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6.魔法の力を得た馬

「さぁ! 今日もまたたっぷりと走ってもらうからよろしくね~。」


 昨日と同じ様に今日もまたパウロに起こされた。

 だが二度寝するには遅いが朝食の時間には早かったので、俺は厩舎へ行って馬の手入れをしていた。

 藁を束ねた束子の様な物で体をブラッシングしてやると、気持ち良いのか嬉しそうに馬は鳴いて俺に答えた。


「お、おはようございます。僕が馬たちの朝の世話をしに来る前に起きてるだなんて……お客さん、朝早くにお目覚めなんですね。」


 声をかけられた俺が振り向くと、そこには10歳ぐらいの背格好をした少年がいた。


「あぁ、おはよう。うちの猫に起こされてしまってね。朝食の前に、折角だから自分の馬の様子を見に来たんだが…。君は……?」


「この宿の受付をしているのが3つ年上の姉ちゃんで、僕はその弟なんです。僕は厩舎での仕事とか雑用とかを任されているんですよ。」


「へ~ぇ。あの子の弟さんなんだ~。小さいのにしっかりしているね~。」


「都会の方じゃどうか知らないけど…、村では10歳ともなれば1人で仕事を任されるからね。しっかりしないと生きていけないんだよ~。」


 少年はそう話しながら厩舎の掃除をし始めた。


「お客さん………、昨日は村の者を助けてくれてありがとう。あの人、僕が小さい頃からよく世話を焼いてくれるオバさんなんだ…。運が悪ければ嵐に吹き飛ばされて死ぬって事もあるって言うし……、本当に嬉しかったよ。」


 少年と話をしていると良い感じの時間になったので朝食を食べに昨晩の酒場に行く事にした。



「おはよう、お客さん。昨晩はよく眠れた? 猫ちゃんも!」


「おはよう。ぐっすりと眠れましたよ。それに昨晩の食事が美味しかったから、今朝も起きてから朝食が楽しみだったんです。」


 俺は宿屋の娘に笑顔で挨拶をされたので、それに笑顔で返した。


「うわ~ぁ! そんな嬉しい事を言ってくれるだなんて、ありがとう。」


 宿屋の娘はルンルンとした足取りで奥の厨房へと入っていった。


「はい、お待たせ~。今日の朝食は~、ワイルドボアのベーコンが入ったポテトキッシュに、キャベツの酢漬け、それに野菜のスープとお茶だよ~。」


「今朝も良い匂いで美味しそうだ! いただきます。」


「で、こっちが猫ちゃんの朝ご飯の…、コカトリスの解し身入りのスープね~。」


「ニ~ィ。」


 パウロが嬉しそうに差し出された朝ご飯を食べている姿を宿屋の娘はしゃがみこんで頬杖をつき、ニコニコしながら眺めていた。


「お客さん。昨日来た時に1泊だけで朝には出るって言ってたけど…、本当にもう行ってしまうの?」


「うん、長い旅の途中だし。それに……行かなきゃならない場所があるからな。」


「そっかぁ……。猫ちゃんとはもうお別れなんだね…。」


 宿屋の娘は、残念そうにしながら食事中のパウロの頭を撫でた。


「いつになるか分からないけど…、用事が済んだらまた大きくなったこいつと一緒にこの宿に来るから……。だから寂しがらないで。」


「うん……。」


「そうだ! とっても美味しいごはんを出してくれたのと、こいつにも良い物を食わせてくれたお礼に………。これはとっておいて!」


 俺は懐からお金の入った袋を取り出し、宿屋の娘の手に銅貨3枚をチップとして渡した


「こんなに!? 銅貨3枚って、泊まり賃の半分だよ? こんなには貰えないよ~。」


「世話になったからな。まぁ、それだけ美味しかったって事で……気にすんな。」

 そうして俺は宿をあとにし、村長に再び挨拶を済ませると、また馬に乗って東へ走り出した。



「この分だと……今日中にアシュワガンダに着くかな? 村長にお礼だって言われて貰ったやる気が漲る様になる薬草ってのを食べさせたら馬も元気が湧いたのかスピードアップしたし。」


 本当ならもう1泊どこかで野営でもしないと着かない距離を、街の閉門ギリギリの時間ではあったがあっという間にアシュワガンダにまで着いた。


「さすがに……ちょっと、酔ったな…。」


 かなりのスピードで走っている馬に乗りっぱなしだったので俺は乗り物酔いをしてしまった。


「とりあえずは宿を探さないとな…。街ともなればあの村の宿よりは高いだろうけど……、王様が持たせてくれたお金も無限にあるわけではないからなるべく安い宿に泊まらないとな……。長い旅だから贅沢はしていられないし………。」


 街の門を通る際、俺は衛兵に身分証確認をされた時にこの町で一番安い宿はどこか聞いてみた。


 俺が門を通る最後の人間だったからか、閉門時間ギリギリという忙しい時間帯にもかかわらず丁寧に教えてくれた。


「えーと…、門前通りをまっすぐ行って、2つ目の角を右に行くとある白い看板の所だっけ。………あぁ、あった! あっ……た?」


 そこにあったのは築何年なんだろうかと考えてしまうほど、ツタの絡まった壁が印象的な古い建物だった。


「まぁ、老舗って言っていたし……。石造りだし、味があるって言えば…うん……。」


 震度4の地震でも来たら崩れ落ちそうな感じはしたが、ここは地球でもなければ日本でもない。

 滅多と地震は起こらないと城でも聞いていたので、安さの魅力に負けてここに泊まる事にした。

 なにしろここは交易都市であるので外からくる旅人は毎日たくさんいる。

 それで儲けようとする人も多く、衛兵が言うにはこの街の宿はどこも結構高いらしいのだ。

 こういう所はどこの世界でも一緒だなと思いながら古びて音の鳴るドアを開けた。


「いらっしゃい。ようこそ止まり木亭へ。」


 中へ入ると、受付カウンターには白髪の爺さんが座っていた。

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