第十四話『赤毛の僕っ娘剣士・レオ』
——美しい赤毛だ。 現世で見た事のあるクソDQN女の小汚い赤髪とは違う、透き通るように繊細な赤髪。 白い肌も相まって不自然さが少しもない。 歳も若く、美形で大人びているから予想が難しいが、多めに見積もっても二十代前半か。
「ハァ、ハァ、ハァ……」
「大丈夫か? すまん、ちょっとやり過ぎてしまった」
赤毛の女が俺の胸に飛び込んできた。 これはラッキーだな抱きしめてやろう。
やけにキツく抱いてくる上に小声でなにやらボソボソ呟いているので、愛の告白から淡いロマンスが始まるのかと思いきや、炎魔法の詠唱だったようだ。
「〝炎縛術〟……。 招火・陽牢っ! 」
おぉ。 俺と赤毛の周りを囲うように、燃え盛る炎が立ち昇った。
「ふむ、アチアチだ。 俺たちの熱いロマンスを暗示するかのような燃え上がり方だな」
「止めたぞぉーーーっ! 誰かぁーっ! カミダを討ってくれぇー! 僕ごとで構わないっ!早くぅっ! 」
取り囲む炎の外から声が聞こえてくる。
今のうちに撤退しろとかあんなの放っておけ、とか、割と辛辣な言葉が飛び交っている。
「………………。 」
「………………。 」
無言でキツく抱き締めあっていたら、赤毛の女が繰り出した炎の壁が消えた。 軽症だった騎士団の奴らは馬に乗って、すでに遥か遠くに逃げている。
「見捨てられたな。 ドンマイ」
「……もう抵抗はしない。 今ので魔力を使い果たしてしまった。 悔しいが何もできない。 さぁ今すぐ殺せっ! 」
「殺せ? どうしてだ、自殺志願者なのか? お前らをぶっ飛ばしたのは正当な過剰防衛だが、殺す理由などは微塵もない。 相当やりすぎたしな」
聞こえてないようだ。 ぶるぶる震えながら虚空を見つめている。
「カミダ・ミナトッ……。 お前がとんでもない力を携えてこの世界に来て、一体何を成そうとしているのか……。 僕に教えてくれ。 冥土の土産くらいくれてもいいだろう」
ふむ……。ボクっ娘赤髪剣士か。 やれやれ最高かよ! 元から高いさいかわポイントを所持したものがどんどん畳み掛けてくるな。 少しも心が乾く暇がないぞパォーン。
「俺の話を聞いているのか? そんなに死にたければ自分で喉を掻っ切って死ねばいい。 生き死にを他人に委ねるのは甘えだ。 見届けてやるから今すぐ自殺しろ」
「……は? 」
「いいか、俺の目的は一つだ。 『何者にも縛られず、自由に生きる』 ……本来誰しもが持っている、当たり前の権利を主張しているだけだぞ」
何故驚いているのかわからんが、呆気に取られているようだ。 さて、本当にちょっとやりすぎたから騎士団に治癒魔法をかけてやるか。 赤毛の剣士は軽傷だから後回しだ。 可愛いからってあまり贔屓すると増長するからな。
「まきしまむひーりんぐブラスタァッ! 」
「まきしまむひーりんぐブラスタァッ! 」
「まきしまむひーりんぐブラスタァッ! 」
おいリア、騎士団の瀕死者が多すぎてキリがないぞ。 煽ったお前にも責任があるんだから全員一気にヒールかける方法を教えろ。
【ミナトさぁん、そいつもさいかわ候補ですかぁ? 全然可愛くないじゃないですか。 ネロはめちゃ可愛いですけど】
……こいつも爆裂かわいいぞ。 赤毛でヤンキーみたいだしな、現世から引き継いだミナトレーダーの精度が落ちてなければ、おっぱいもDカップはある。 こういう奴がデレた時に一番ちんぽがエレクトするんだ。
【チッ】
なぜ舌打ちするんだ? ちんぽエレクトは男の悲願だぞ。 ……もしかして勝気な巨乳女が嫌いなのか? はぁー、お前まさか貧乳なんじゃないのか!? おい、ほら、騎士団が苦しんでいる。 早く教えろ貧乳女。
【——ガシャァン! ドゴォン! 】
ったく貧乳はすぐモノに当たるな。
【……殺すぞ童貞】
なんか言ったか?
「……いえ。 一気にヒールかける方法でしたっけ。 じゃあ「いっけぇぇぇぇぇ! ウルトラムーンサルトマキシマムヒーリングブラスタァーッ」 と叫んでください】
ふむ、そんなに簡単なのか。
【……左手でおちんちんをプロペラみたいに回しながら、右の拳を天に突き上げつつ】
簡単だな。 シンプルなやつは楽でいい。
【………。 少年マンガの主人公みたいなノリでお願いします】
任せておけ、少年マンガの主人公は大体マネしてきた男だからな。
「いっっっっけぇぇぇぇぇッッ! うるとらむーんさると、まきしまむひーりんぐぅっ、ブラスタァッー! 」
【素晴らしい。 でも赤毛の女ドン引きしてますね。 では次、本番です】
やれやれ……。 リハーサルだったとは。
【よーい、アクションっ! 】
「いっっっけぇぇぇぇぇッ! うるとらむーんさるとぉぉっ! まきしまむひーりんぐぅっ! ブラスッタァッッッー! 」
よし、全員にかかったな。 ちょっと時間がかかるが我慢してくれよ。 さて、このボクっ娘剣士にも治癒魔法をかけてやるか。
【完敗っすわ。 変態もここまで来ると清々しいっす】
「まきしまむひーりんぐブラスタァッ! 」
「こ、これは……? 」
「魔力も回復するからしばらくじっとしていろ、赤毛のボクっ娘」
ちょっと疲れたから座ろう。 赤毛のボクっ娘剣士は俺のチート治癒魔法に夢中だな。 やれやれ。
「そんなに珍しい魔法か」
「S級治癒魔法師のヒールを受けた事もあるが……。こんなにきめ細かくて美しい魔粒子は、初めてだ……。 どんどん魔力が回復している……」
「そうか」
……しばらく見ていると、回復した騎士団のザコどもは軒並み逃げていく。
「撤退だ! 一時撤退するぞ! 全員逃げろぉ! 」
うーん。 このボクっ娘のことなんか気にもかけてない。
「赤毛の女、名前は? ……あぁ、喋らなくていい。 面倒だからステータスウィンドウを立ち上げてくれ」
「僕は……レオという。 ステータス・オープン」
「指示しといてなんだが、そんなに簡単にステータスを開示していいのか? 」
「なぜそんな事を聞く。 開示しなきゃ殺すんだろう? どちらにせよ、もう失ったも同然の命だ」
なんだコイツは、可愛いくせに随分と諦観しているな。 ふむ、本名は……。
『レオ=スティア〝ディラン〟トラスフィード Age19』
名前長いな。 しかしステータスはパッと見ても明らかにチョリスより高水準だ。攻撃力や魔力に関しては桁が違う。 職業は焔の剣士か……。 押し寄せてきた騎士団の中でも一際強そうだったから、相当な手練れなのは確かだ。
「どうしてレオは騎士団のユニフォーム的なやつを着ていないんだ? 」
「僕は騎士団の一員ではないから」
俺の治癒魔法を口を開けて眺めている。
騎士団の連中は本当に馬鹿みたいに逃げていくな。 本当にくだらない。 しょーもない奴らだ。 こんなさいかわポイント上位のさいかわガールをあっさり見捨てて逃げるものか?
「お前イジメられてるのか? 完全無視で逃げていくが」
「あんな規格外の炎魔法を見せられたら、誰だって逃げる。 当たり前のことさ」
「小便を漏らして震えている美しい娘を無視して逃げるのが……。 騎士団では当たり前の事なのか? 」
ずっと迫真の表情だったが顔が真っ赤になったな。 ちょっとデリカシーがなかったか。 やれやれ、さいかわポイントを少し加算してやろう。
「僕は〝ディラン〟の末裔だから」
「ふむ、恋人の名はボブか? 」
「ボブ……? 何を言ってる。僕に恋人などいないよ」
やれやれ、知らないか。 現世でボブ・ディランはフォークロックの神なんだがなぁ。
「知らんが、ディランの末裔だからなんだ? 俺はお前の身の上話を聞くためにここにいるわけじゃない。 ……でも気になるから手短に話してくれ」
「……ちょっと待って」
なんだ? 顔が真っ赤だし可愛らしくぽってりした唇がわなわなしている。 震えている訳ではないようだし、どうしたのだろうか。
「すまない……。 カミダ・ミナトが言う通り、僕はさっき、君が怖くておしっこを全部漏らしてしまったんだ。 下がずぶ濡れで気持ちが悪い。 少し見苦しいかもしれないけど、ここで脱いでもいいか? 」
「見苦しいわけがあるか。 さっさと脱げ! ……しかしちょっと待てよ、刺激が強すぎるかもしれないから、俺が着替えを用意する」
アイテムボックスを出す為にキツネ型にした手がぶるぶる震える。 まさか、まさかこんなタイミングでエクストリームラッキースケベが転がり込んでくるとは……。 俺もとんだエロテロリストに襲われたもんだな。 ふぅ、落ち着け。
「ア、ア、ア、アチテムボックシュ」
【動揺しすぎだろ】
よし。 現世の店に繋げて……と。 いかんな、人生初のドスケベ展開に手が震える。
「なに……? そのタンスは、一体……」
あとはこの赤毛のさいかわ候補に何を着せるかが問題だっ……! 俺のエロセンスが問われるってもんだぜコンチキショウメ。




