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10.慌ただしい日々の終着

 慣れぬ馬車に村から近くの街まで、5時間ほど乗ったまではまだ良かった…。

 馬車に乗るという初めての事に珍しい物に乗ったという事もあって気持ちも少し高ぶっていたし、ちょっとした事件もあったので疲れを気にしている余裕なんかなかった。

 だが途中で野営を2度し、休憩を何度か挟みながらも3日もの間ずっと座りっぱなしだった馬車の旅は本当に疲れた。


「ほら、ルカ様。あれが領都フェンネルですよ。」


 従者は御者をしながらも時々後ろを振り向き、一人で突っ走って色々と喋ってくるアルテロにぐったりとしている俺を気にしてくれていた。


「……アルさん。この辺は何も出ない? 窓を開けても良いかな?」


 窓を開けて外を見たかったが数日前の事を思い出し、ハッとしてアルテロに確認をとった。


「えぇ。もう領都のすぐ近くですし大丈夫です。窓を開けても支障のない地域ですよ。」


 俺は馬車の窓を開けて顔を出し、眼前に広がる街を見た。

 それはサントルの街よりも大きく、強固な城壁で囲まれている城塞都市だった。

 サントルよりも多くの衛兵が門番に立ち、俺の乗っている馬車がアルテロのだと分かると、「ご案内致します。」と言って今度は身分証確認もせずに街の中を騎兵が馬で先導してくれた。

 街の一番奥にあるヨーロッパでよく見そうな古びた城に着き、中へ入ると偉そうな人が待ち構えていた。


「ようこそお越しくださいました。お話は使者にて伺っております。わたくしはこの領を任されております、フロレスターノ・ディ=フェンネル伯爵と申します。さぁ、長旅でお疲れでしょうからこちらへどうぞ。」


 胸に手の平を当てて上品におじぎをすると、奥の部屋へと俺を連れて行き、たくさんの御馳走でもてなしてくれた。

 酒を勧められた時は「まだ成人していないので」と断ったので少し残念そうな顔をされたが、御馳走の後にはこの世界初の風呂に入り、大きなベッドが置かれた部屋も用意され、熟睡することができた。

 翌朝、朝食をとった後に領主に呼ばれて執務室へと行くと、部屋の中にはアルテロも待っており、俺についてのここに来るまでの詳しい話を求められた。

 海の真ん中で小舟に乗っていたところから始め、トランに世話になった事や神様に会った事も……、だが話をした詳しい内容は伏せて話した。


「信じられん…、神に会えるとは……。やはり貴方は特別なお方なのですな。」


「普通は会えないものなのですか?」


「えぇ…。声は聞こえてもお姿までは見ることができません。お姿を知ることができるのは歴代の救世主、聖人様たちだけなのです。」


 俺はそういうものなのかと、「へ~ぇ」と頷いた。


「さて、詳しいお話を聞いても、やはりルカ様を聖都へとお連れし、王と神殿長に会っていただかなければならないと思います。神からもまずはこの国で学んで鍛えろと仰られている様ですので、王宮にて先生をつけてもらい、そこで勉強をするのが一番良いとわたくしは思いますので…。こうしてはいられません! 早速今日の昼からでも聖都へ出発しましょう。」


 そう言ってフェンネル伯爵は俺に旅の準備ができるまで少々待っていてくれと談話室に下がらせた。

 ここに来るまでと同じ様に、また何日も野営をしながら長いこと馬車に乗らなければならないのかと思うと気が滅入って沈んでいたが、それを見た侍女が温かいお茶と甘いお菓子を用意してくれたのでそのお蔭もあって少し落ち着くことができた。

 そうこうしている内に昼過ぎになった。

 すると使用人が「ルカ様。準備が整いましたので外へお願いします。」と、俺を呼びに来た。

 外へと出ると昨日まで乗っていたのと違い、側面に家紋の様なものが入った大きく立派な馬車が用意されており、乗り心地も前の馬車よりも幾分か快適であった。

 そして今度は俺に伯爵とアルテロ、伯爵専用の御者の4人で聖都へと一週間かけて向かった。



 遠目から見ても目立つほど大きな聖都の城へと着くと、今度は王族たちが出迎えてくれた。

 フェンネル領の時よりも倍以上豪華な御馳走でもてなされ、俺の代わりにフェンネル伯爵が詳しい話をしてくれた。


「そうか、神が……。よしっ! 国一番の学者たちや騎士長を先生に用意しましょう。この城にルカ様の部屋もご用意しますので、天命どおり1年間しっかりと鍛練に励むと良いでしょう。…救世主様がこの城に住んで学んでくださるとは実に光栄でありますなぁ。」


 そう言って王様は宰相と相談をし、先生をつけてくれる他にも俺に色々と支援をしてくれた。

 元々英語の勉強が苦手だった俺にはこの世界にある4つの言語全てを1年で習得するのは無理なんじゃないかと思われたが、神から与えられた頭脳のお蔭で心配していたよりは覚えていくことができて喜んだ。

 4つのそれぞれの言語を先生となって教えてくれたのは4人のそれぞれ別の他国からの亡命者による、城に仕える下級役人たちだった。


 ただ、先生から言語と共に学んだこの世界の歴史における神話の授業に時間を取られ、この世界でのルールやしきたりと言った常識を最低限度学んだだけで他の勉強までできず時間となってしまったので、この先に待ち受ける長い旅に少々不安を残すこととなった。


 しかし最も時間を取られたのは貧弱な体の改善の為に始めたが苦労ばかりだった剣術であった。

 神様の言っていた通り、体力も何もかもが本当に赤ん坊に毛が生えた程度でしかなかった新しい体は、ただ『鍛える』というだけでも大変だった。

 体を鍛える為と思い、騎士長を先生に新米の騎士がする基礎訓練から始めて体力をつけ、次に剣術を習い始めたは良いものの、練習用の木剣は少々重く扱うのが大変で、まともに振るう事ができるようになったのは半年以上経ってからだった。

 しかし次第に筋肉もついてガッシリとしていき、段々と見違える様に逞しくなっていったので、頭も体も伸びしろだけはものすごく多い様である。


 そうして1年が経ち、俺も16歳となって成人を迎え、王宮で仲良くなった皆に盛大に祝われた。

 その後、成人の儀式も済ませた俺には旅立ちの日が近づいてきていた。

★ブックマークや感想などありがとうございます。

更新の励みとなっております!


★これで『第0章』は終わりです。

 次回からは『第1章』となります。

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