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7.新たな旅仲間

「『ケットシー』? どういうことだ!?」


 指輪から映し出された本に書かれた予想だにしなかった言葉に俺が驚いていると、長い間考え事をしていたリリアがさっきパウロが喋った時よりも驚愕した表情をして、不意に俺の外套の裾を引っ張ってきた。


「お、お兄ちゃん…。それ…は、一体……なぁに?」


「ん? あぁ………。」


 指輪から映し出されたものを見て、リリアはプルプルと震えていた。

 俺は「しまったな……。」と思い、頭をポリポリと掻いた。


「これ、リリアにも見えるの? 内容も読めるのか?」


 もしかしたらと思って、一応確認の為に聞いてみた。


「内容? 見えるのって……、その指輪から光が空中を照らす様に出て来たと思ったら何やら本みたいなのが出現して……。そうしたらお兄ちゃんが独り言を喋り出して……。それに、出てきた本もどこかで見た事がある様な気が……。」


「えっ! えぇーっとぉ…………。」


 ものの数秒だったのにもかかわらず、リリアが俺に問いただすが如く迫って来てたので気まずくなり、それが1時間以上にも感じられる程の沈黙が続いた。


「分かった! あの本に似ているやつは街の教会で見たんだ! 教会に置いてある聖書のレプリカだわ。…っ! お兄ちゃんはもしかして……、いえ、きっと…神話で千年に一度、神に遣わされて降臨されると言う救世主(メシア)様なのね!」


「あー、うぅ~……。」


 俺が言い淀んでいると、腕の中で眠そうにしていたパウロが意気揚々と代わりに答えてしまった。


「そうにゃ! お兄ちゃんは悪い奴から奪われてしまった神話を取り戻そうと異世界より神様から遣わされた救世主(メシア)様なのにゃ!」


「あっ! ちょっと…。バカ、パウロ。」


「ひっどいにゃ~!」


 俺が『バカ』と言って焦って制止しようとしたのに反応し、パウロは肉球でポカポカと俺の胸に猫パンチしてきた。

 その様子がつい可愛くて何の話をしていたのかも一瞬つい忘れてしまい、顔がニヤけてしまった。


「お兄ちゃん!」


 リリアの俺を呼ぶ声にハッとして我に返ると俺の顔をジーっと真剣な眼差しで見つめていた。

 本当は余計な面倒事や、いちいち大袈裟に傅かれたりするのが嫌だったので正体を隠していたかったが、もう隠しきれないダメだと思って諦めた…。


「……あぁ、確かにパウロの言ったとおりだが………。」


「あのね……、私をお兄ちゃんの御供として旅に連れて行って欲しいの! 何でもするから!」


「なっ………!!」


 リリアからの突然の申し出に、俺は息を呑んだ。


「今パウロも言っただろ? 危険な旅なんだ…。それにお前には母親もいるだろ…。どうするんだ?」


「母さんは…説得する! とにかく、村にはもう居たくないの……怖いのよ………村の人が。もうここでは信じて、笑って暮らせそうにないの………。」


 泣き叫ぶ様に言った後に俯いて寂しげな顔をしたリリアの言葉に、俺の胸ははり裂けそうに苦しくなった。

 俺はパウロを抱いているのと逆の腕でリリアを抱き寄せ、ポンポンと撫でた。


「…分かった。ただし、リリアの母さんがOKを出したらな…。それが条件だ。」


「ありがとう、お兄ちゃん!」


 リリアはすごく喜び、俺に嬉しさいっぱいにキツく力を込めて抱き付いてきた。


「それと……、」


「ん?」


「『何でもするから』なんて、そんなに気軽に言うもんじゃないぞ!」


 これから先の事を考え俺が注意をすると、リリアは俺の胸に顔を埋めて照れた様子でもじもじしながら答えた。


「お兄ちゃん、優しそうだったし……。酷い事は絶対にしないだろうと思ったんだもん。それに……お兄ちゃんになら何されても良いよ。」


「コ、コラコラコラ……。大人をからかうもんじゃないよ。」


 俺は一瞬ドキリとして焦ったが、目の前にいるリリアは10歳かそこらの子供だったのを思い出して落ち着いて対応した……と思う。


「あー! リリア、これでももうすぐ11歳なんだよ~。子ども扱いなんてしないでよねっ!」


 暗くなっていたリリアも落ち着いてきた感じで、ちょっと大人ぶった事を言いながら俺に無邪気な笑顔を見せていた。

 それからは再びヒュドラを荷車に載せる作業に戻り、荷台がいっぱいになるまですぐに載せ終えた。


「よしっ! とりあえずこれで村に一旦帰ろうか……。」


「うん!」


「お待ちくださいにゃ。」


 俺とリリアが荷車を曳いて山から帰ろうかとしていた時、見知らぬ声が聞こえた。

 その声がどこから聞こえてきたのかとキョロキョロと見回していると、外套の裾の一番下端の方を引っ張られている感覚がした。

 下を向くと、そこには先程の茶トラと白の2匹の猫が俺を見上げていた。


「何かにゃ?」


 俺の肩の上に座っていたパウロが下を見下ろし、2匹の猫に問うた。


「えっ? 今のはお前たちが喋ったのか!?」


 驚いていた俺の事など無視してパウロと猫2匹は話し始めた。


「私たちもパウロ様たちの旅に連れて行ってくださいにゃ。最初の眷属となった私たちは貴方と共に在らねばなりません。それに私たちの始祖となったパウロ様と、共におられる救世主(メシア)様お二方を奉る為の国を後に新たに築かなければなりませんので……、その新たな地を探し、開拓をする為に外の世界をもっと知りたいのです! どうかお願いしますにゃ!」


 茶トラと白はの2匹の猫は必至に頼み込んできた。

 ややあって、パウロから離れることができなくなったと訴える2匹の猫も、俺たちと一緒に旅をすることになった。

 少し話をしていると茶トラ猫が男の子で白猫が女の子と教えてくれたが名前は持って無いと聞いたので俺が名前を付けてやる事にした。


「この場所の名前が『エデン』って言うらしいし……、ちょうどいい! 茶トラのお前がアダム、白のお前がイブな。」

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