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7.告白

 俺とカルラはクラーケンをつまみにミードを飲み、飽きる事なくお喋りを続けていたら気が付けばかなり長い時間が経っていた。

 ミードを2杯程飲んでかなり酔っ払ってきた俺に再び「私に似てるって言っていた知り合いってどんな人?」と聞かれ、「――絶対にもう二度と会う事のできない、同じ年の女の子……。初恋だったんだ。」と言うと目を潤ませて俺に抱き付いてきた。


「どんな事情があるのか知らないけど…。もう会えないなんて辛いわね。その女の子はあなたが好きだってことを知っているの?」


 そのまま俺は首を横に振り、カルラの胸に埋める様に頭を預けた。


「ううん。告白もする前に会えなくなっちゃったし……。それに長いこと友達だったんだけど、俺がコンプレックスに思っていることをその子に弄られたりしてたから…、たぶん俺のことを男だと思って見てなかったと思う。」


「そっか…。でも良いな……。初恋、か―――。」


 俺を放すとミードを一口飲み、ジョッキを机の上に置くとボォーっと焦点の合わない目でカルラは天井を見上げた。


「カルラさんは初恋っていつだったの?」


「私はね、初恋もまだだったんだ~。16歳の君よりもずっと年上なのに、なんか変だよね……。」


 カルラはそう言うと困った様な顔になり、黙ってしまった。

 俺はミードをグイッと飲み干し、「そんなことないよ。」と言って励ました。

 だいぶ酔ってきていたせいか俺は普段と違って臆することなく、相手に嫌われるんじゃないかとか考える事もせずに大胆になっていた。


「ありがとう。なんだかルカさんになら何でも話せちゃいそうだな~ぁ。実はね……私、王族なの。」


「えっ!?」


 突然のカルラからの思いもしなかった告白に、俺はただただ驚愕した。


「この国の王族はね…。自らの国民たちを嫌っているの。祖である双子王の見た目を模っただけの紛い物だって言って……。」


「――っ!?」


「他の国では違うみたいだけど……、この国の祖である双子王は、この世界の住人が嫌いだったらしいのよ。信徒として自らを崇められ、救世主(メシア)としていくら信仰をされても、それでも信徒となって自らの姿を映し取った見た目となった民衆を醜いといって忌み嫌い……。」


 カルラは片手で取っ手を掴んでいたジョッキを両手でギュッと持ち、プルプルと震えだした。


「双子王は兄妹(きょうだい)で子を成し、それが代々続いて……。今でもこの世界の人間とは一切の関わりを断って暮らしているのがこの国の王族なの…。だから王様の顔なんてこの国の民すら誰一人として知らないし、今の王族も祖と同じ様に国民のことを紛い物と呼んで忌み嫌っているわ……。私はそんな王族に嫌気が差して家出してきて―――それからこの街に住むようになったのよ。でも誰も私が王族だなんて気が付きもしないけどね……。」


 言い終わるとジョッキに半分程残っていたミードをカルラは一気に飲み干し、机をドンッと叩いた。


「それにこの世界の住民の…、紛い物の血が混じると穢れると言って恐れ、私が外に興味を持たない様にとずっと閉じ込められてたの。私も兄との子を成すのが当たり前だと信じ込まされてね……。だからね、ずっと『恋』なんて知らなかったんだ~。自由が欲しくて家出してきたけど、今ではあの狂った無責任な王家を討ち滅ぼしたいって夢があるの!」


「カルラさん……。」


「でもその為に色々と動いていたら、熱狂的な信徒にさっきみたいに狙われることが偶にあってね。―――あのねっ!」


 カルラは俺の方に向き直し、畏まった様に座り直すと俺の両手を握った。


「酔っ払いが何を言ってるんだって思うかもしれないけど……、私! さっき助けてくれた姿を見て、ルカさんを好きになっちゃった。こんな気持ち初めてなの……。」


「えっ? いや…。えっと……、そのぉ………。」


 いきなりのことに俺は慌てふためいて何を言って良いのかも分からずに焦っていると、カルラは言いたいことを言いきって満足したのか机に凭れてスゥースゥーと寝息を立てだした。


「まいったな……。」


 ここで寝てしまったカルラをどうしたものかと考えたが、家も分からないので俺の泊っている部屋に連れて帰ることにした。

 おんぶをしてみたが思ったよりも軽く、幸せそうに眠るカルラの顔に俺も少しキュンとなった。


「佐藤とは顔はそっくりなのに中身はまるで違うな~。…当たり前だけど……。しかし、王家の討伐か~………。」


 神様に聖書が消えてなくなるとその国そのものが消えてしまうとは聞いていたが、その聖書の力の源である王族が誰も居なくなったら世界はどうなってしまうのだろうかと疑問に思った。


「絶対に何の問題もないわけないよな……。継承者である王も誰でも良いわけではないらしいし…。神聖なる光属性の力を持つ者のみが王の器の資格を持つ者、か………。」


 神様との契約者である救世主(メシア)と、その継承者たる王のみが使えることを許された聖書の力……。

 神様に与えられた土地の範囲内でしか効果はないが、それは世界さえも創り変えることを許されたもの……。

 女の人から好きと言われたのは初めてのことではあったが、それよりもカルラの口から世界を揺るがす程の物騒な話を聞いたことが衝撃的で、俺はそのことなどすっかりと頭のどこかへ行ってしまっていた。

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