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4.損? それとも得?

 結局ドナートとは明日の午後、一緒に乗り物を売る店に行く事で話がついた。

 思わず手に入れたカエルの蒼宝珠は高額過ぎる物が故にここでは換金できないと言われたので、この街に来た第一の目的を果たす為に俺が損をしてでもこれが一番良いと思ったのだ。


「乗り物が買えなきゃこの街に来た意味もないしな……。乗り物を買うには手持ちのお金も心許ないし…。ドナートはかなり良いクラスの乗り物が3~4台は買えるって言ってたし、金額的にはだいぶこっちの損だけど……、まぁいいだろう。」


「ふわ~ぁあぁぁ……。お兄ちゃん、もうご用事は済んだかにゃ?」


 ちょうどベストタイミングに俺の懐の中でいつの間にか眠っていたパウロが目を覚ました。


「お前はタイミングを見計らった様に起きるな…。ちょうど済んだところだよ。次はご飯だ。この街は魔物を食べる街だからきっと美味しい物があるぞ! ……とと…、その前に宿を取っておかないとな……。」


 俺たちはご飯の前に先程ドナートが教えてくれた宿屋まで行く事にした。

 交渉が纏まり掛けた時に俺たちがこの街に着いたばかりでまだ宿もとっていないと話すと、貴重な物を売ってくれたお礼にとドナートが知り合いの宿を紹介してくれたのだ。


「乗り物1台だけじゃ流石に割に合わないだろうからって、序でに宿代まで代わりに払ってくれるってドナートに言われたけど……。いいのかなぁ…?」


「ルカ様は気にし過ぎですにゃぁ。高そうだからってまた宿選びに迷ったりするより良いじゃないですかにゃ。」


「ウッ……! あの時は何処も彼処も高そうな見た目をしてたからそれに圧倒されてたし、お金もそんなに持ってなかったから仕方ないじゃないか~! 俺は小心者なんだよぉ………。」


 アダムにニヤッと笑われてホレイショーの街での一件を突っ込まれ、痛い所を突かれたなと恥ずかしくなった。

 港の傍は時間的なものもあってか人が殆ど居なかったので小声で喋ってはいたが、宿に近付いてくると猫たちは皆黙ってしまった。

 今度は迷わない様にとイブに言われてドナートに描いてもらった地図があったので、今度はすんなりと目的地に着くことができた。


「すっご~い! お城みたいな建物だね~ぇ。」


 リリアの言う通り、ドナートに紹介された宿は正にお城というに相応しい外観をしていた。


「いらっしゃいませ。ホテル・宮殿(パラティウム)へようこそ。ルカ様。」


 豪華な装飾を施した立派なドアを開けて中へと入ると、目の前に宿の従業員らしき正装に身を包んだ若竹色の長い髪をした細身の男がニコニコして俺たちを待ち構えていた。


「…はっ? …えっ!? なんで俺の名前を……?」


「先にドナート様より伺っておりましたので…。それではお部屋にご案内致しますね。」


「先に? 一体どうやって?」


 俺が思っていた質問をリリアが先にこの案内してくれている男に投げかけた。


「この国ではベルフォンという通信機器がございまして、それを使えば瞬時に情報のやり取りができるのですよ。おまけにその……顔が隠れるほどフードを目深に被っていらっしゃるお客様は目立ちますからね。ドナートに聞いていたお客様だとすぐ分かりましたよ。」


 案内をしてくれているこの男の言い方からして俺は相当怪しいと思われているということが見てとれた。


「あぁ、ごめんなさい。ちょっと訳ありでして……。こんな格好で、怪しいですよね…?」


「い、いえ。ドナート様のご紹介ですし、怪しいだなんて滅相もない……。お客様はお客様ですから。……さあ、こちらにお乗りください。」


 案内してくれている男に促され、壁の端の方に置かれた深緑色の大きな板に皆で乗ると、男は何やらブツブツと呪文を唱えた。

 するとその板がふわりと宙に浮き、頭上の遥か上へと伸びている透明の筒の中を徐々に上へ上へと動いていった。

 俺が「あぁ、エレベーターみたいなもんか。」と別段驚くでもなく立っている後ろで、リリアたちはまるで生まれたての小鹿の様にプルプルと足を震えさせて怖がっていた。


「だ、大丈夫か? リリア。」


 振り返った俺は片手でリリアを抱き寄せ、もう片方の手で猫たちを撫でて落ち着かせようとした。


「だ、大丈夫……。お兄ちゃんは平気なの?」


「あぁ、別に平気だが……。」


 案内してくれている男は横目で後ろに居る俺たちのやり取りを見ると、壁を向いて自分の顔を隠す様にしてクスクスと笑っていた。

 自分が笑われたことに気が付いたリリアは顔をカァーッと赤くさせ、抱き寄せた俺の胸の中に顔をうずめた。

 そうこうしている内にこのエレベーター擬きは目的の階に着いた様で動きが止まり、俺たちはそこから降ろされた。


「こちらのお部屋をどうぞ。」


 案内してくれている男にドアを開けられて見えた部屋の中は、キラキラと豪華な壁照明が付いていて、モダンな家具の置かれた見るからに高そうな部屋であった。


「こちらがバスルームとなっておりまして、そして左手側のドアの先に大きなベッドが1つ置かれた主寝室と、それに右手側のドアの先にも1人用のベッドが2つ置かれた寝室がございます。」


 部屋の豪華さに驚いて止まっている俺を気にすることもなく、男は淡々と部屋の中を案内すると俺に向かって一礼をしてきた。


「当ホテルにご滞在中は私、ヴェナンツィオがこのお部屋を担当させていただきます。ルカ様、予めお聞きしておきたいのですが、ご滞在中のお世話係としてバトラーやメイドはご入用でしょうか?」


「………は?」


 ヴェナンツィオに詳しく聞くと、スイートルームに泊まった客にはバトラーやメイドを付けるのがサービスだそうで、自前のメイドを連れていたりとか邪魔をされたくないとかで偶に不要だと言う客もいるので聞いているらしいのだ。


「い、いや。俺たちには不要だよ。」


「そうですか…。では、どうぞごゆるりとお寛ぎくださいませ。」


 ヴェナンツィオは俺にもう一度ペコリと一礼すると、扉を閉めて出て行った。

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