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黒猫姫  作者: violet
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是枝家厨房

「ちょっと!!」

「見た!見た!」

「誰よあれ!?」

「孝明様と手を繋いで孝明様の服を着てダイニングに現れたの!」

是枝家の厨房では、今見て来た事をメイド達がひそひそ声で話している。

「すっごい美少女!

まだ10代じゃないかな。サラサラの黒髪よ。」

「しかも旦那さまや奥様とも面識あるみたい。」

「昨日、夜遅くに和泉沢様が来ただけだよね。いつ来たんだろう。」


「ほらほら、あなた達おしゃべりは後にして!」

パンパンと手を叩くのはメイド長の嶋田である。

「嶋田さん!

誰ですか?あれ。」

「貴方達ね、誰ですか、はないでしょう。

婚約者の華子様ですよ。」

えー!と大きな声が思わずでた。

「若様って婚約者がいたのにあんなに遊んでいるの!?」

屋敷に連れて来た事はないが、噂は流れて来る。

嶋田も詳しくは知らされていない。

10年ぐらい前までは頻繁に遊びにきていたのだ。それが孝明の留学を境に全く姿を見なくなった。

死んだかと思っていたぐらい存在が無くなっていた。

孝明は留学中も頻繁に戻ってきていたが、顔付きが変わってしまい、どこかに出掛けては帰って来なかった。

華子一筋だった孝明の様子が変わってしまったことで、そうだと思わせていた。

しかし、先程見た華子の姿は10年前の記憶の姿とさほど変わらない。

華子は孝明の一つ下のはずなのに、まるで女子高生のようである。


「門の警備から連絡が入っているわよ。

こんなに朝早くお客様とは。」

ちょうどセキュリティからの連絡がはいって、話はお終いとばかりに嶋田がメイド達を(うなが)す。

「また和泉沢様よ、昨夜といい、どうしたのかしら。」

「ああ、華子様は和泉沢家のお嬢様だからよ。」

嶋田がそういうと周りから溜息がもれる。

「可哀そうに、あんな遊び人の若様の婚約者なんて。」

「いいお家に生まれるのも大変よね。」




「私、絶対華子様の味方よ!」

「どうしたの?」

ダイニングから戻ってきたメイドが

「さっき、和泉沢家に帰られる華子様がね。」

その時は玲子が持って来た服に着替え、皆の目を楽しませていた。

「私達に、これからお世話になる華子です、って挨拶されたのよ!」

「近くでみると凄く可愛いの。目なんて黒目が大きくって。

美人だけど可愛いって凄いわよ。」

それからも厨房ではメイド達が休憩を取りながらの噂話が続いていく。

「嶋田さん、猫の事聞きました?」

メイドの一人が嶋田に声をかける。

「黒猫のこと?」

「そうそう。」

「旦那さまが猫の為に改装されるって聞きました。」

あの旦那さまがびっくりよね、などと話している。

「華子様の猫で部屋に出入りするかも知れないらしいわ。」

嶋田がそうそう、と思いだしたようにメイド達を集める。

「華子様がいらっしゃらない時に黒猫が来たら、食事は人間と同じ物を少量だすように言われました。

猫缶とかはダメですよ。」

「お猫様ですね!

名前は?」

「はな、だそうです。」

「はぁ、華子様と同じって紛らわしいわよね!」

ああ、和泉沢様から私達にとお土産をいただきましたよ、と嶋田が出した菓子に歓声があがる。

「イルチョコラート、何粒あるのー!

すごい一人3個ずつね!」

女性達はチョコレートに釣られ、華子の株がグングンあがる。

反対に下がるのが孝明の株。

「こんなに気が付く婚約者がいるのに、あっちの女優、こっちのモデルと孝明様ったらタラシ男。」

どこまでも孝明の素行が繰り返して言われる。



梅子ばあちゃんの見るテレビは連続小説と時代劇とサスペンス物だけである、しかも昔の再放送だ。

華子は現在の情報から隔離されていた。

猫の間は知らなかったが、過疎の町を離れ人間に戻った華子に気づかれないはずはない。

メイド達は華子がわかって許していると思っているみたいだが、大間違いである。

そしてそれは彼女達も巻き込んで行くことになるとは、この時誰も予想できてない。



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