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1.俺が異世界に来た事情 ※


 死ぬってあっけねえなあ。

 ガンだってよ。手術するから入院してくれってさ。

 一回目の手術してからも日に日に弱っていってさあ、こりゃダメだと思ったね。

 再手術ってことになって、麻酔かけられて、気が付いたらここさ。

 なんだこの真っ暗な部屋。明かりねえのかよ。


「中島さん、中島平助(なかじまへいすけ)さん……」


 看護婦さんかね。いや、今は看護師って言わねえと怒られるんだったな。

「はいよ。検査かい?」

「いえ、ここには照明がありませんで、今点けますね」


 ぼわっと明かり灯った。

 ……びっくりだよ。 真っ暗な部屋に俺と、えらくめんこい金髪の外人の姉ちゃんが一人。手のひらの上に明るい玉出して、俺の顔を覗き込んでる。

 どういうこと?


「中島さん、お気の毒ですがあなたはお亡くなりになりました……」

「へえ、再手術失敗したのかい?」

「いえ、失敗じゃありません。手遅れだったんです。末期ガンですね。転移が動脈まで進行してまして切除できず、どうにもなりませんでした。結局あなたは再手術に耐えられず、意識が戻らないまま衰弱し、家族に看取られて亡くなりました」


 あー、それでか。

 今の俺のカッコ、手術する前に着せられるあの服だしな。

 腕なんか痩せちゃって骨と皮だしよ。注射針の跡だらけだわ。

 こうやって座ってるのもなんかキツイわ。

 前、はだけて腹を見ると、でっかい傷跡に縫い合わせた跡。手術したばっかりって感じだなあ。ま、それが俺の最期だったってわけか。


「そうかあ。ま、俺も先生の話聞いて無理じゃねえかなあと思ったよ。しょうがないべ。で、あんたは観音様?」

「いえ、女神です」

「仏教だと殺生した奴は地獄行きなんだって聞いてるって。俺は猟師だったからな。生き物殺しまくってたし、そうされるんならしょうがないべや」

「いえいえ! 違います、だから女神です!」

「じゃあイザナミさんかい? 黄泉の国に連れてってくれんのかい? 俺、法事の時に坊さんに聞いて、猟師やってる身としちゃあ地獄に行くんなら仏教より神道のほうがいいなあって言っちゃったからなあ。ほら、古事記には山幸彦(やまさちひこ)って猟師がいたしな。殺生禁止じゃないもんな。そっちにまわされたかい」


「うーん、余計な知識があるのも説明が面倒ですねえ……」


 そう言って目の前に跪いて俺の顔を覗き込んでるやたらめんこい姉ちゃんが眉毛をへの字にして困ってるわ。そういうのとは違うのかい?


「生前は大変ご迷惑をかけました。お孫さんにも。申し訳ありません」

「生前? あの町営牧場の化け物騒ぎかい?」

「はい、あれは私のミスもあるんです。大変な目にあわせてしまい、申し訳なく思います」

「あー、そういうことか。なんかスライムとかよ、ゾンビとか恐竜とか出て大変だったな。孫のシンが役場の職員でさ、キリキリ舞いしてたわ。あんたのせいだったのかい」


 なんか立て続けに化け物が町営牧場の牛狙って現れてよ、猟協会の俺たちと、役場の職員の孫とで全部撃退したりして、えらい目にあったなあそういえば。

「んー、まあ気にすんな。なんとかなったしよ。孫も頑張ったおかげであれから出世もしただろうさ。俺も冥土の土産話ができてよかったってもんだべや。俺が死んだのはガンだし、アンタのせいじゃないって」


「あ、そう言っていただけると助かります。ありがとうございます!」

 死ぬ前に孫によ、あれ出てきた原因、ゲートがどうのこうの異世界がどったらこったら何回説明されてもさっぱりわからんかったけど、あるんだねえそういうこと。


「お詫びと言っては何ですが、無事解決してくれたお礼も兼ねまして、中島さんには私の異世界にご招待して、もう少しその命、永らえさせてあげたいと思いまして……」

「いいわ」

「は?」

「いいってそんなの。もう十分生きた。悪くない人生だったし、最後に大暴れできたのもいい土産話だべ。俺は長年連れ添った女房がいてな、その女房と冥土でまた会うのをずっと楽しみにしてたよ。女房のいるところに送ってくれよ。それで充分さ」

「はあ……、そういうことでしたら、私もお力になれますが」

「ホントかい!」

「はい、それでよければ」

「ぜひそれで頼む!」

「では!」





「もしっ、もし!?」

 ぺちぺちとほほを叩かれてる。

 いてっいててて。遠慮ねえな。

 目を開けてむっくりと起き上がる。

 ん、なんだここ。外じゃねーか。

 え?

 森の中?


 体軽いぞ?

 手術して衰弱して起き上がるのもやっとだったんだがなあ俺。

「どうしたんですこんなところで!」


 横を見た。

 んーなんか変わったカッコのオバサンが俺を見てる。

 いやなんか見覚えあるぞこのオバサン?

 え?

都子(みやこ)?」

「へ……平助(へいすけ)さん!?」


 二人で顔を見合わせてびっくりする。

 目の前の三十路のオバサン……。六十で事故で死んだ、俺の女房の若いときそっくり!

「都子か? 都子なのか!?」

「あなた――――!」

 抱き着かれてわんわん泣かれた。

 ホントに? 俺生き返ったの?


挿絵(By みてみん)


 ご覧いただきありがとうございます。

 前作、「北海道に魔物が出たので地元ハンターが出動してみた」スピンオフ。

 今度はシン君のおじいちゃんが異世界に行く話。


 もうお歳ですのでそう大事件は……少しだけ?

 次回、「2.メイドなばあさん」


 シリーズ別作品、主人公、シンくんが異世界に行く話。

「北海道の現役ハンターが異世界に放り込まれてみた」

書籍三巻(完結)発売中! イラストは引き続き夕薙様です!


2024年9月13日に「北海道の現役ハンターが異世界に放り込まれてみた~エルフ嫁とめぐる異世界狩猟ライフ~」のコミカライズ6巻が発売されます! マンガはカルトマ様です!


    挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
3部作目に読み進めてます。 癌の発症に一番影響があるのは 睡眠時間と感じてます(個人趣味程度の調べです) 特に個人の体質や環境に依存しますが深夜零時前に寝ないと影響が大きいみたいです。 還暦過ぎてから…
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