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腹ペコ姫がへそを捧げてくるので俺にはもうどうしようもない!  作者: 蒼真晟仁
第一章 へそ美人姉妹と出会ってどうしようもない!
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腹ペコちゃんの正体って?

 できあがった料理を持って、俺はティアラちゃんの前へと戻って来た。

 リロルさんが用意してくれたローテーブルに皿を置き、いつでもティアラちゃんが食べられるように準備する。

 俺が作ったのは題して、野菜たっぷりミルクリゾット!

 キャベツとか白菜とか細かく切ったニンジンとかをフライパンに入れて、牛乳で煮込み、ご飯と混ぜて卵を加えれば完成だ。

 キッチンは、どっかのレストランにでもあるような立派すぎるものだったがなんとか使えた。

 味とか栄養面はしっかりしてるはずだし、きっと美味いはず!


「ティアラ様、傑殿ができたての料理を持って来てくださいましたよ。……ティアラ様?」

 おかしい。あの食いしん坊グラビアアイドルのティアラちゃんが、食べ物を前にしてビクともしないなんて。

 まさかそんなに深刻なのか?

 それとも、このリゾットが全然美味そうに見えないとか? 

 だとしたらショックだが、今はティアラちゃんになんとしても腹に物を入れてもらわんと――って、

「ん、ん?」

 えーと、なんだこりゃ?

 ティアラちゃんの様子をちょっと窺おうとしただけなんだが、鼻をバカみたいにひくらせているお姫様を見るはめになってしまった。

 これ、どういう反応すればいいの?


「よし!」

「うおっ!?」


 まだ顔色は悪いままのティアラちゃん。だが、そこにはさっきまでなかった生気がしっかり備わっている。

「いただきましゅっ!」

 一応挨拶だけは忘れない律儀さ。

 流れるようにテーブルからスプーンを奪うと、皿を持って掻き込むようにリゾットを食べ始める。


「あちっ! あちっ!」

「ティ、ティアラ様、できたてですし久しぶりの料理なのですからゆっくり食べてください!」

「そんなこと言われたって、こんなに美味しいものゆっくりでなんて食べられないよ!」

 ちょっと多めに作っておいたリゾットは、数秒のうちにぺろりと平らげられてしまった。

 こんな美味そうに食ってもらえて超嬉しいけど、なんだろな、この動物園感。

「ふぅ~ご馳走様」

 食べ終わったティアラちゃんは、皿を置いて合掌した。

「良かったですねティアラ様……ティアラ様!?」

「ん、なぁに?」

「お、お腹! お腹お腹!」

「え……あっ」


 幻覚かと思えるような現実。

 ちょっと多めに作ったとは言ったが、あくまでちょっとご飯を多くした程度だ。

 今にも腹と背中がくっついてしまいそうな人の服が、パンパンになる程は作っていない。

「あ、あ……」

 止まらない。ティアラちゃんのブラウスの膨張が止まらない!

 ガチガチと金属音を立てて、お腹が大きくなる。

 見る見る内に抑えきれなくなり、そして――

「あぁ……」

 ティアラちゃんから「やっちまった」みたいな溜息が漏れた。


 ブラウスが限界を迎えると、ボタンが弾け飛び、中から予想していた通り、銃弾が出て来た。

 春休みにティアラちゃんが俺の家で飯を食ったときと同じ現象だ。金属音がした時点で想定はできたから驚きはしないが……いや、やっぱ驚くわ。

 リロルさんは頭を右手で抱えている。

 つまり、そういうことなのだろう。

 そりゃそうだ。こんなこと、この事情を知らないやつには話せねーわな。

 俺は一回見てたから初見よりマシだったけど。

 ……さて。


「リロルさん」

「は、はい!」

「説明して、もらえますよね?」

「……はい」


 彼女は観念したようにその場で正座する。

 俺も話を聞くため、その場にあぐらを掻いた。

 当の本人であるティアラさんは、裾の出てしまったブラウスの端を持って顔を隠している。

 代わりにお腹は丸出しだ。

 いや隠すとこそこじゃないでしょ。俺得だけどさ。


「で、これはどういうことなんですか?」

 これ、というのはもちろん銃弾のこともだが、その他諸々のことも含まれている。

「……傑殿」

「はい?」

「私たちが宇宙人だと言ったら、信じていただけますか?」

「バカにしてると思います」

「だよねー」

 たははぁ。と、ティアラちゃんが欧米人みたいにお手上げしている。

「でもおにぎりくん、リロルの言ってること本当なんだよ? 信じられないかもしれないけど、最後まで聞いてくれるかなぁ。……ダメ?」

「……まぁ、聞かせてはいただきますけど」

 あのちっさな体から大量の銃弾が出てくるとこ見ちまったからな。少しは信憑性もある。

 プラスして、ティアラちゃんからお願いポーズをされては断れん。

「ありがとー! おにぎりくんやっぱり優しいね」

「……はぁ」

 いかんなぁ。いかんいかん。

「じゃあ、聞かせてください。リロルさん」

「ありがとうございます、傑殿。実は――」


 そうしてリロルさんは、とんでもないことをいくつも告げたのだ。

 まず、ここにいないバジル様も含めた彼女らは、ピューパーク星という惑星の人間で、食料を求めて地球にやってきたらしい。ピュパーク星では食の文化や技術が地球よりも進歩していて、大体の料理を機械がしてくれるそうなんだが、それが仇になった。

 今の地球なんかよりずっと深刻な食料危機に陥ったので、へそから銃弾を出すことのできる二人と付き添いとしてリロルさんが、食料を調達しにここまでやってきた、と。


 因みに、へその排出にはかなりのエネルギーを使うらしい。だから、へそから銃弾が出なくても二人の相手をできるリロルさんが、付き添うことになったんだと。

 そんでもって彼女らは、その星の中でも上位の国のお姫様だとかなんとか。まぁあの容姿に振る舞いだからな。納得はできる気がする。

 地球――日本に辿り着き、最初は穏便に食料を分け与えてもらう方法を探っていたが、バジル様の意向で強行策に出た。

 これまでやってきた握手会やら芸能活動も全てその一環で、今ではイベントとかで各地を回っては銃をぶっ放して人々から食料を奪っているらしい。

結果、日本がヤバい状況になっちまった、と。

 そういうことらしい。


 ふーん。


 ほー。


「これが、私たちが地球へやってきた理由です。……信じて、いただけますか?」

「いや信じられないでしょ」

「です、よねー」


 がっくり肩を落とすリロルさん。

 こんだけ詳しく教えてもらってもやっぱ現実味がわかない。

 だってそうだろ。宇宙人とかなんとかって、あくまで映画とかアニメのフィクションの話だし。

 もしこの食料危機の原因がティアラちゃんやバジル様のせいだったとしても、宇宙人だからですなんて誰が信じるんだ。


 ……でも。


 彼女は一体、これを何人の人に、そんな真面目に話してきたんだろう。そんな思いが脳裏をよぎる。

 そんで、誰からも切り捨てられてきたんだろうな。なんか二人を見てると、想像できてしまう。

 俺は、その内の一人になりたくないと、なんとなくだけど思ったんだ。

「リロルさんが真剣だってことは伝わって来ました。ですので、もう一つ何か証拠がありませんか?」

 宇宙人なら、何かビームサーベルみたいのが使えるとか、血液が赤くないとか……そんなんじゃなくても、地球人と違うとことかなんかあるでしょ。

「証拠……ですか。証拠……」

「証拠ならあるじゃない!」

 ソファーを叩いて立ち上がり、床に転がっている銃弾を拾い上げるティアラちゃん。

 何をするのかと思いきや、どこからともなくハンドガンを取りだして、弾をマガジンに装填しだした。

 そして、リロルさんに銃口を向ける。


「え、ちょ、ティアラちゃん!?」

「いいよね、リロル?」

「まぁ……仕方ないですね」


 何がいいの? え? リロルさん死んじゃうよ? え?


6話でした!

さぁ、我らがリロルさんはどうなってしまうのか!

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