーとは誰とも会っていない。だから、尚更気になったのだ。

「すみれちゃんは、ゲームの中では二人に会っているんだよね?」

「はい。それぞれのパーティの助っ人になったことがあります」

 スグリは金髪碧眼のアバターで、チャットでの会話も丁寧で、いかにも王子様というイメージだ。

 一方でタケルは濃い紫色の髪をオールバックにしたアバターで、チャットでの会話も言葉数が少なく、物静かなイメージだった。

 それを聞いた千尋は、口元に笑みを浮かべる。

「先輩?」

 千尋が笑ったことに首をかしげるすみれに、千尋は笑みを浮かべたまま言う。

「すみれちゃんがその二人に会ったら、少し驚くかもしれないなって思って」

 すみれは千尋の言っていることが分からず、目をぱちくりとさせる。

 どういう意味だろう。明日になれば集落に着くはずだから、そこで会えば分かるだろうか。

 その後、二人は食事を終えて、泊まる宿屋に向かい、それぞれの部屋に入った。


次話は3月6日に投稿予定です。

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