4.変わりゆくもの
俺にとっては未知の生物である、この“猫っぽい”生き物を助けるべく、情報や知恵を求めてリリアたちの許へと走り寄ったのだった。
まず初めに、しゃがんで腕の中に抱えた生き物を見せたら好奇心旺盛なアダムが俺の腕の中を覗き込み、訝しげな様子で手でチョイチョイとちょっかいを出してきた。
「ルカ様……その、手にしているものは一体………?」
そうしていると少し離れていた場所にいたピエトロも、川の中に入っていたアンドレアも、俺の後ろを走って追いかけてきていたパウロとシモーネも、俺の呼びかけにリリアたちが居た所にまで全員がわらわらと集まってきた。
「パウロたちが見つけたんだけど……どうやら弱っているみたいなんだ。俺はどうにかしてこの子を助けたいと思うんだけど………皆はこれがどういう生き物か知っている? 知っていることがあったら教えてほしいんだ!」
俺の言葉にピエトロは「ヒッ!」と引き気味に叫び、叫び声と共に尻尾を股の間に巻き込んだ状態にして後退りをしたのだった。
「えっ? なんか……怖い生き物なの?」
ピエトロの反応に俺は不安になり、そう尋ねた。
するとフゥ~と鼻で大きく息を吐き、少し笑いながらアンドレアが答えてくれた。
「やれやれ……。心配しないで、ルカ様。ピエトロはちょっと怖がりなんだよ。ただそれだけ。なにしろ初めて見る生き物だからなぁ………。」
「顔は――猫さんたちに似てるねぇ。」
特に臆することも無く、“猫っぽい”生き物を見て不思議そうにリリアは言った。
ぐったりとしておよそ動く気配のないことから、怖くはないと思ったのだろう。
「そうだな……。だから何か知ってるかなと思ったんだよ。」
「これは……ウ~ン…―――。雰囲気だけで言うならば、ネコ種か……。この生き物の被毛の黄色い色から考えると大地属性のネコ種……。でも、大地属性のネコ種は生まれ育った場所から離れないって聞いたことあるから私たちも姿形とか詳しくは知らなくて……本当にそうであるかは判別できませんにゃ。」
じっくりとこの生き物を観察し、腕を組んで考えこみながらイブはそう言った。
「そうだよね~。そう簡単に分かるわけないよ、ね~……。」
「ごめんなさい、にゃ………。」
情報を得られなかったことに肩を落として残念がる俺を見て、申し訳なさそうにシュンと落ち込んだ感じでイブやアダムたちが謝ってきた。
「いや、俺の方こそごめん! 誰かが知っているだろうって期待をし過ぎてしまってたよ。テリトリーから出ずに普通にずっと暮らしていれば、知らない事だってあるのは当たり前だよな。」
謝られたことにまた情けないこと死してしまったと謝り返すと、力なく垂れ下がった自分の尻尾を両手で掴み、先っぽを弄って特にイブがすっかりとしょげてしまっていた。
今では皆のお母さん的立場となったしっかり者のイブには、頼られた俺に残念がられたのが応えたらしかった。
「俺を含め、皆がイブに頼る事が多いし、それを嬉しく思っていたんだろうけど……イブは神様じゃないんだから、そんなに何でもできることなんてないのは分かっているんだよ。だから元気出して。ねっ?」
「――………うにゃ。」
覇気もなく、返事は溜め息の様に消え入りそうだった。
このままではいけないと思い、まるで通夜の様に暗い空気となってしまったこの場を改めようと、俺は元気よく明るい声で皆に再び話しかけた。
「―――で、だ! 何が原因かな? どうしたら良いと思う? 俺は地球――前の世界でのネコのお世話の仕方しか分からないから……。この見た目通り、たぶんネコだとは思うから、皆の分かる限りのことを俺に教えて協力して! まだこんなに小さいんだよ? このままだと……。」
「そう……だね。うん! 僕も協力するよ!」
再度の俺の呼びかけに一番に声をあげたのは、なんと以外にもピエトロであった。
見たこともない生き物だからとあんなにも怖がっていたのに……、自分よりも小さな生き物がずっとぐったりとしたまま微動だにしない姿を見て何か心に響くものでもあったのだろうか……。
それとも自分と違ってしっかり者で大人のイブやアダムがどうにかしてくれるだろうと思っていたのに当てが外れ、思いかけずに弱気な姿を見てどうにかしなきゃと奮い立ったのだろうか……。
「ルカ様。この子に怪我は?」
俺は驚いた。
ピエトロはまるでネコが変わったようにキビキビとしだしたのだった。
「あっ……! 怪我ね。怪我は―――見た所ないみたい。」
「鼻は……湿ってるね。お水不足ではないみたいだよ。」
健康状態を確認する為にと“猫っぽい”生き物の鼻に伸ばしたピエトロの手は、プルプルと少し震えていた。
平気そうに見えてまだ内心、怖いんだろう。
「ルカ様?」
「あっ。うん……。水分不足ではないんだね。じゃあ病気か……お腹空いちゃったとかかな?」
怖いながらも頑張っているそのピエトロの様子に、俺は感心のあまりついうっかりと『今』を忘れてボーっとしてしまっていたのだった。
だがそれは俺だけではないようで………。
「頑張ってるじゃん。ピエトロ。」
その中でも兄弟猫であるアンドレアはそんなピエトロの様子を見て、ボソリと独り言を呟いていたのが俺の耳には聞こえた。
「ねぇ、どう思う?」
一人頑張るピエトロは助言を求め、まだ少し落ち込んでいるイブに問いかけた。
「えっ、えぇ……。そうね。体温はどうかしら? 体が冷えてってことも考えられるし……。魔力は……強そうな感じではあるけど……。」
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