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9.寄付と祈り

 人間の姿をしていても中身はまるっきり猫であるのだから当たり前だが、パウロは裸を見られる事に何の抵抗も無く、寧ろ服を着ることを嫌がるのではとさえ思っていたが、パウロは服を着せられても俺たちと同じだと言って喜んでいたのでホッとした

 でも、裸である事に何の抵抗もないパウロの振る舞いに恥ずかしがってアワアワし、特に俺にパウロの裸を見せまいと動いて気を張っているリリアの方がまるで裸になっている本人かの様だった。

 パウロにやっと見つけた服を着せてからも、胸元がV字に大きく空き、背中もちょうど尻尾を出せるぐらいまで下に大きくパックリと開いていたデザインのドレスっぽい物を買った事に、その露出度の高さからリリアは少し不満げであった。


「どうしたんだよ。そんなにむくれて……。」


「べっつに~!」


 ツンケンした返事を俺に返すと、リリアは下を向いて自分の胸を服の上からペタンペタンと触っていた。

 その様子に俺は思わず我慢していた笑みが漏れる様にフッと笑ってしまったので更に不機嫌になってしまい、お詫びに頭に着ける可愛いリボンを買ってプレゼントすると笑顔になって喜んでいたので安堵した。

 パウロの下着やお風呂の時などに使う綺麗な布を数枚と靴を買い、序でに俺とパウロの頭を隠す為のちょうど良い帽子があったのでそれを買うと、後は教会へ寄付する為に持って行く物を選ぶだけだと市場の中を歩いていた。


「お兄ちゃん、寄付って何を買うの?」


「ん~……、何が良いんだろうね~。」


 俺とリリアはずらっと並んでいる屋台の店先に置いてある物を、流れる様に見ながら話をしていると、とある店主のオバさんが話しかけてきた。


「おや、兄さん。寄付ってどこに持って行くんだい?」


「教会にね、ちょっとお祈りに行こうと思ってて……。」


「アッハッハッハッ! それで寄付する物を市場でかい? 珍しい……!」


 店主のオバさんはおかしな事をするもんだとばかりに俺の事を笑った。

 この世界では金持ちはしっかりした建物の店舗のある高級店で買い物をし、貧乏人はこういう安く物を売っている市場の屋台で買い物をするのが常識となっているからだろう……。


「あんた、こんな所で寄付品を買うって事は外から来た旅人さんかい? 金、そんなに持って無いんだろ?」


「えぇ、まぁ……。」


 図星を言われて俺が口篭る様に返答すると、店主のオバさんは威勢よく助言してくれた。


「そんななのにどうしても教会に行くってんなら、豆を持って行きな。何を持って行くか迷ってんだろ?」


「豆?」


「あぁ、そうさ。この国では豆がとても重要な作物とされているのはもちろん、神様がもたらしたとされる神聖な食べ物でもあるからね。そう高くはないからあんたでも買い易いだろうし、教会も豆なら寄付品に持って行っても邪険にはしないはずさ。」


 俺はオバさんの助言を信じ、さっき見付けた豆の専門店の屋台で埴朱豆(つげしゅまめ)と呼ばれている小豆っぽい色の豆を両手いっぱいに買い、カゴに入れて包んでもらった。


「よしっ! これで準備はできたから教会へ行くぞ。」


「は~い!」


「ニャッ!」


 リリアが返事したのと同じタイミングでパウロも片手を上げて返事をした。



 大通りを街の一番奥にある教会まで歩き、入口に立っていた教会の門番にこの教会の管理者を呼んでもらい、その人に入場料代わりの寄付品の豆の入ったカゴを渡すと鉄門が開き、教会の中へと入ることができた。


「おぉ~! ここがオフィーリア国の教会か……。」


「お兄ちゃん、すごい豪華だね~……。装飾品とか一杯ついててキラキラしてるよ~。」


 俺とリリアはサクラヴェール国にある清貧な雰囲気のする教会とは全く別の、やたらあちこちにシャンデリアや金細工といった装飾を施した壁や天井と祭壇の豪華絢爛さに圧倒されていた。

 そんな中で猫たちは、キラキラとした装飾品が出入り口のドアや窓から入る風で揺れて光っているのに衝動を覚えた様で、ウズウズしてそれらに飛び掛かろうとしていた。

 アダムとイブはリリアが抱っこしていたのでそこから動く前に直ぐに抑え込む事ができたが、パウロは人間の姿になっているので少し大変だった。


「パ、パウロ…。止めなさい…!」


「ニャ~! あれを…、あのキラキラしたのを捕まえるのにゃ~!」


 パウロの後ろから俺が羽交い締めにして止めたが、パウロは少し興奮していて俺から逃れようとバタバタと暴れ、なかなか大人しくならなかった。


「パウロ! 良い子にしないと今度はどんなにお願いしても留守番させるよっ! 人間の姿になったのだから人間の様に振る舞ってくれないと怪しまれてしまうだろ。」


 俺が叱るとパウロはハッとして急激に大人しくなり、肩を落としてシュンとなった…。


「ごめんにゃさい……。ワタチ、折角お兄ちゃんと同じ様にできることになったのに……。」


「分かったのならいいんだ…。まぁ、まだ人間の姿になって1日目だから慣れないんだろうけど……、自然に人間らしく振る舞えるようになる様に徐々に慣れていこうな。」


「ニャ……。」


 ややあってようやく落ち着きを取り戻し、祈りを捧げる為に祭壇の前に皆横に並んだ。


「へ~ぇ…。この国の教会のシンボルは黒と白の丸が半分ずれた状態で重なったマークなのか~。」


 俺たちは跪き、手を重ねてお祈りをした。

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