表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/89

10.自覚

 このオズリックの街に来た用事もやっと終わり、ドナートとも店の前で別れると皆でなんとなく街の中を散策してみた。

 パウロや猫たちは歩きながら、左右に並ぶ様々な商店のガラス越しに見える店内を物珍し気にあっちこっちと見ていた。

 しかし未だに俺が話しかけようとするとツンとそっぽを向くリリアを如何にか取り成そうと、リリアに抱っこされながらイブだけは俺の代わりに尽力してくれていた。


「酔っていた所為とはいえ…、あれは不味かったかな~……。」


 なんのかんのと危険な目にあっても付いてきてくれるリリアを大事だと思う気持ちは別にして、この世界に来て1年以上が経っていても忘れられない初恋の女の子の面影に“再会”して俺はドキドキしていた。

 しかも面と向かって好きだなんて言われちゃって…、お酒の酔いも手伝ってあの時の胸の高鳴りは最高潮になっていた。

 別人だと意識していたつもりなのに、それが却ってカルラそのものをいつの間にか意識してしまっていた。

 それによってカルラに好きだと告白された時、初恋の女の子を好きだという気持ちとそれがごちゃ混ぜになってしまって、しかもカルラから積極的に来られた事で他の事が考えられなくなる程浮足立っていたのは間違いない。


「カルラにも悪いことしちゃったし……。リリアにも………。」


 森の中で『正式に結婚する』と約束したのは口から出まかせで出た言葉ではないが、まだ正式な婚姻の儀式を済ませていないリリアにとっては俺の行動の1つ1つが気になるのだろうし、ましてや朝のあの出来事は不安を抱く以上の出来事だったのだろう……。


「正式な婚姻の儀式をする為には教会で行わなきゃならないし、リリアが未成年だからな~……。俺の正体を明かさないと儀式は執り行ってはくれないだろうな~ぁ……。」


 異世界よりこの世界『聖なる庭園(フィノナガルト)』に富と叡智をもたらす為に定期的に降臨するとされている救世主(メシア)のみに許された、未成年者とでも正式な婚姻の契りを結ぶことができるという特権を使わなければ教会も受け入れないだろう。

 だが、正体を明かせば王城へ連れていかれたり、権力を手にしたいと目論む者どもが「うちの娘と結婚してくれ。」と俺の許に殺到したりと自由を奪われる可能性が高いので極力避けたいのだ。


救世主(メシア)と結婚すれば自らも崇められる様になり、初代王となる子供を産めば神の子を産んだ母として実家にも金や権力が自ずと集まるようになる…。しかもそれが貴族だろうが貧乏人だろうが関係無しなんだもんな~。」


 なまじっか既にそれなりの権力を持っている貴族とかが、必死になって俺と自分の娘を結婚させようと押しかけてくるのをサクラヴェール国の城に居た時にうんざりする程経験しているのでもう勘弁してほしい。


「ィヤッ! 離してよぉ!」


「…っ!?」


 俺が考え事をしていると、リリアの叫び声が聞こえてきたのでキョロキョロと周りを探せば、見るからに意地の悪そうな顔をした青エルフの2人組にリリアが捕まっていた。


「…この子に、何の御用ですか?」


「んぁ? お前にゃあ関係ねぇだろ~。すっこんでろ! 俺たちゃこれからこの子と遊ぶんだからよぉ。」


 2人組の悪漢は俺の質問には答えず、バタバタと暴れるリリアの左手首を握って拘束させ、下卑た笑みを浮かべていた。

 それを見て俺は怒りから唇を噛みしめ、リリアを助けようと自然と体は動き、悪漢へと飛び掛かっていた。


「この子は…、リリアは俺の大切な妻なんだ! 例え喧嘩しても嫌われても、リリアを害する者は俺が許さない! 俺が守るって決めたんだ!」


「お兄、ちゃん……。」


 神様に選ばれた救世主(メシア)であっても特別に強いわけでもなく、俺はただ只管にリリアを守らんが為に悪漢と戦った。

 自らの身なりの事など忘れてしまう程に許せないという思いが募り、悪漢の向う脛に蹴りをくらわしたその瞬間に俺の被っていたフードが脱げ、露わとなった俺の髪色を見て悪漢2人が青ざめていた。


「ゲッ! こいつ“黒人(くろびと)”だ……。ちょっとヤバいんじゃないか…?」


 その時、俺の中から何かが沸々と沸き起こり、電流のように放出された。


「ゥギャッ!!」


 カメラのフラッシュの様に一瞬であったその不思議な現象は、目の前に居た悪漢の青エルフ2人を黒焦げにさせ、リリアを俺の腕の中へとふわりと戻してくれた。

 怒っていたことなんてすっかりと忘れてしまった様子のリリアは俺と2人で目を合わせてパチクリとさせていた。


「な、なんだったんだ……!?」


 俺たちの騒ぎに集まっていた猫たちも何が起こったのか分からずにオロオロとしていた。

 ハッと我に返った俺は悪漢とはいえ、今2人も殺してしまったということなのかと、目の前に倒れている黒焦げになった青エルフを見て呆然としていた。

 するとパウロがスゥーと近寄ってきて俺の前に立ち、「ルカ。おめでとう…。時は、解放されました。」と言って俺の頬に口づけをした。


「パッ、パ、パ、パ…パウロ!?」


「いいえ…。今は神……。時が1つ解放されたお祝いに、今困っていることを無くしてあげましょう…。」


 突然のキスに狼狽えている俺の事なぞお構いなしに神様の憑依したパウロは黒焦げになった悪漢にそっと触れると、2人は黒焦げから本来の青エルフの姿へと戻って生き返った。


「ルカ…。その子が君の鍵となる者なのです…。決して手放す様なことをしてはなりませんよ…。」

★ブックマークや感想などありがとうございます。

更新の励みとなっております!


★これで『第5章』は終わりです。

 次回からは『第6章』となります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ