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ギルドの人「えっと体力測定が終わって次は職業ですが・・」
「・・・宴会奉行だ」
ギルドの人「ふえ?え、えんかい?」
『あー。2人とも。冒険者になります』
ギルドの人「は、はい。それでは次は副職業ですが・・人気の剣士なんてどうでしょう?」
「・・・『鍋奉行』はないのか?」
ギルドの人「ふえ?な、なべ・・・」
『剣士でいいです。もうなんでもいい』
ギルドの人「・・分かりました。副職業は剣士で登録しておきますね。それではこのカードは・・」
『もういい。とっととよこせ。こんな事務的段取りではなくてな。ほらクエストだよ。早速一番難易度の高い件を受注する』
!!!
ざわ・・ざわ・・
ギルドの人「A難易度の銀狼退治がありますけど!本気ですか?誰も成し得てないんですよ!?」
【銀狼】
狼の上位種。シルバーウルフとも。狼と違い単独での生態を好む
非常にプライドが高く、高度な知能と恐ろしい戦闘力を持つ
並の人間ではとてもたちうち出来ないだろう
『ああ。それでいい。俺が初めての伝説になってやるよ』
ギルドの人「・・分かりました。健闘をお祈りしています!期限は1週間。報酬はーー」
(ププ・・誰がやるかよ)
「・・・大事な用を思い出した」
『キリガクレ・・酒場が隣接してるのは分かるがな。もう少し付き合え』
「・・・」
『お前しかいなかったんだよ。この海洋大国『イマガ国』で武具・・まあほとんど弓だな。調達に供する手錬は』
「・・・」
『泣きそうな顔しないでくれる?だいたいお前に兵の調練やらせたら。いつの間にか練兵場ごと宴会場になってたとか、どんな伝説だよ』
「・・・調練の初歩だ」
『・・・。あきらめろ。ちゃんともうすぐ帰るから。ここで目的を達成できれば、な』
(魔王国。人口は確実に増えてる・・が。兵力が増えない。つまり調練。『統率』の高い人材が早急に必要だ)
キリガクレ・サイゾー
職業:冒険者
副職業:剣士
------------
Lv:5
Hp:45
Mp:0
ちから 6
まもり 7
すばやさ 3
うん 12
『スキル』
なし
『魔法』
なし
(しかしこのギルドカード・・いい加減もいいとこ。なんだよ運って。てかキリガクレ体力測定やる気なさ過ぎだろう・・・俺も似たようなもんだが)
ドタッ!ドタッ!ドタッ!
男「おい!新人!お前だよお前・・ちょっとツラ貸せや」
(・・・きたか)
男「そのクソステータスでA級難易度の銀狼退治ってマジか?こいつはとんだ命知らずが来たもんだ!」
『・・・』
男「おいっ!みんなっ!笑えっ!」
ワハハハハハ
ワハハハハ
ワハハハ
『チェッ・・『統率』5のゴミが。一般人にしては高い『政治』12でうまく立ち回っているのだろうが』
男「あ?なんだ?」
『1つ聞く。お前がこのギルド登録者の・・トップか?』
男「ちげえよ?トップは『カシナート』さんだ」
『誰だ?』
男「同じ銀狼退治を受けて銀狼山に行った。お前と違って本物だ。なんせあの人と闘ったら気付かぬウチにーー」
『なるほどなっ!銀狼山か。ありがとな』
男「おいっ!てめえっ!話はまだっ・・!」
ーーーーー
ピィ~ヒョロロロ・・・
「・・・似合うか?」
『似合ってるんじゃねえの?よくそんなパーティー用のカツラ1つで上機嫌なれるよな』
「・・・♪」
『てかカツラ置いてるとか。さすが海洋資源を基に発展した商業大国『イマガ国』。なんでもあるなホント』
「・・・近いぞ」
『なにっ!?』
アオーーーン!
オーーン
オーン
(ギルドのトップ・・この銀狼山に来てる、はず。荒くれ者を束ねるトップ。間違いなく『統率』は高い)
『いいかキリガクレ?金で解決すればいいが・・仲間に引き込むには。最悪力業も、ありうる』
「・・・」
『ウチもナリフリ構ってらんないんだ。クク・・無理矢理にでも魔王国の『将』になってもらうぜ?』
「・・・あれか?」
『・・・』
カシナート・ノケン(35)
格付け:D
職業:魔術師
------------
政治 38
武力 47
→『ステータス』
Lv:29
Hp:0/122
Mp:0/94
武勇 18
統率 30
魔力 65
『スキル』
水魔法(2) 幻惑魔法(1) 毒魔法(4)
『ユニークスキル』
死毒
『経験値』
ーーー
状態:死亡
『死んでるじゃねえかああああ!シ・ボ・ウ!!』
「・・・どうする?」
『どうしたもこうしたも。ハァー神様でも死亡は治せねえよ・・・ん?』
ノソッノソッノソッ!
「アオーーーン!!グルッ・・グルルルッ!!」
『銀・・狼?まさかコイツにヤラれたのか?』
「・・・くるぞ?」
シャッシャッシャッ・・!
「グルルルワワッ!!」
『は、速い!?』
「・・・忍術。【酩酊の術】」
【酩酊の術】
対象を一体、酒の力で酔わせてしまう恐ろしい術!
この術にかかったら最後・・・!
『酩酊』状態となり能力が著しく低下してしまうっっ!!
発動には一合の酒が必要だっ!
(いやお前・・ここでも酒かよ)
「グル??グルルルッ・・??」
「・・・勝負あった。強度のイマガ国特産【ヨシモトの酒】を媒体にした。この酔いからは逃れられない」
(お前。いつ買ったんだ)
「なつ・・かしい味」
『!!』
「フゥ・・最後に飲んだのは・・何年前だったカ」
『銀狼が!?喋れたのか!』
(たしかに銀狼は知能が高い・・が。ここまでハッキリと喋れるはずは)
「一時期仲良くしていた若造がいてナ。よく飲んダ。飲ませてもらっタ。」
『フン。孤高を好む銀狼さんが仲良く、ね。高い知能だ。それで言葉を理解したか』
(しかし喋れるようにまでとは。どんだけ知能高いんだコイツ・・・ん?知能・・)
『・・・』
ヨシ(57)
格付け:C
職業:銀狼
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政治 32
武力 57
→『ステータス』
Lv:48
Hp:162/227
Mp:0/0
武勇 61
統率 62
魔力 48
『スキル』
連撃 咆哮 軍略家 恐怖付与 魔法耐性 人語理解
『ユニークスキル』
誇り
『経験値』
236P
状態:軽傷
『やっぱきたあ!『統率』50越えっっ!どころかレアスキル『軍略家』持ちィィッ!!神きたあああ!!』
「?なんなのダ。ウヌ達は我を殺しにきた輩でハ・・?」
『へへっ。なわけねーだろう。こんな貴重な銀狼さんをよお?』
「・・・飲るか?」
『キリガクレお前・・・用意がいいじゃねえかっ!よっしゃ!治療を兼ねた接待の開始といこうか!』
「グ・・ヌヌヌ?」
ピィ~ヒョロロロ・・・
「・・・何故酔わない」
『キリガクレお前。負けたみたいな顔するなよ。言っても銀狼様だぜっ?あーどうだい?体の具合は?』
「すまぬナ。体まで手当てしてもらっテ。そして・・懐かしい酒ヲ」
『いいってことよ。酒を酌み交わした仲だ。それよりさ?ぜひともウマイ話がーー』
「本当ニ。懐かしい酒ダ。20年前だったカ。山に迷いこんだ若造に会ったのハ」
『ん?』
「ヨシモト、という名の若造ダ。助けてくれたお礼にと色々習っタ。酒と肉をぶら下げてどこからともなくこの山に来ては、度々ナ」
『へえ。それで高い『統率』にスキル『人語理解』と『軍略家』か。フフ・・お前さんにも武の才能あったと思うぜ?『統率』ばかりは中々上げたくても上がんないからなあ!』
「『統率』?ヨシモトは武人の話云々が好きでナ。フフ・・聞いてもいないのニ、ヨク武とは~軍とは~とナ」
『いいねえいいねえ。それで?』
「名前もつけてもらっタ。アヤツの文字を一文字もらい『ヨシ』とナ。フフ・・アヤツは今頃ドコで何をしているのカ・・」
ピィ~ヒョロロロ・・・
「フゥーーッ・・・」
「・・・酒が切れたか」
「痛みいル。最後に大事ナ事ヲ思い出せタ」
「・・・なんの」
「・・・」
「・・・」
(なんだ・・・?急に空気が?)
「ーーここからは我ガ『誇り』。死場所カ。強いモノと戦って死ヌ事こそ本懐ダ」
「・・・やめておけ」
「グヌッ・・!我は本気ダッ!」
「・・・お前は勝てない」
「勝てなくトモ、ダッ!」
シャッシャッシャッシャッ・・・!
アオーーーーン!
「『咆哮』からの『連撃』ダッ・・!」
「・・・造作もない。ユニークスキル『危険察知』で回避」
「グヌッ!これハどうダッ!」
シャッシャッシャッシャッ・・・!
アオーーーーン!
(おいやめろ・・・やめてくれ。お前は貴重な。大事な仲間になるんだ)
『キリガクレ。絶対殺すな。生け捕れ』
「・・・元より」
シャッシャッシャッシャッ・・・!
アオーーーーン!
オーーーン・・
オーーン・・
(仲間になるんだ・・)
ピィ~ヒョロロロ・・・
「グヌッ。ミゴト・・・」
「・・・」
「クイナシ、ダ」
『【アルテミスの水】が効かない・・クソッ!』
「ヌヌ・・ありがたいことだガ。我はモウトックニ・・」
『まさか・・銀狼お前、先の魔術師とヤリあったよな?』
「いかにモ」
『その時・・『死毒』を受けたか』
「・・・死毒!!」
「許せなかったのダ・・!武人たル我がっ!あのヨウな姑息な技で相討ちなドッ!我を獲物のような目デッ!」
『・・・』
「我ヲッ!モノのような目デッ!」
『・・・』
「我ハッ誇り高き『銀狼』ダッ・・・!」
(致命傷。一度死亡してなお、生き延びる執念・・誇りか)
「認めタク・・無かったのダッ!」
「・・・介錯を」
「ウヌらには感謝していル。最後に武人としての誇りヲ取り戻せタ・・・」
『骨は何処がいいか?』
「この山の赤の木ニ。初めて若造と出会っタ場所ダ」
『理解した』
ピィ~ヒョロロロ・・・
男「おいっ!『カシナート』さんの死体もビックリだがこっちはもっとだ!みんな!来て見ろよっ」
ザッザッザッ・・・
男「へへっ。新人。悪い事は言わねえ。そのお宝を渡しなっ!」
『お宝?』
男「知れたこと。ギルドの報酬から体中の素材まで余すことなく使ってやるぜ?こんな犬1匹がたいそうなドル箱になるのよ!」
『断ると言ったら?』
男「ああ?お前?まさか!断るつもりか??ヒャッハ!クソステータスの新人が。生きてかえさーー」
ズシャアアアア!!
ズシャッ!ズシャッ!
ズシャアアアア!!
「・・・マズかったか?」
『いや、問題ない全く』
「・・・そうか」
『意外だな?』
「・・・?」
『お前がキレるなんて』
「・・・銀狼。酒を酌み交わした仲だ」
『というと?』
「・・・つまり仲間だ」
『仲間・・・か』