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黒猫姫  作者: violet
20/24

敵対する再会

パカッポコ、孝明が腕を華子に殴られている。

「何カッコつけているのよ!

誰もいなかったじゃない。」

あはは、と孝明は華子にされるがままだ、緊張もあったものじゃない。

二人は次々と部屋を確かめていく。


一実の祖父母は、ここでペンションを経営していた。

それは1日2組のみ受け付ける小さなペンションだか、手の込んだ料理とイングリッシュガーデンは人気を得ていた。

ダイニングで飾り棚にある食器を見ても、ここが趣味でペンションをしていたのがわかる。

マイセン、KPM、オールドノリタケなどはアンティークの食器が並んでいる。

大事にされている、埃もない。ここに人がいない、などありえない。


何故、人がいないなどと思い込んでいたのだろう。

華子の疑問に孝明が見通したように答えた。

「僕にはわからないけど、和泉沢家にはいろんな能力者がいるんだろう?

何かを供儀にすれば、いないように思わせられるなら、医療刑務所からでも逃走できるよね?」

「孝明、その通りね!

なんで忘れていたんだろう。」

華子が孝明の腕に腕をまわす。

孝明は、猫になる華子を嫁にしたのだ、並の根性ではない。


「ね、幸子さん。」

孝明が指差すそこに幸子がいた。孝明は華子を後ろにかばい、幸子と対峙する。

声も出せないぐらい驚いている華子を気にした様子でもなく、幸子が返事する。

「この術にはずいぶん力を取られたのに、簡単に破られるなんて。」

力ってなんだ、悪い考えに華子が身震いするが、孝明は平気らしい。

「幸子さん、心臓は大丈夫なんですか?」

「あまり良くはないわ。」

幸子が答えると、孝明が見せたくないとばかりに背に華子を隠そうとする。

「病などで死んでほしくないな。僕の華を狙った事を後悔しながら死んでほしいよ。

2年前、君が警察に捕まらなければとずっと思っていたよ。

君をこの手で葬るためにね。」

孝明の背後で聞いている華子は、やはりと思うしかなかった。

あれほど華子一途の孝明だ、幸子を許すはずなどない。だがたとえ、幸子だとしても孝明に殺して欲しくない。

突然、孝明が華子を後ろに押しやった。

意味不明な言葉を幸子がつむいでいる。

何かがピリリと身体に走る、この感覚に覚えがある。

8年前の呪詛だ。


華子は黒猫に変わって後ろに走る。黒猫の身体の方が呪術を感じない。呪術の対象を人間の華子としている為だろう。

「孝明、気を付けて!」

華子の言葉を無視して孝明が幸子に近づいて行く。


「来ないで!!」

幸子が孝明から逃げようとするが、思う程には動けないようだ。

身体が弱まっている、と広田の報告書にあったとおりなのだろう。

不意に孝明の足が止まった、幸子がナイフを取り出したからだ。

「どうして華子だけなの!」

急に幸子が叫んだ。

「貴方だって一実だって華子、華子。」

精神が病んでいる、華子も孝明も感じた。

「大学生になって、お父さんから連絡きたのは、選挙で人心を誘導するため。私に人を惑わせて票を集めろって。

それでも、必要とされるのが嬉しくって、演説会でも街頭演説でも精神感応したのに!」

孝明は、幸子がナイフを持っているので飛びかかるタイミングをみている。

「私のこと、化け物って。お母さんと那須の家に追いやって離婚したくせに!

選挙に出るから力を貸せって。勝手すぎる。」

それも離婚の大きな理由だったのだろう。幸子は子供の頃から能力を使っていたのかもしれない。

反対だ、生まれた時から持っている能力を隠す術を子供は持たないのだ、華子はさとる。

「那須の家に遊びに来てくれたのは一実だけだったのに!

華子が家長になるから大事にしろ、ってどうして華子だけなの!」

ブンとナイフが振り下ろされるのを孝明は避ける。

「華子が居なくなれば私が必要とされる。

華子がいなくなれば、一実が家長よ、私に感謝するわ。」

誰もが、私を必要とするのよ、と叫ぶ幸子。


見つめる孝明の目は冷え冷えとしている。このままでは本当に幸子を殺してしまう。

「一実君はそんなの望んでいない!」

華子の叫びも幸子には無駄だった。

「あの子だけよ、私の力を頼らなかったのは。

浩なんて一実を引き摺り落とすことはかり。」

ばかよね、と幸子は笑う。毛を逆撫でされたように気持ち悪い。


このままでは孝明を殺人者にしてしまう、焦る華子は猫に変わった時に落ちたバッグの中からスマホを取り出すが、猫の手ではキーを打つどころか指紋認証もできない。

プルプル、マナーモードにしてあるスマホが揺れた。画面を見ると、広田からの電話である。

ナイスタイミングと思いながら、華子はスマホにタッチした。

「広田さん!警察呼んで!!」

孝明を助けて!


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