1.リリアの気持ち
「やっと着いたぞ~!」
「にゃ~ぁ!」
化けガエルの2度に亘る襲撃により、予定よりも3日近く遅れて港湾都市オズリックに俺たちは着いた。
「さぁ! まずは道中で手に入れた物を売ったらご飯でも食べるか~。」
提げていた鞄をポンポンと叩いて示すと、買い取ってくれる店を探そうとキョロキョロと周りを見渡しながら街の中へと入っていった。
今回は昼日中に街へと入ることができたのであちこちから子供の声も聞こえ、昼の騒がしさを感じられた。
「やっぱり日の高い内に街に着けると余裕があっていいなぁ。この世界には24時間営業の店なんてないし、結構早くにどの店も閉まっちゃうからなぁ……。」
「お兄ちゃんの居た世界では24時間開いてるお店なんてあったの? そんなの…、寝る時間無いとか奴隷じゃん……。しかも夜中なんて、来るお客さんいるの?」
リリアは24時間という言葉にギョッとして不思議そうに俺の顔を見た。
「ハッハッハッハッハッ…。俺の居た世界では色んな時間に働いてたりする人も居てな、需要があったんだよ。それにほら、急に何か欲しくなった時とか便利だろ? 店もずっと1人でしてるんじゃなくて、何人もの人でそれぞれ時間を分けて働いているから大丈夫なんだよ。」
「ふぅ~ん…。何だか変わってるんだね~。何百年も前にここでは廃止された奴隷制度が、お兄ちゃんの居た世界ではまだあったのかと思ったよ。」
「廃止? へ~ぇ、そうだったんだ……。サクラヴェール国ぐらいの文明レベルだと奴隷って居そうなのに見ないな~と思ってたら、そういうことだったのか……。」
この世界に来て最初に見たサクラヴェール国の印象は中世ヨーロッパという感じだったので意外に思え、俺が思ってたよりも結構文明とか進んでいるのかもしれないなと思った。
「それにしてもこの街は何だか面白いね。ホレイショーの街と違ってどの建物の壁や屋根も色取り取りに塗られていて派手で、この街にいる人たちも見たことの無い色をしてるし陽気だし。」
アシュワガンダの街に来てた商隊や、ホレイショーの街で見た住人のエルフたちは地球のゲームとかでよく描かれている様な俺の想像通りの姿だったが、この街にいるエルフはどの人も今までとは違っていて驚き、右を見ても左を見てもポカンと口が開いたままになっていた。
「淡い白藍の肌に紺碧の髪の人に、淡い桜色の肌に蘇芳の髪の人とか……。なんだか作り物みたいだね。
」
「この街はエルフの禁忌を犯すことによって力を得る代わりに、その身の姿形が変わってしまった人たちだけで作られた街だってアージェが言ってたからにゃ。そのせいじゃにゃい?」
俺の懐に潜っていたパウロが俺にボソリと小さな声で言った。
「そっか…。しかし、エルフの街なのによく見りゃ巨乳美人が多……。」
「もうっ! お兄ちゃんっ!」
街のどこを見ても巨乳で美人のお姉さんが多く、思わず見とれて顔が緩んででもいたのか、俺のポロッと溢した言葉によってリリアにつま先を思いっきり踏まれてしまった。
「ごめん、ごめん。リリア。」
俺のついうっかり発した言葉にまたリリアを怒らせてしまい、暫くは謝りどおしとなってしまった。
リリアは可愛いが、16歳の健康的な男子の俺としてはついつい巨乳で美人のお姉さんに目が行ってしまうのは仕方のないことなので、それぐらい許してほしいなと謝りながらも心の中で呟いていた。
「目が行っても、ヘタレな俺には声を掛けるとかもできないし、見るぐらいはさ……。」
「何か言った!? お兄ちゃん?」
「い、いや。別に……。」
ボソッと口から洩れた俺の呟きに、リリアは語気を強めて俺に迫ってきたが何とか宥めようと誤魔化した。
俺よりも5歳も年下だということに加え、まだ成人する前の胸もつるペタの子供だということがコンプレックスなのか、人のたくさんいる街に入るとリリアはやたらとピリピリとした雰囲気になり、ちょっとした事ですぐに焼きもちを焼く。
「多少なら可愛いんだけどなぁ…。それにまだ11歳の成長途中だし、そんなことを気にしても仕方ないのに……。」
俺も自分の見た目にコンプレックスはあるが、リリアと違って救いが見当たらない。
リリアの場合、これから5年10年と経って成長してしまえば問題は解決し、何も気にならなくなるだろう些細な事でしかない。
「だが俺の場合は……。」
この世界には母の姿がないので比べられるということがもう無く、最近は少しだけ心は軽くなっていたが、幼い頃からずっと周りの人たちに言われ続けて心に深く刻まれたコンプレックスはそう易々とはなくならない。
「この世界で黒髪黒目がバレると、神殿とか王様の所に連れていかれたりして自由が無くなるしな~。地球の時とは理由は違っても…、やっぱりこの黒髪黒目が気になって気になって仕方がないや……。」
ため息を吐きながら前屈みに俯いて歩いていると、前から歩いて来ていた人にドンッとぶつかってしまった。
「あっ! ご、ごめんなさい!」
「もうっ。お兄ちゃん、何してるの~。気を付けて歩かなきゃダメでしょ。」
俺よりも少し前を歩いていたリリアが俺が誰かに謝っている声に気付き、こちらへ振り返って注意をした。
「私も前をちゃんと見てなかったから…。ごめんなさいね。」
そう言って俺とぶつかった女の人とはお互いにペコリとお辞儀をし、謝り合った後に顔を上げて見合わせた。
すると、その瞬間俺は驚きと気恥ずかしさから顔が真っ赤になって固まってしまった。
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