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『・・・』
【魔王国】
当主 ユキムラ
軍師 なし
内政奉行 なし
内政値 27/753
人口 325
兵力 57
城ランク S
特産 魔力鉱山 軍馬 水源
『クソッ・・・俺がこっちに来て1週間とちょっと。侵略まで恐らくあと3週間無い。最低でも兵力をこの10倍にか。内政も壊滅的だしよ。正直どこから手をつけていいのか・・・』
『どうやら・・お困りのようだな』
『お前はっ・・!』
キリガクレ・サイゾー(0)
格付け:A
職業:十勇士
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政治 6
武力 77
→『ステータス』
Lv:32
Hp:282/282
Mp:154/154
武勇 76
統率 43
魔力 85
『スキル』
忍術(4) 暗具(3) 闇魔法(2) 幻惑魔法(2) 諜報 上忍 魔族
『ユニークスキル』
危険察知
『経験値』
0P
状態:良好
『過去のことをとやかく言うつもりじゃねえんだがな。お前だよお前。たしかにお前に言った。神託した。『ちょっとそっちに行くから迎えに来て』って。普通来るよね?俺一応神様なんですけど??』
「返す言葉もない・・あの時はどうしても・・・スマン」
『・・・何かあったのか?俺が来たあの日。魔王城で』
「・・・宴会だ」
『・・・』
「・・・今度来るか?」
『お前どんだけ宴会マニアなんだよ。いやもういいんだわその件は。そんなことより。この国の兵力だ兵力。兵力57。即戦力の山賊はいいとして。一般人でも兵になりたい、といった声がチラホラあった。のに、プラスされた兵力は山賊ども・・あと一般の獣人くらいか。これが何を意味するか分かるか?』
「・・・神よ。カラオケ、というものを知っているか?」
『・・・。一般人は『兵力に足りうる精度が足りない』ってことだよ。つまり調練。練兵が早急に必要だ。裏方のお前にこんなこと頼むのなんなんだがな。お前は十勇士で唯一『統率』がマシなんだ。本来なら別口を用意する手筈だったんだがな・・クソッ・・ちょっとスワ国でトラブって・・・』
「・・・神よ。野球拳、というものを知っているか?」
『お前の頭の中マジで宴会だけかよ。頼むから一般人の調練やってくれよ。その後宴会でも何でもやれって。大体お前なんでここにいるの?今日の朝から勇者どもの波、結構すごいだろ。まあそろそろこの国の『魔力鉱石』のヤバさに他国も気付く頃、だとは思っていたがな。とにかくーー』
「・・・時間だ」
『は?なんの??まさか勇者どもの集中攻撃・・』
「・・・宴会だ」
『・・・』
「・・・失礼する」
『・・・』
『クソッ・・・!『軍事』は後回しにするとして。とりあえず『内政』だっ!』
スタスタスタ・・・
んっ・・?
『おやおやあ~?今『許してくれ』って言いました?言いましたよね?逆の立場で考えましょうかあなた・・・許します?許さないですよね?命をつけ狙った者を許すって・・そんな神様のようなお方この世にいるんですかねえ?というか・・・あなたは殺すつもりだった失礼なお方だったワケですから。そういう方はこちらがどんな殺し方をしてもいいって事になりますよねえ?フフ・・・生きたまま内臓という内臓を出してみましょうか?それで・・ウフ・・野犬にでも食べられる様をしっかりと見届けて頂きます。新鮮なあなたの内臓を。ああ意識についてはご安心を。特別な薬がありますから。ヒヒ・・痛みが数十倍になる特製の・・・え?『何でもします』?そうですねえ・・・わたくしも鬼ではありません。性奴隷として一生ーーー』
「す、すごいなサルトビ。あの姫様・・ワタシらが倒した【勇者】を・・・」
「ああ、ユリ。『殺すのはちょっと待って下さい。お情けをかけたいのですわ』、なんてとんでもねえ・・!あんなの・・殺すよりよっぽどひでえ恐怖だ!見ろ・・女【勇者】のヤロウ。白目むいて・・ションベンまで漏らして!姫様が敵だと思うとゾッとするぜ・・・」
(・・・)
スタスタスタ・・・
『や、やっと着いたか。疲れた。ホントに疲れた。主に精神面で』
「やあ!先日は無様な格好を見せてすまないね。見ての通りだ!もうすっかり回復したよ!」
『おー感心感心。散歩はさすがにヤメたか。そしてそこの『聖女マリア』さんと仲良く作戦会議と。いや、【魔王】様らしくなってきたじゃないか』
「さすがに・・ね。十勇士に止められたし。俺の体はもはや一人だけのものじゃない、と。良く分かったんだ。今はこうして・・・マリアさんに今のこの国の政治の状況を説明してもらっている」
『・・・嬉しくて涙が出そうだよ。イヤホント。成長したなあ。本当に成長した。ちょっと暗い出来事が立て続いたんでな・・涙もろくなってる。で・・・フフ・・どうだ?政治のさわりは理解出来たか?なんなら今『灌漑整備』とやらを少しやってみるか?』
「理解?イヤ全然。というか何を言ってるかさえ分からない」
「今、12回目です、12回目。【魔王】さんに説明するの。マジで全然。全然理解してくれない。ビックリするくらい全然」
『・・・』
「アハハッ!12回どころかっ!100回聞いても理解できないよっ!マリアさんは頭がいいんだねっ!」
『おい・・・マリア。話がある。今すぐに。あー・・・【魔王】はもう、いい。トップだしな。来るべき日に備えて。しっかり体を休めてくれ。絶対城内で。絶対城内でだ』
「そうかい?なんか悪いねっ!じゃあ早速!夕食の下ごしらえをするとするか!」
ダダダダダッ・・・
『は、早いな』
「早いですね?よほどイヤだったんでしょうか?」
『まあ、どうでもいい。本当にどうでも。マリア・・・大事な話だ。お前はその・・この国のために本当に働く気はあるか?』
「えっ?この通り頑張って働いてますけど・・今は民を代表して。居住区の再振りあてを【魔王】さんに陳述ーーー」
『そんな長老みたいなことはどうでもいい。どこぞのジジイにやらせとけ、って話だ。じゃ、なくて。この国の内政の状況はある程度理解しているよな?ハッキリ言わせてもらう。そのレベルに到達してるのはこの国でお前一人だ。マジでお前一人。つまりまあ・・この国は政治がヤバいんだよ。無政府状態』
「えっへん。こう見えてもワタシは。修道院で英才教育を受けていましたからね。『灌漑整備』から『施設立案』『商業開発』まである程度は理解しているつもりです」
『ほ、ほんとか?いやあやっぱりお前。聖女だよ。マジ聖女。地獄に仏とはこのことだ。それでは本題に入るぞ?お前・・・この国の『内政』をやってみないか?それも民の陳述とかそんな端っ切れじゃねえ。一手にだ。この国の全ての内政・・内政奉行。つまりトップだよ、内政の』
「えっ?」
『正直お前、経緯が経緯だからな・・祖国のオータ国に今は戻れないにしても・・いずれどうなんだろ、っていう懸念だ。『内政奉行』といやあ国の内政の責任者だ。つまりその国の将。オータ国とは敵国になるからな。祖国の土は最悪踏めなくなる。それでもやる覚悟があるのか?って話だ』
「・・・」
『な、なあに。内政っていってもな。魔王国っていっても元は面積の狭い『ウエダ』って地だった。そこにドカンとデッカイ城が立ったもんだ。元々土地の規模も小さいんだ。気楽なもんだろう?』
「やる・・・私が・・失敗・・出来ない・・・」
『そ、それからな?ここからが面白いんだ。お前の好きな『灌漑整備』。しかしこんだけ狭い土地だ。収穫量もたかが知れている。しかしな実は。コレをひっくり返す秘策がある、と言ったらどうする?その名も『2期作』。なんか新しいだろ?』
「こ・・怖い・・・」
『は?』
「経験・・ない・・頭では理解・・してる・・・こ、怖い・・おお・・神よ・・迷える子羊に救いの手を・・・」
『・・・』
「おお神・・よ・・!この恐怖から・・救いたまえ・・!ヒグッ・・ウウッ・・ウワアアアンッ!!」
『・・・』
「ヒグッ・・ヒグッ・・」
『マリア・・さん?やっぱりその・・・帰りたいのか?祖国に』
「えっ?それは全然。ここ料理ウマいし。魔王国最高」
『・・・』
ドタッ!
ーーーその日の夕食ーーー
なんたって魔王国は!民も当主も関係ねえっ!
当主様が作った料理を!デッカイ大食堂で食うのが習わしなんだコンチクショー!
ちなみに今日のメインはなあっ!十勇士様が野外で採った大きな大きな鶏肉を!
当主様なんと自ら!
両手で数え切れねえ香料で繊細に調理して!アッツアツの火力で短時間!
至極のグリルなんでえコンチクショー!
「いや~労働後はメシがウマイなあっ!」
「早速俺っちの作った罠にクソ勇者がひっかかったでえ!」
「ワタシはねえー!お城の掃除!頑張ったよ!」
「だいぶここの魔力鉱石の解析がすすみました・・・フム・・これはひょっとしてあんなことも・・」
「オレタチ・・ミチツクッタ・・・コレデサラニスミヤスクナル・・・」
ワイワイワイ・・・
「いやあ。ホント有難いなあ。この国のためにみんなが一丸となって頑張ってくれている」
「【魔王】様。今日の報告だ。勇者一行との全戦闘20回・・・くらい。うち、なんと。全員捕虜だ、全員。俺達は・・とんでもないお方を仲間にしたのかもしれねえっ。トップは捕縛数7のカケイだ」
「サルトビ~。みんなのメシの席なんだ。いいよ、いい。みんなよくやってくれた。ほらほらお前も食えよ~無くなっちゃうぞ~?」
「これは・・・スマン!失礼した!じゃあ遠慮なくっ・・」
ワイワイワイ・・・
ワイワイ・・・
ワイ・・・
「なんかいいですね。こういうのって」
『あら、性奴・・・聖女マリアさん。急にどうしたの?』
「ワタシ・・・この国好きです」
『えっ?』
「この国の人が好き。この国の空気が好き。この国の料理が好き」
『・・・』
「ワタシ・・やります。この国をもっと良くしたい。ワタシにしかやれないこと、というのなら。精一杯やります。やらせて頂きます。2人分でも3人分でも。ワタシはこのために生まれたのかもしれない。神に遣わされたのかもしれない。不安でいっぱいだけれどワタシ。『内政奉行』やります」
『えっ?えーと・・何の話・・・ですの?』
「あっ!そういえばっ!姫様といつも一緒にいるあの方は!?あのちょっと変な人」
『ちょっと変な人・・?あー!ですわ!』
「どうかしたんですか?」
『なんかストレスで倒れた、って聞きましたよお?どーでもいいんじゃないですかあ~ですわ?そんなことより。酒無くなっちゃいますのよっ!』
「フフッ・・・たしかに今この瞬間ではどうでもいいコト・・ですねっ・・・いいなあ。こういうのって。おお神よ・・この瞬間を過ごせる時を感謝します・・・」