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タッタッタッタッ・・・


『クソッ・・・俺の・・杞憂ならいいがっ・・!』


「・・・異常なし」


『キリガクレお前・・頭にネクタイ巻いてるとか・・・何処で覚えたんだよ。ってかどこからそんなん調達して来たんだよ。絶対宴会中だったろ今。何、ヤベーってなって急に見回りしてるていでいるんだよ。異常おおありだろう。主にお前の中で』


「・・・わかるか?」


『なんでちょっとネクタイ褒めてもらったみたくなってるんだよそこで・・だいたいお前。宴会感が近代的過ぎ。絶対女神の入れ知恵だろこれ。ってか何故に。こんな真夜中に凝りも無く宴会開いちゃってるんだよ。十勇士だよね?お前』


「・・・宴会奉行だ」


『そこムッとするとこ?誇り持ってる感じ?それもう職業じゃねえから多分。つか!それどころじゃないんだよホントに。ヤバいんだ。一緒に来い。何故かお前No2だし。これは神としての命令だ』


「・・・戦いの最中だ」


『えっ?戦い?お前異常無しとか言ってなかった?』


「・・・失礼する」


『・・・』


タッタッタッ・・・

タッタッ・・・

タッ・・・


『・・・異常なし・・・ですわ』


『いや、ヤベーってなんなくていいから。何処に頭にネクタイ巻いた女神がいるんだよ。だいたいお前が何やってたか割れてるんだよ。つか異常もクソも。とにかく一緒に来い』


『えっ?マ?こんな夜更けに?まさか・・ハッ!わたくしの魅力に今宵の月の美しさが重なってついに!美しいことは罪・・・罪ですわー』


『・・・その夜更けまで宴会やってるバカは何処のどいつだよ?お前ホントに何しにこの世界来たの?完全にただのエンジョイ勢と化してるよね?とにかく来い。言ってもお前不死身だし。ちったあ働け』


グイッ・・・


『あーーれーー』


パカッパカッパカッ・・・

パカッパカッ・・・


『ウィ~ヒクッ。これより我ら修羅に入る!鬼とあらば鬼を斬り仏とあらば仏を斬る!』


『ウッ・・酒くさい・・頼むから。本当に頼むからお前、馬から降りて走ってってくれない?馬に乗れない女神とか斬新過ぎるぞ。頼むから降りてって。足軽みたく走れ』


『あれ?そいえば。【魔王】くんのトコにはいかないんですか?』


『・・・。ああ。ってか見ての通りもう。城下町周辺だ。俺達がいる本丸・・王宮みたいなもんか。を出てな』


『よくよく見れば立派な城ですよねえ~。どこぞの巨人に備えたかのような立派な塀垣。その中にある・・ゆうに10000人は収容できそうな城下町』


『城下町・・つまり二の丸。をひっくるめて一つの『城』だ。王宮なんざただの天守閣。いざ籠城戦になろうもんならこの城下町が主戦場、ってもんだ。出入り口は四方の立派な門。昼間は人口集めのため開放してるがな』


『夜は門、閉めていますし。【勇者】の狙いは【魔王】のクビ一つ。尚更今、城下町に繰り出す意図が分かりませんが・・・ハッ・・本当に・・夜の・・デ、デート・・・』


『・・・。街中に『殺人狂』が紛れ込んだかもしれない懸念、だ。本人の意思とは関係なくな。【魔王】のことは、いい。元々アイツが蒔いた種だ。アイツがケリつけろって話だ。最悪の展開はその『殺人狂』がせっかく集まりつつある住人を殺して回る、ってことだ』


『その『殺人狂』さん。話には聞きましたが・・・なんーか引っかかる点が・・』


パカッパカッパカッ・・

パカッパカッ・・

パカッ・・


『どう・・どう・・。ようやく着いたか・・』


「お主は・・・昼のっ!」


『よう。その節は、な。俺は昼は農民だがな。夜はこうして街を見回る自警団だよ。なんせカオスな新興国だ。どこぞの禍々しい剣を持ったチャーミングなネコ耳の『殺人狂』さんが街中に潜んでる可能性も・・・あるだろ?』


「そ、そうかっ!いや夜分までご苦労なことだっ!私もこの国の一員になるからにはっ!身を粉にしてお主のように何かしたいっ・・コン!」


(あ・・あれ?)


『ヨウコさん・・・?その・・今・・・誰かを殺したくなったり・・しない?するでしょ?剣、持ってるもんね・・装備してるし』


「コン・・?ああ、この剣な。眠れなくて剣を振るってる。本当に眠れなくて・・体中が興奮してる。これからの。新しい生活の期待感。それに・・コン・・ユキムラ君のコト。ねえ私は。本当にいいのだろうか?こんなに幸せで・・」


(えっ?あれっ??これってまさか・・【森羅万象ウキペデア】先生がやっちゃったりするヤツ?いやありえん・・・どうなっている)


『『呪いの順応化』、ですわ』


『!!』


「コン。すごいなお主ッ。この【魔剣ムラマサ】を一目で呪われていると見抜いた。ばかりか私が順応化してるとまで・・・」


『小さい頃から長年持っている・・装備していると馴染む、ってヤツですわ。その武器の呪い効果が無効化される』


「いかにも。私はこの、ふた剣を幼少期より持っていた・・・持たされていた。結果的に私にこの剣の呪いは効かない。ばかりか装備条件もクリアできる。だが私以外が装備すると・・・ごめんな農民殿。報酬として渡せないのはそういう理由・・です」


『あ、ああ。いえ。なんかこっちもスイマセン。ってか俺。ただのキチガイじゃねえか?これ。睡眠時間まで削って・・・』


『その【魔剣ムラマサ】は一般人が装備すれば様々な症状とHp・・生命力を奪っていく!恐ろしい魔剣なのですわー・・・ムフッ。でもわたくしにはそんなことより。ヨウコさん。報酬払いにお困りでしたら耳よりなお話が。良ければ報酬代わりに性奴ーー』


『!!・・・今。なんて言った?』


『性奴隷?ですの?・・・ハッ!この上玉はわたくしの獲物ーー』


『イヤ。なんでそこで山賊ぽくなるんだよ。てか頭のネクタイとれよ。いい加減。ハーッ・・・ヨウコさんよ。聞きたいことがある。あんたはその。倒れる寸前まで愛剣とやらを装備、していたか?』


「して・・いたが?その・・急にこの辺の城下町で倒れてしまって・・・」


『なるほどな。それでユキムラ君が見つけて俺が治療したってわけだ。だけどあんた、体はピンピンしてたんだよ。それこそ生命力は全快状態。何より呪い状態で無かったしな。クソッ・・・よくよく思い出せばそん時に順応化してる、ってわかるじゃねえか・・』


「ごめんッ。重ねて礼を言うッ!魔力切れを起こしてしまっテ・・・」


『そうなんだよ。その魔力切れだよ。【魔剣ムラマサ】が原因で倒れた、ってないんだとしたら。この魔力切れ。どう考えてもオカシイ』


「オカシイ・・?」


『ヨウコさんよ、あんた。魔法使えないだろう』


「!!」


『魔法を使えて初めてMp・・・魔力量は発生するからな。Mp0のヤツはこの魔力切れの概念が無いから中途半端なMp持ちよりいい・・ってのは今どうでもいいか。あんたが魔法を使えないとしたら。どうしてMpがある?そして魔力切れを起こした?なんか隠してるだろう』


「・・・これも私の呪い。私自身の。数え切れない人を殺した報いなのかもしれない・・」


『なんの話だ?』


「騙すつもりはなかった。本当だ!あの時はこの国に・・・ユキムラ君に受け入れてもらった喜びで・・・こんな血塗られた私を・・」


『・・・』


「私は。元は私の出自はーー大国ホージョー家の暗殺部隊、フーマという集団の一員・・・だった。それこそ幼少・・小さいころからずうっとな」


(・・・フーマか!この世界随一の暗殺集団!成程。大国さん、本気でトリに来てた、ってワケだ)


「小さいころから訓練の日々。寝る前は無理矢理この剣を持たされて呪いにうなされる・・・ツライ日々だった。一緒にいた同世代の仲間達も訓練で死に・・・任務で死に」


『・・・』


「『【魔王】をトル』これが私に課せられた最後の・・任務だった。渡されたのは少々の路銀と・・【フーマの幻薬】・・」


『!!』


「魔王国の城下町へ着き決戦の時も近いと踏んだ私は渡された薬を飲んだ・・途端。体から湧き上がるような力。今まで無かった魔力量も発生し・・そして何かが失われていく喪失感」


『【フーマの幻薬】ってヤツは。まあ言っちゃえば魔法の劇薬だからな。一時的に大幅レベルアップ・・身体能力の大幅強化。強化された体も魔法を覚えたと錯覚し使えない魔力量まで発生する劇薬だ』


(本当の効果はLvの一時的な1.5倍化。それにともなう能力値の増加。ただし武力50以下の者にのみ有効。初期症状としてMp減少・・そして)


「私はそこまで知らなかった。知らされてなかったんだ・・。ただ・・これを飲んだら3日以内にカタをつけろ、ト」


(3日間で代償として、死ぬ。パッシブ効果もろもろ神眼でも見切れやしない。神をも欺く禁断の麻薬・・)


「隠していたワケじゃない・・コン・・・私は・・私は!自分がどうかなってしまうのか怖くて!口に出すのも怖くて・・!まして先のこんな夢のような出来事。『得体のしれない薬を飲んだ』、という事実を早く忘れたかった・・・」


『いやはや。成程。なるほどねえー。その話を聞いて。ヨウコさんの異様なレベルや武勇にも合点がいったよ。いやドーピングなしでも良くそこまで頑張ったって話だよな・・・スキルは自前でそこまで、ってワケだし』


「レベル・・?武勇・・?と、とにかく教えてくれッ!私は・・・3日で・・3日でどうなってしまう?」


『ホジホジ。ま。死ぬでしょうねえ?全身から血という血を出して。醜くブシャーって。体の拒絶反応?とにかく痛い。死ぬほど。あっ!てか。死ぬんでした!てへぺろですわ』


(コ、コイツ。本当に【創造と平和の女神】か?絶対何かの間違いだよな?)


「コン・・なる・・ほどな。イヤあの効果・・・なんとなく・・分かっていたよ」


『?ホジホジ』


「当然の・・報いかもしれない。血塗られた私には当然の・・今までの罪を無視して一人幸せになろうとなど・・・許されるワケなども無かった・・」


『そんなことより。性奴隷って言葉知ってますの?よろしかったら、ですけどーー』


「有難い・・申し出だが・・・私にはどうやら残された時間が・・・」


『どこぞのバカがからかってやがるがな・・・イヤホント。鬼だわ。悪鬼羅刹の生まれ変わり。『治療』したんだよ治療。フフ・・・フーマにエグイ劇薬があるんなら魔王国にもエグイ治療薬があるってことだ。』


「っ!?どういうことッ?」


『今のあんたは健康そのもの。劇薬の後遺症もすっかりな。ほら、今はもう湧き上がる力は無いだろし自身の魔力量ももう感じないだろう?』


「コンッ・・!目が醒めてからというもの・・全く!」


『ま、そういうことだ。クク・・命を救ってやったんだ。これは高くつくぜ?』


「まさかそんな・・そんな・・」


『良かったですわね。ヨウコさん。本当に良かった・・』


「これからずっと・・・夢を見られる?こんな私がか?」


『フ、フン。まあ。帰るか。結局俺。夜更かしまでして何したかったんだよ・・・あーヨウコさんよ。これからしっかり働けよ?あんたの居場所がここだ、って言うんならな?その鍛えた体でこの国を守れって話。クク・・休めると思うなよ?なんせA級の貴重な存在だ』


「ウッ・・ウッウッウッ・・コンッ・・コンッ・・!」


『良かった・・・良かった・・!』


『おい、帰るぞめが・・・えっ!?なんで一緒になって泣いてるの?お前が泣く要素あった?てか散々死を煽った挙句性奴隷の勧誘してなかった?あー・・酒入って泣きのスイッチかよ・・・どんだけ面倒くさいんだ・・』


(まあ治療なぞ安いもんだ。なんだかんだーーいいコみたいだしな。)



『フーマ。フーマか・・超一流の暗殺集団・・・ん?あれ?・・・超一流・・随一の・・・』


「コンッ・・コンッ・・・!」


『・・・。大将のお気に入りだ。アフターケアも万全にしてやるよ』

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