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腹ペコ姫がへそを捧げてくるので俺にはもうどうしようもない!  作者: 蒼真晟仁
第一章 へそ美人姉妹と出会ってどうしようもない!
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緊急事態と臨時報酬

 二十分近くほぼ全力ダッシュを決め込んで辿り着いた場所は、三年前まで渋谷109が建っていた場所。 


 突然の隕石襲来でぶっ潰れちまったが、今は五十階建ての高層マンションが建っている。

 と言っても、ここ全部が皇家の所有物らしいから、住んでるのはティアラちゃんとバジル様。それと使用人さんたちくらいだろうけどな。

 そこの裏口っぽいところから最上階まで、ガラス張りのエレベーターで一気に上った。

 透明な空間はぐんぐんその高度を高め、浮いているような錯覚すら覚える。特に高所恐怖症とかではないから、いつもなら景色を楽しみたいところなんだが……如何せん苦しい。

 でもリロルさんはけろっとしていて、呼吸音の一つも聞こえない。

 サイボーグかあんたは。


 ようやく息が整ってきた俺は、何部屋かをぶち抜いて作られたと思われるでっかいリビングに通された。

 イメージ的には科学と日常……的な感じか?

 全体的に綺麗で整頓されてはいるんだが……システマチックというかハイテクというか。

 至る所に見たことないような形状の家具やら機械やらが置いてある。

 有名な画家が描いた絵画を具現化して、現代に寄せました、みたいな?

 他にもペット……なのか分からんが、籠に入った見たことない鳥までいやがる。

 大きさはインコくらいだが、胴体が真っ黒で翼が虹色だ。パタパタ羽ばたいてみせるとすっごい目立つ。

 皇家半端なさ過ぎだろ……


「こちらです」

 神妙な面持ちのリロルさんに連れられたのは、四人は座れるんじゃねーかってくらいのソファーの前。そこにティアラちゃんが、制服のまま横たわっていた。

 顔色も悪く、汗も大量に掻いている様子だ。

 おまけに呼吸も、ひっひっふー。ひっひっふー――

 そりゃお産のときの呼吸法だぜ、ティアラちゃん。


「ちょ……どうしたらこうなっちまうんですか?」

 ソファーで弱々しく息をしているティアラちゃんは、明らかに衰弱している。

 握手会のときから様子はおかしかったが、まさかこんな……

 元気の塊みたいな、いつもの快活さはどこにも見られない。

 呼吸のせいでシリアス度がちょっと落ちてるけど。


「ハンバーグ……スパゲッティ……ステーキ……ピッツァ……」

 あ、やっぱいつも通りかも。

 とはいえ、だ。


「それは……ある理由で、としか……」

「答えられないんですか?」

「申し訳ございません」


 なんだそれ。

 人が一人、こんな死にそうなまでに弱ってんのにその理由を教えられねーってのか?

 逆にこうなるほどの理由だからこそ、教えられねーのかもだけど。

 でもこれって……あんまりだよな。


「お腹……空いたぁ……」

「ティ、ティアラ様!」

 目を覚ましたティアラちゃんの小さな一言に反応し、リロル様は跪いて彼女に近づいた。

「あ、リロル……と、おにぎりくん? ……ここは?」

「お屋敷ですよ。授業が終わった後すぐに倒れてしまわれたので、私がここにお運びしたのです。何かしてほしいことなどはありませんか?」

「ご飯、食べたい……」

 ティアラちゃんがそう告げると、リロルさんは一度顔をしかめた。

「……分かりました」

 だがすぐ、吹っ切れたように俺を見ると、急いで部屋の奥へと走って行き、通常の三倍はあるんじゃないかっていうくらいの、でっかいダンボールを持って戻って来た。


「傑殿!」

「な、なんですか!?」

「これ! この食材を使って、料理をしてほしいのです!」


 ドサッと重たそうなそれを床に置き、開く。

 すると、今ではなかなか見られない光景が中から現れた。

 そこには、野菜や肉、その他缶詰類やレトルト食品まで多様な食料がひしめき合っていたのだ。


「な、なんですか、これ!?」

「え、食材……ですが」

「じゃなくて、この量ですよ!」


 三年前の隕石落下以来、原因不明の食糧不足が人々を苦しめている。

 それはもう、食い物強盗なんて言葉ができるくらいには、深刻な問題なのだ。そんなご時世に、この大量具合。尋常じゃない。


「そ、それは……」

 リロルさんはしゃがんだまま言い渋り、どうしようかと迷っている様子だ。

 どうしても言えないことなのか……

 協力したいのは山々だが、こんな不審なことで本当に俺は手を貸していいものだろうか?

 しかも、


「こんなに食料たくさんあるなら、リロルさんが料理すれば良かったんじゃないですか? レトルト食品とかもありますし」

 湯煎したり、レンジで温めればいいものもたくさんある。

 たしかに栄養はあまりないかもしれないが、ティアラちゃんがこんなになってしまうまで食べさせられないことはなかっただろう。

「そうなん、ですが……」

 んー。

 どうも煮え切らない反応だな。

 やっぱなんか怪しいし、最悪警察とかに届けた方が――

「……それならば!」

「え?」

「傑殿が今から料理をしてくだされば、ティアラ様のサイン入り写真集をプレゼントさせていただきます!」


「っしゃああああああああああああああ! キッチンはどこですか!?」


 理由なんてどうでもいい! 今はティアラちゃん救済が先決だよな!

「あっちの奥です。あまり触ってないので使えるか不安ですが、おそらく大丈夫かと思われます」

「じゃ、栄養満点で消化に良いものが良いですね! すぐ作ってきます!」

 俺はダンボールからありったけの種類の野菜と卵、白米を取り出してキッチンへと向かった。


 待ってろよティアラちゃん! それと写真集!


5話目でした!

相変わらずリロルさん好き。

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