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腹ペコ姫がへそを捧げてくるので俺にはもうどうしようもない!  作者: 蒼真晟仁
第一章 へそ美人姉妹と出会ってどうしようもない!
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男装美女に迫られて

 やーっと放課後。

 制服に着替えた俺は、教室を出て昇降口へ向かっている。

 今日は稀に見る過酷さだったなぁ。


 休み時間の度に女性陣から集団リンチされ、授業の度にバジル様に睨み殺されそうになり……

 時間が経つのが非常に遅かった。


 けれど。けれど、だ。


 なかなかに散々な一日ではあったが、俺の気力はまだ死んじゃあいないぜ。

 なぜなら、今日は商店街で買い物をするからだ!

 昔からお世話になってる商店街で、知り合いも多い。あそこでいろんな食材を売って活気づいてる人たちの雰囲気に触れると、元気もらえんだよなぁ。

 価格の異常高騰でその日の飯を考えるのも難しい。

 あのティアラちゃんでさえ、こっそり食い物強盗をしちゃうくらい。

 三年前の十倍……下手したら百倍跳ね上がってるものだってある。

 けどだからこそ! あそこの人たちは自給自足という選択肢をとってる。

 みんながみんなってわけじゃねーけど、商店街で結構デカい畑とか農場とか持ったりしてるからな。

 そこらへんの店より遥かに安い待遇価格で食べ物が買えるってわけだ。

 おまけもたっぷりしてくれるし!

 悪い一日も、美味い飯を食えば全部帳消しにできる。

 今日は野菜炒めか、たまには魚でも焼こうかな。

 こんな楽しいことを考えてたら、重たかった足も弾むってもんだぜ!

 学校の廊下は走っちゃ行けないなんてこと忘れて、俺は軽快にスキップをしていた。


「きゃっ」

 けど、早速人にぶつかった。

 しかもなんかワンダフルな弾力があったような……そしてすんごく柔らかかったような……

「あ、えと、すみません! 大丈夫ですか?」

 あぁ……こいつは土下座もんかな?

「いえ、こちらこそ! 申し訳ございません!」

「え!? いやちょっと、頭上げてください!」

 なんでこの人が土下座してんの!?

「私の主がとんだ無礼を……! どうか私を代わりに罵ってください。さあ!」


 バッと立ち上がった声の主は、両手を大きく広げて自分が無抵抗であることを示している。

 紳士もののスーツ姿だったから気付かなかったが、この人女性だ。

 背も一七〇くらいあんのか? 

 んで、すっげースタイルいいのな。今大の字になってるから余計そうなんだが、胸がブラウスのボタン弾き飛ばしそうになってんの。

 面長の目に、泣きぼくろ、そして鎖骨もくっきりしてて。

 男装してるくせに色気が隠せてねー!

 おっ! へ、へそも!? へ、へそが見え! 見え――

 じゃなくて!


「い、いいですから! とりあえず落ち着いてください」

「そ、そうですか? しかし……」

「というか主って、もしかしてバジル様のことですか?」

「ええ。……あ、遅れました。私、皇家で使用人をしております、リロルと申します」

 皇家……ティアラちゃんとバジル様の家だ。

「あ、ご丁寧に……。俺は静寂音傑です」

 ここが会社とかだったら名刺交換でもしそうな勢いだな。

 こんな面会嫌だけど。

「やはり、傑殿ですよね! 良かった。……では、行きましょう!」


 ど、殿……?

 この人もなかなかキャラの濃い人だな。見た目は褐色の良い美人さんだが、皇家の関係者ってみんなこうなのか?

「行きましょうって……え?」

「バジル様の無礼は私の無礼です! ですから、何か償いを! さあ! 私の手を取ってください! 今すぐ屋敷に参りましょう!」


 宝塚女優顔負けの爽やかスマイルに、キビキビした動き。

 ついでに胸は揺れるはへそは見えるは良いことずくめ。

 見た目がこれだからすっげーしっくりは来るんだけど……


「いや、いいです。俺、急いでるんで」


 やだよ! ただでさえあの人に苦手意識持ってんのにこれ、バジル様の家行くってことだろ!?

 それに無礼つっても大したことじゃないし、何より商店街のおじさんおばさん、そして食材が俺を待っている!

 俺は軽く会釈だけして立ち去ろうとした。


「ま、待ってください!」

「いやだから別に大丈夫ですってええ!? な、どうしたんですか!?」

 帰り際、腕を掴まれたから振り向いてみれば、リロルさんはこの一瞬で号泣していた。

「た、助けてください……! ティアラ様が、ティアラ様が……!」

「ティ、ティアラちゃんがどうしたんですか!?」

 これは聞き捨てならねー!

「ティアラ様が、とにかく大変なんです。お願いします、傑殿の助けが必要なのです。彼女のへそは、あなたに掛かっているのです!」


 鬼気迫る顔で俺に懇願するリロルさん。

 そうかこの人、皇家の人間ということはティアラ様の使用人でもあるのか。

 こんな風に頼まれたら行くっきゃねーだろ!


「なんかよく分からないですけど、俺に手伝えることならなんでもやりますよ!」

「ほ、ほんとですか!?」

「はい! ――って、うおおおお!?」


 承諾すると、リロルさんは俺の腕を掴み、全力で駆けだしたのだ。


4話目でございました!

リロルさん何気にかなり好きです、はい。

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