子供が欲しい。
どうも、これは「彼女が僕を切りつける理由。(https://ncode.syosetu.com/n5114ew/)」と「学校の不安は生徒会選挙と共に。(https://ncode.syosetu.com/n8497fa/)」の後日譚でもあります。先に読んでもネタバレは殆どありません。
「子供が欲しい。」
うちの家庭はなかなか厄介で、両親ともに海外への単身赴任で僕と余との二人暮しだ。たまの例外を除けば、これは随分前からのことで、僕が大学生になった今でも変わらない。
余は僕の幼なじみで義理の兄弟で配偶者だ。
余の実の家族は皆、この世の人ではない。実父と実兄は事故で他界し、実母も最近後をたった。
実母の死によって余は一時期心を病んだ。だから余は大学生の僕と同い年にも関わらず、通信制高校に通っている途中だ。再来年には卒業して大学に行くらしい。
さっきも言ったけれど、余は僕の幼なじみで義兄弟で、配偶者だ。
余が実母の死から立ち直ったあと、僕父と母は余と養子縁組をした。天涯孤独となった余に家族を作ってあげたかったのだろう。
でも、その時、僕らは付き合っていた。その恋人で兄弟な関係をどうにか上手く落ち着けるために、結婚をした。式も挙げていないし、結婚を知っているのは本当に親しい友人だけだ。でも、それで僕らは安心できた。
大学生と高校生で結婚。これもまあ珍しいことかも知れない。けれど結婚した所で前と生活は変わらない。しかしだ。
「ねぇ、だからさ、子供。」
突然の衝撃から立ち直れない僕に、余はまた同じ意味の言葉を発する。
夏場で浴衣を寝間着にしている僕は持っている文庫本をローテーブルに起き、扇いでいる団扇を止める。
余は僕の前に突っ立ったままだ。
僕はソファに座ったまま答える。
「いや、えっと、本気?」
「うん。」
「なんで。」
そこから余は子供が欲しいと言った理由をポツポツと話した。
実母が死ぬ前の美人で社交的なクラスのまとめ役が出来るような性格はなりを潜め、今の自己表現はまばらで濃い。
余の話を要約するとこの4月から通い始めた通信制高校で出来た友達に子供がいるらしい。最近、あった時にとんでもなく可愛かったので自分も欲しくなったということだ。
まあ、通信制高校なら色んな年齢の人がいるだろうからありえるだろう。
「でもさ、僕ら、収入ないよ。」
「何とかならない?」
「多分なんともならない。」
「バイト代、二人でいくら?」
僕の両親は海外赴任している。一方、僕と余は生まれた頃から住むこの家で、両親から仕送りを貰って生活している。両方から結構な額が送られてくるので、学費とかを払っても、比較的裕福な生活が出来ている。そこにバイトをしているので実はそこそこの貯金が出来ている。それに子供が出来たら両親の援助も貰えるだろう。
「バイト代はまあまああるけど、子供はさもう少し責任取れるようになってからにしない?」
「たしかに。」
「そうでしょ。」
「でも、子供欲しいな。」
責任取れるようになっていないのに既に結婚している僕の言葉は空虚なのかも知れない。
「まあ、僕が就職したらかな。」
「4年後?」
「まあ、うん。そう。」
余は少し残念そうにする。
「ねえ、ちゅう。」
僕は前に突っ立っている余の腕を引き、少しソファから腰をあげて口付けをする。まうすとぅーまうすだ。
この体勢だと、やっぱり余の甚平ははだけて胸があらわになる。
僕は余の甚平の紐を解く。
余はゆっくりと僕の膝の上にキスしたまま座って、男締を解いた。
「する?」
余は今更ながらそんなことを聞く。
「しないの?」
僕は余の薄っぺらな胸に触れながら言う。
「ゴム切れてるけど。」
「ああ、そうか。」
「子供、作らない?」
「……うん。作らない。」
僕は少し間を開けて言う。
危うく余の術中にハマるところだった。
危ない。
「そ。」
余はツンとそっぽを向き、甚平の紐を結ぶ。
「途中まででもしない?」
「しない。」
「そか。」
僕は立ち上がり、浴衣を直して男締を結び直す。
「なあ余、今度庭でバーベキューでもしない?その、お子さんがいる友達とか、長良とか呼んでさ。」
余はパッと明るい顔になってこう答える。
「うん。」
余は友達が出来て、その子と仲良くしたかっただけなのかも知れない
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