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腹ペコ姫がへそを捧げてくるので俺にはもうどうしようもない!  作者: 蒼真晟仁
第一章 へそ美人姉妹と出会ってどうしようもない!
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へそ銃弾を撃たれたら……?

 バンッ!


 俺が戸惑ってるところだったが、ティアラちゃんはなんでもないように、自分の使用人に向けて引き金を引いた。

 嘘だろ!?

 ほ、本当に撃ちやがった。

 ティアラちゃん、そんな人だったの? 宇宙人恐すぎるだろ!


「どどどどどうしよう!?」

 救急車! 119! 応急処置は俺がするのか!?

「おにぎりくん、落ち着いて。大丈夫だから!」

「これが落ち着いて……落ち、着いて……」


 あれ? そーいやリロルさん、撃たれたのに血も流れてなければ、倒れてもいねー。

 ただずっと、座っているだけ。

 何がどうなってるんだ……?


「!」

「な、何!?」


 疑問に思ったのも束の間、硬直状態だったリロルさんは突然動き出したかと思いきや、さっきのデカいダンボール箱に飛びついたのだ。

 無我夢中でその中の野菜や果物をバリボリと食い漁る様は、とてもさっきまでの彼女とは思えない。


「ぐへへへへ! 食べ物、食べ物です! ぐへへへへ! じゅるびちゅぐちゃばりぷはああああああ!」

 綺麗な年上お姉さんから、変態食い倒れゾンビへジョブチェンジ。

 ど、どうしちまったんだ? 狂っちまったのか?

「ね、これで分かったでしょ? この銃弾の能力が」

 エサをもらった犬のようにむしゃむしゃとがっついているリロルさんを見てから、得意げにティアラちゃんはもう一つ銃弾を拾った。

「この銃弾は地球のものとは違ってね、殺傷能力はないの」

「……こんな風に、人を動物みたいにしちまうってことなんですか?」

「んー、ちょっと違うかな。もう一回見せよっか」

「いや、これ以上はもう!」

「いいからいいから♪ おにぎりくん、何か面白いことやってみて」

「へ!? きゅ、急にそんなこと言われても……」


 面白いことできないと撃たれるのか? 俺もあんな野良犬みたいになるの?

 それは勘弁!

 お、面白いこと……面白いこと……

 恐怖と動揺で回らない頭をどうにか回す俺の目に入ってきたのは、レトルトのカレーだった。



「か、カレーは、辛ぇ!」 



 ……………………………………………………………………………………。




「あはは、おもしろーい」

 やめて! 無理に言わないで! そんな棒読みは心が痛いよ!

 俺が羞恥に喘いでいると、お腹丸出しのティアラちゃんのへそから、一つの銃弾が生まれた。

 彼女はそれを再び装填すると、獣化したリロルさんに向けて放つ。

 こ、今度はどうなっちゃうんだ……?


「…………あぁ~~~…………怠いです」


 さっきまでの獰猛さを失ったリロルさんは、食べることをやめると、その場に寝転がってしまった。

「こ、今度はどうしたんだ? リロルさん」

「もいっちょ!」

「また!?」

 再び銃弾を放ちリロルさんへ――は行かず、入ってきたときからはしゃぎまくっている謎の鳥に命中。

 すると、籠をぶち壊さんがばかりに暴れていた虹の翼は萎れて灰色になっちまった。

 俺のギャグそんなにつまんなかったですか!?


「どう? これ。感情弾っていうの」

 地味にショックを受けている俺や、だらけた美女と灰色になったペットを余所に、ティアラちゃんは銃弾をつまんで掲げる。

「感情……弾?」

「そう。私から出てきた銃弾だから、私が思ったことが被弾した人にも伝わる銃弾なの」

 ……あぁ~、なるほど。

 だから、リゾットを食べてる途中に出てきた銃弾に当たったリロルさんは、もっと食べたい! っていう感情になるのね。


「ってことは……」

「んー。さっきのギャグねぇ、センスはあったかもだけど、ちょっとつまんなかったかな」


 いやあああああああああああああああああああああああああああああああ!


 センスはあったかもとか言わないで! リロルさんがあんなにだれてるってことは、相当つまんなかったってことじゃん! 絶対黒歴史決定だよこれ!

 …………あ~、恥ずかしい。

 誰にも言えない思い出を作らされた俺は、どうにか自分に言い訳を探そうと頭をこねくり回していた。

 そして、約一時間後。

 ティアラちゃん曰く、ハンドガンで一発撃たれた場合個人差はあるけど、大体一時間程度で元に戻るとのこと。

 いつものリロルさんに戻ったところで、話再開である。



「先程はお見苦しいところを見せてしまい、なんと言っていいやら……」

「いや、リロルさんのせいじゃないですし……俺こそすみません。こんなことさせちゃって」

 周りには、リロルさんが食い散らかした野菜や果物が転がっている。

「それで、いかがですか? 信じていただけますか?」

「あそこまで見せてもらったら……はい」

「本当ですか!?」

 感激の表情を浮かべるリロルさんは、俺の手を取ると両手で握り締めてぶんぶんと上下に振ってくる。

「ほんとですほんとです!」

 流石に信じないのは罪悪感みたいのもあるし、何より新たな黒歴史が増えたのに成果がないと俺が嫌だ。


「では、バジル様の説得にも協力してくださるということですね!? もう各地を回って、感情弾で皆さんを脅さなくても良いということですね!? 姉妹喧嘩に巻き込まれて、はしたない姿を晒さなくても良いということなんですね!? ね!? いやぁー良かった!」


「はいぃ!?」

 何勝手に話進めてんだあんた!

「え、そういうことじゃないのですか?」

「違いますよ! たしかに信じることにはしましたけど、そんなリスキーなことに乗った覚えはないです!」

「そ、そんな!」


 あわわわわーと、ころころ表情を変えるリロルさん。

 そんな顔されてもダメなものはダメだ。

 勉強・運動・容姿・人望。全てに特化したあんな完璧お化けを敵に回したら、心臓いくつあっても足りやしない!

 けどリロルさんも必死なようで、ティアラちゃんに援護を要請している。

「ティアラ様! ティアラ様からも何か言ってください! 傑殿のお力がなければ、バジル様の強行を止めることなど――」

「いいよ、リロル」

「しかし!」

「リロル!」

「……はい」

 ティアラちゃんはリロルさんに協力することはなく、それを止めた。

「おにぎりくん」

「は、はい」

「ごめんね、無理言っちゃって。私の命の恩人みたいな人なのに。これで十分。ありがとね、もう帰ってもらって大丈夫だよ。バジルも帰ってきちゃうし」

「い、良いんですか? 本当に」

「うん。その代わり、また私にご飯作ってくれる?」

 ちょっと切ない表情の笑顔が、心に痛い。

 けど、

「はい……もちろん」


 俺はこう答えるに留めた。

 話がまとまったところで、ティアラちゃんから解散宣言が出され、俺は帰路につくのであった。

 ――商店街に行くのは、また今度で良いかな。

7話目でした!

自分の感情に合わせて人の感情を変えられる感情弾……素晴らしい()

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