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No.001 出会いは如何ほどに。

 大川心斗と新田明里。先輩と後輩、オタク仲間でパーティーメンバーであり、パートナーと言い合える存在。

 だけどみんな彼らがどう出会ったのかは知らない。

 これは、PC部員の主人公とそのメインヒロインの、普通なようで普通ではない出会いの物語……。

 この話は、俺がステフに巻き込まれて青龍祭というところで依頼をしていたころのお話……。


「そういえばさだけどさししょー」

「あ? なんだ?」


 青龍祭りも中盤に差し掛かったころ。俺と新田、ステフは3人で街を歩いていた。2回目の休憩時間に、同じく休憩時間になったステフが一緒に……と言ってついてきたのだ。

そして、今は屋台で買ったクレープのような食べ物を食べている最中。

その時に、ステフが俺に話しかけ来た。


「ニッタの姉ちゃんとはどういう出会いだったの?」

「は? なんだそりゃあ?」

「だって、気になるんだ~」


それだけかよ……なんでそんなことで変な聞き方をしてくる。


「いつも2人でいるようなイメージあるからさ~」

「普通だ普通!」

「面倒くさいんですよね……先輩は」


 うるさい! 面倒くさいじゃん!


「いいじゃないですか、話したって」

「はいはい……」


 あれは、俺が高校1年の夏休み、海外留学をした時のこと……。


  〇 〇 〇


「what purpose of your visit」

「あー…sightseeing…」

「OK.Where do you going to stay?」

「I’m going to stayhome」

「Oh that’s great!」


 飛行機に揺られること6時間。俺はようやく太平洋に浮かぶ一つの島にたどり着いた。

 入国審査でペラペラ話してくる職員の質問に、俺は少し戸惑いながらもスラスラ質問に答えていく。

 というのも、俺の得意教科が英語だからだ。いじめを受けていたころ現実逃避にひたすら英語のテキストをやっていたら、何故かこうなった。特にリスニングとかはしてないし、スピーキングも……あれだな、英語の映画見てたら、かな。


「OK」


ふぅ……ようやく審査が終わった。溜息を付きながら先に審査が終わっていた先生、同じ留学プログラム参加者の所へ行く。

 

 約3週間に及ぶ短期語学研修。最初に研修施設で1週間勉強してから実際に現地校に2週間通うことになる。さらに最後の2週間はホームステイするという。

 それだけ豪華なプログラムで、いて英検などなど特定のスコアと、学校長からの推薦があれば格安で留学できることもあり、参加者は70名を超す。

 そこで、俺はこのプログラムのリーダーをやることになった。

 誰もやりたがらないのと、俺が全員で受けたとある試験でかなりの好成績だったからだ。

 押し付けられたの方が正しい気もする。


「では、これからバスに乗って……」


 やはり俺のクラスの担任も引率に加わっている。英語科じゃあないんだけど。

 そんなことを思いながら俺はバスに乗り込む。


 空港から2時間ほど行ったところにその研修施設はあった。海の近くに面しており、反対側には山が広がるというとっても自然豊かな場所だ。

 自室に荷物を置いた後は、オリエンテーション兼昼食ということで、全員で砂浜に出て、職員が作り終えるまで俺たちは遊ぶことになったのだが……。


「外国の海……たださみしくなるだけじゃねぇか……」


 なんか付き合っているカップル同士で応募しているような奴もいたり、女子と仲がいい男子もおり、楽しそうに遊んでいるのを横目に、俺は波打ち際の近くの砂浜に腰降ろす。


 さびしくないさ…俺は。どうせ俺の人生に恋愛の二文字は存在しないのさ。

 あ、なんだろう。視界が……そして地平線が見えるや……。


「リア充くたばればいいのに……」


 悲しくない、悲しくないんだ。だけど、思わずそんな言葉が口から出てしまう。しょうがないんだ、しょうがないんだ……。


「ん? やっぱ先輩もそっちの方面の人なんですか?」


 せっかくの外国なのだが、気持ちはminになり、体からモヤモヤと「俺に近づくな」オーラを出していたところ、誰かが俺に話しかけてきた。

 中学校の制服を身にまとい、金髪とも茶髪ともとれる髪をポニーテールにした女子が、いつのまにか俺の横に立っていた。


「あ、ああ。そうだ…が…」

「やっぱりオタク系統の人でしたか……」


 悪かったな、君。俺がリーダーで。女子のほとんどは俺みたいなオタクを嫌っているのはわかる。だからこいつは「うわ~そうだったんだ。じゃあもう話しかけるのやめる」というのを言いに来たのか?


「先輩は、どういうマンガ……っていうか本読んでいるんですか?」

「え?」


 まさか、何を読んでいるかなんて聞かれるとは思わなかった俺は、若干拍子抜けしてしまった。しかたない、女子とまともに会話したことないんだから。


「え、えーと……これとか……」


 俺はたまたまポケットに入ってたラノベを取り出す。実をいうと、日本文化布教用なら持ち込みOKということだったので、持てる限りのラノベにマンガ、小説を持ってきたのだ。

 足りない分は、配布のPCで何とかなるし。

 

「あ、私もこれ読んでますよ!! コミカライズの方も!」

「へ?」

「3年前のコミマで売られてたんですよ。気になって買ってみたら、そのあとかなり有名になって今ではコミカライズまでされてますからね……」


 おいおい……なんか聞き捨てならないことを聞いた気が…コミマ?こいつこの年でオタクが密集する場所に出入りしてるのか?


「ええ。面白いじゃないですか」


 こ、こいつ……できる! どうやら俺はこいつに対する見方を変えた方がいいようだ。


「つまり、同じオタクというわけ……」

「そうみたいですね。いろいろ語り合えると思いますよ?」


 そのようだ。目の前の少女の髪が海風で風下にたなびいているのを、見ながらお互い手を差し出した。


「高1外部特進の大川だ。一応リーダーもやってるから」

「中3の新田です」

「「以後、よろしくお願いしまっせぇ!!」」


 握手をしながら交わした言葉はハモる。

 つまりは……。


「まさかこれも見ているのか!?」

「まさかこれも見てるんですか!?」


 お互いがポケットからそのネタが書かれているラノベの巻を取り出す。

 こ……こいつは…目の前に立つ少女は……いったい!?


「どうやら、これは勝負した方がいいと見ましたよ」

「奇遇だな、俺もだ」

「いざ、尋常に」

「「勝負!!」」


 俺たちはそれから制服のあらゆるところに搭載していたラノベの数々を取り出していく。

 冊数が同じとわかると、今度は名言勝負に移り、今度は音勝負になり、最終的にはPCを使った格ゲー一騎打ちになった。

 波打ち際のオタクの男女2名の壮絶な戦いに、引率の先生と職員、そして同じ参加者はドン引きしていた。



   〇 〇 〇


「へー……なんていうか、その」

「「わかってるよ、どうせ変な出会いですよ!!」」


 あんまりな出会い方にステフが感想に困ってしまう。

 

 ちなみに、そのあと留学中は一緒に行動することが多かった。ホームステイ先が近いとわかると、ホストファザーなどに頼み込んで片方の家に行ったり、パーティーに参加したり。

 しまいには、お別れパーティーが合同だったりだ。

 兄妹と間違えられたこともあった(家族割があったので、そのときは「Yes」と答えた)。

 日本に帰ってからは2人で聖地巡礼なども行ったなぁ……懐かしい。


「で、さ」

「はいはい」

「一つだけ言いたいことあるんだけど」


 ステフが珍しく言いずらそうにしている。


「まあ、言ってみ言ってみ」

「じゃあ、言うけどさ」


 ステフは大きく息を吸うと、吐き出すように、こう言ってきた。


「そんな出会い方で、仲いいのに…なんで2人は付き合ってないの?」


 ……………………。


「「はああああああああ!?」」


 突然の「なんで付き合ってないの」という質問に俺と新田はクレープを放り投げながら立ち上がってしまう。


「お、お前なぁ!」

「ステフ! あなたは!」

「「よくもそう簡単に地雷踏み抜けるなぁ・ね!!」」

「ほら、やっぱハモってるじゃん」


 地雷を一瞬で踏み抜かれた俺と新田は、それから休憩が終わるまでずっとステフに抗議することになった。


「だーかーらぁ!」

「え、だってさ。……じゃないの?」

「「それは偏見と誤解だ!!」」

「普通そういうのはくっつくじゃん」

「「どうしてそうなる!!!」」


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