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2.居場所

 アージェの家に泊まって2回目の朝を迎えた。

 昨日は教会に行った後、市場で買い物をしながら街の人々がしている噂話に耳を傾けたりして情報収集をしたが、国境に近い田舎というせいか思うような情報も得られなかったので、もうこのホレイショーの街には用がなく、今日には街を出る事を決めていた。


 アージェには昨晩、夕食の後にその事を話した。

 その時にハーフエルフという事でしなくても良い苦労を抱え、買い物一つするにも少し高めに買わされたりといった不当な扱いを街の人らから受けていると聞いていた俺は、街を出て一緒に旅をしようと誘ってみた。

 だがアージェには「父と母と暮らした、大事な思い出の詰まったこの家を捨てる事は出来ない。故郷と呼べる国はないから……僕にはこの家しか残されていないんだ。」と言って断られた。


「故郷がない、か……。ダブルだとそういう風になっちまうよな。どこに行っても自分の場所じゃない様な……。でもな、俺もダブルだから分かるんだが…、他の人と違って故郷が2つもあるって考えもあるぜ。…って、戦争の度々起きているこの世界じゃ、そう思うのは難しい…かな?」


 俺は自分が何気にした発言のせいで、この家そのものへ長い間積み重ねられたと思われる執着心により、暗い表情に変わっていくアージェを明るい笑顔に戻そうと元気づけた。


「戦争が無い時が続けはそうも思えるかもしれないね……。でも、戦争が始まればどっちの国にいても僕は敵扱いさ……。まぁ、普段でもハーフエルフって事自体で戦争が無くても忌み嫌われてるけどさ…ハハハッ……。」


 俺の話を聞き、困った顔をしながら笑うアージェに胸がキュッとなった。


「でもね、ルカさん。この家の事だけじゃなくて、この街には他にも何人かハーフエルフが居て仲の良い奴だっている。だから離れたくないんだ…。それにさ、これから聖都へ行ったりするんだろ? そんな所に僕みたいなハーフエルフが行ったらどんな目に合うか分からないしね。折角誘ってくれたのに……、ごめんね。」


「いや…、事情を聞いたのに小さい子を1人残していくってのが心配になっただけだから……。それなら良いんだ。気にしないで。」


「アッハッハッハッハッ! 小さい子って……僕はこれでも47歳だよ? たぶんルカさんよりも僕の方が年上なんじゃないかな? 見た目はリリアと然程変わらない年齢に見えるだろうけど……これでも半分はエルフだからね。」


 よっぽど可笑しかったのかアージェはお腹を抱えて大笑いをし、最後に俺へウィンクをしてみせた。


「まぁ半分だけだから、もう半分の方の影響で純粋なエルフよりも短命だし老けやすいから余計に見た目では年齢が解り難いんだろうけども……。」


「短、命…?」


「うん。ハーフエルフってのはオフィーリア国の聖書の加護は半分しか受けれないし、もう半分の祖たる国の聖書の影響も受けるからね。長くてもだいたい三百歳って所かな~ぁ。」


 その数字が短いとは思えず、キョトンとしているとリリアが横から俺に教えてくれた。


「オフィーリア国の人たちはね、私たちとは違って短くても五百年以上、長い人だと千年を生きる人が普通なんだって。しかも殆ど老けなくって、百年ぐらいかけてゆっくりと大人に成長した後は一生の殆どを若者の姿で過ごすらしいよ、お兄ちゃん。」


「へへっ…。だから三百年程しか生きられないってされている僕は短命で、しかも純粋なエルフのオフィーリア国民と違って成長が早いから老けて見えるんだ。それが神の呪いの様に見える事から『忌み子』とされる様になったとかって話もあるぐらいだし……。」


 アージェのそう話す様子に、俺はいくら話を聞いたりとかして知識を知り得ようとも、中身のこの世界に生まれ育った人なら誰もがもつであろうリアルな感覚は、平和な世界で生きてきていた戦争も経験したことのない俺には分からないんだろうなと思った。


「そっか、『忌み子』ってそういう……。それでも明るく生きて行けるなんて、アージェは強いね。」


「強くなんてないさ……。母や父が遺してくれたものを護りたいと思って毎日一生懸命に生きているだけさ。それよりも……、こんな話はもう終わりにしてさ…。」


 アージェはパンッと手を叩き、アージェの事について話す前に俺が言っていた話に戻した。


「オフィーリア国で一般的な乗り物が欲しいんだったよね? それならさ、この街を出て最初に見えた山を越えてから南の方に行った先にある港湾都市オズリックに行ってみると良いよ。この街には売っている店が無いのは勿論だけど、外国人にはなかなか売ってくれる様な代物ではないからね。でも、あそこなら外国人のルカさんにも売ってくれるんじゃないかな…? それにこことは違って肉や魚を食べる人が居るからさ、猫たちのご飯にも困らないと思うよ。だからルカさんたちでも快適に過ごせると思うよ。」


「詳しいんだね、アージェ。」


「父が旅人だったからね、幼い頃に色々な街の話を聞いてたんだ。オフィーリア国の民は基本、祖たる聖人様の影響で野菜や木の実なんかの植物しか食べないけど、この国を魔物から守る狩人は魔物の肉を食べて他の民にはない力を得るんだって…。エルフにとって肉を食べる事は命の危険を伴う事だけども、それによって身を変えた一部のエルフたちだけが住まう、いくつかある街の一つが港湾都市オズリックなんだよ。」

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