プロローグ
王都、プロベキシィア
中世ヨーロッパのような町並み。石造りの城壁に囲まれ人々が賑わう。この国は貴族階級による身分制度がある。
私の名前はアリエル・ドレシア。
王都の一角に食堂兼宿屋を経営している両親を持つ平民の私が14歳の時、調理場にいた母が油の入った鍋をひっくり返し腕に大きな火傷を負った。
駆け寄り、母の焼けただれた腕に手を伸ばすと白い光が母の腕を包み火傷は跡形もなく消えた。
その時、私は前世の記憶を思い出した。
魔法。と呼ばれるものは貴族の多くは使えるが、私のような平民が使えることはあまりない。あまり、というのはごくごく稀に存在が確認されたりする…そうだ
魔法には、光闇火水風土の他に治癒が出来る《聖》があるが、聖は珍しく希少価値も高い。
そらそうだ。怪我や病気をバンバン治す聖魔法をみんなが使えたら医学なんてものは発達しないだろう。
その珍しい治癒魔法を平民の私なんかが使ってしまった。
噂は瞬く間に広がり、数日後、何か偉そうな人が家に来て父と母に何かを話していた。後から父に言われたのは
「15歳になったら王立の魔法学園に入るようにとのこと」
魔法学園といえば、魔法を使えるものが必ず入ることを義務付けられ貴族の令嬢子息は15歳になるとほとんどが通っている学校だ。
平民の私が、貴族の通う学園に、希少な聖魔法を携え…
「どこの乙女ゲームやねーーーーーん!!!!!」
そんな私のツッコミも虚しく両親は目を丸くして私を見ていた。
いや、だってよくある設定のやつじゃん。前世でも友達が携帯アプリの乙女ゲームにハマってて確かこんな感じの設定だったはず。ありふれたチープな設定。平民のヒロインが希少な聖魔法の使い手として魔法学園に入り貴族の攻略対象と世界を救ったり救わなかったり恋愛したりとかなんとか…。確か学園の名前は
「………ネルネルネール学園」
「マゼリエラル学園だ」
秒で父につっこまれた。
マゼリエラル学園ってどんな名前だよ。難しすぎるでしょ。マゼリエラル学園。寝て起きたら多分もう忘れてるわ。
ここがどんな世界なのか乙女ゲームの世界なのかはよく分かんないけど、もしそうなら状況的に私はヒロインの立ち位置だ。つまり、学園に入ったら貴族のボンボンと紆余曲折を経て結ばれるやつ。
冗談ではない。
でも、友達がハマって散々私に聞かせていたゲームの内容と今のところ合致している…。確か友達が言っていた攻略対象は
完璧王子、腹黒眼鏡、お色気担当、照れ屋な騎士
のまさに乙女ゲームの王道4人だったはず。
え、どれもいらない…。ていうかこの4人の中から将来の相手を選ぶとかどんな罰ゲームよ。
王子と結婚とか自由なさすぎてあり得ないし、腹黒眼鏡とか腹黒ってまず無理。なんだよ腹黒って。怖すぎるわ。お色気担当って色気出されても腹の足しにもならんわ。照れ屋な騎士ってもうその字面が面倒臭い。
そんな事を考えていたらあっという間に私は15歳になっていた。