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回復魔導士は私だけ  作者: たまごがわ
第1章
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第11話 魔王の宣言

 千尋は今から十日前にヤマトの、比較的都市に近い町の外れで目を覚ました。町人から魔物退治などを請け負いながら宿で生活していた時、偶然他のプレイヤーと出会った。そこで、他にも大勢のプレイヤーがこの世界に来ていることを知ったのだ。

 そして千尋はそのプレイヤーに、ここから一番近い、プレイヤーの暮らす集落に案内してもらった。

 そのプレイヤー曰く、この世界に来たプレイヤーの多くは、人界の三国であるヤマト・ユネイス・アントールの複数の箇所に集落を作ってそこで暮らしているそうだ。この世界に来ているプレイヤー全員がレベル50以上で、人間を魔物から守る為に暮らす集落を分散しているのだという。

 ヤマトの集落にいるプレイヤーは、7割がこちらの世界の人々からの依頼を受けたり、魔物を討伐して集落の維持費などを稼ぎ、3割が他にプレイヤーが来ていないか捜索したり、この世界についての情報収集をしている。

 すみれや大志たちがまだ集落に来ていないことから、彼らを探す為、千尋は行動を始めた。

ひとまず端の方から探そうと、ヤマトで最も東端に位置する村に着くと、村人に囲まれて、こう頼まれた。


 ―――子どもと魔導士様がどこかに行ったきり姿が見えないんです! 魔物に襲われる前に探していただけませんか!


 魔導士というのが、少し前にレッドドラゴンを倒す手助けをしてくれたということから、プレイヤーの可能性を感じた。


「それで助けに行ったら、そこにいたのが、すみれちゃんだったから、すごく驚いたよ」

 この世界に来ているとは思っていたが、早めに会えるとは思わなかった。

 そして今に至る。


 すみれは、千尋の話を頭の中で整理する。

 いくつも集落を作っているということは、かなりのプレイヤーがこちらの世界に来ているのだろう。元々のプレイヤー数は全世界で5000万を超えていたはずだ。ならば、レベル50以上に限定しても、1000万くらいはいるのではないだろうか。

 そんなに来ていることに驚きつつ、すみれは千尋が自分を探す為にここまで来てくれたことが嬉しかった。

 すると、千尋がすみれに声をかけた。

「それで……すみれちゃんに頼みがあるんだ」

 真剣な表情になった千尋にすみれは少し緊張しつつ、千尋の次の言葉を待つ。

「僕と一緒に、ヤマトで一番大きい集落に行ってほしい」

「え……」

 突然の頼みにすみれは瞬きをする。

 確かに、いつまでも村長の家でお世話になるのは申し訳ないので、そのうちどこかの宿に泊まろうとは思っていた。まさか千尋に集落に一緒に行ってほしいと頼まれるとは思っていなかったが。

「それは構いませんが、どうしてですか?」

 プレイヤーたちと一緒にいる方が確かに、同じ境遇で安心感はあるかもしれない。だが、何故か千尋は少し焦っているようにも感じる。その理由は何なのか。

 すると千尋は軽く息を吐き出して、答えた。

「この世界はどうやら、ゲームと同じく、魔王が一年後に世界を滅ぼす宣言をしているらしいんだ」

 すみれの心がざわめく。

 そうだ。「リレヴァーメン」は、一年後に世界を滅ぼそうとしている魔王を倒す為、冒険に出ることから始まるのだ。

 今まではゲームだからと客観的に見ていた。だが、この世界が滅びてしまったら、おそらく自分たちも死ぬ。

 それを認識したすみれは、急に自分の置かれている状況が怖くなった。

 この世界に来た時点で、これはゲームではなく現実になった。村人たちを見て分かっていたが、確実に死が存在するし、痛みは当然のようにあることも、自分の体で経験した。

 元々のゲームの能力を引き継いでいて、なおかつHPもかなり高い自分は、おそらくよほどのことがない限りは死なない。だが、千尋や他のプレイヤーは、自分よりもずっと死に近い。一度は生き返らせることができても、二度目はできない。

 すみれの表情から、ある程度のことを察した千尋は、彼女の頭を優しく撫でる。

「うん。魔王が世界を滅ぼせば、確かに僕たちは死ぬかもしれない。でも、僕は死ぬつもりもないし、君を死なせるつもりもない。もちろん、他のプレイヤーも」

 だから、と言って千尋は続ける。

「魔王を倒す為に、すみれちゃんの力を貸してほしいんだ。頼めるかな?」

 そして、千尋から手を差し伸べられる。千尋の顔はいつもと同じで、穏やかだ。

 すみれは一度、目を閉じて考える。

 自分は戦えない。それでも、戦う千尋たちを手助けすることは出来る。ならば。

 すみれは目を開けた。その瞳に迷いはない。

「……はい! 私でよければぜひ!」

 頼られていることを嬉しく思いながら、すみれは千尋と握手を交わした。


次話は2月6日に投稿予定です。

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