始まりのゲーム神
目の前で断っても断っても同じ台詞を繰り返す王様を前に、僕は少し前の出来事を思い出す。
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「痛ってぇっ!」
マンホールの蓋が開いていた事に気付かず、スマホで【小説家になっちまおう】の小説を読んでいた僕【浅影士紅馬】は見事にマンホールに落ちてしまった。
まるで漫画だよ!
「‥‥‥って、ここどこ?」
マンホールに落ちたはずの僕は、何故か六畳一間の畳部屋に居た。
よく見れば、目の前にレトロなRPGゲームをプレイしながらポテチを貪る謎の美少女が居た。
ゲームに夢中で僕に気付いて無いみたいだけど、ここが何処なのか知ってるかも知れない。
僕は勇気を出して声をかけてみた。
「あの! すいません!」
しかし、ゲームに集中している美少女は気付いてくれない。
その後何度か声を掛けたんだけど、ひたすら無視された。
痺れが切れた僕は、美少女とテレビの間に飛び込み視界を遮って声を掛けた。
「話を聞いてください!」
僕が飛び込んだ先には足元にゲームの本体があったらしく、旧式のゲーム機に刺さっていたカートリッジ式のカセットが揺れてしまう。
結果、ゲームは見事にバグった。
「う、ヴォォォアェィォッ!」
とても美少女があげるとは思えない奇声をあげながら凄い勢いで立ち上がった。
「おまっ! 何してくれちゃってんの!? あのダンジョン、セーブポイント無いんだぞ!? 私の三時間無駄にしてくれちゃって何してくれちゃってんの!? バカなの? 死ぬの?」
美少女が一気に捲し立てながら詰め寄る。
余りの剣幕に僕はへたれ根性が出て土下座で謝った。
「謝れば済むとか、警察舐めてんのか!? 警視庁24時上等か、あぁん!?」
まるでヤクザに肩をぶつけてしまった様な訳の解らないセリフをぶつけられる。
警視庁24時上等って、どういう意味だよ。
「この私【ゲーム神】のゲームライフを邪魔して只で済むと思うなよ小僧!」
ゲーム神【?】の怒りを一身に受ける僕は、聞きたかった事も忘れて謝り続けた。
その時、謝る為についた右手が何かを押し潰した。
「‥‥‥あっ」
ゲーム神【?】のポテチだった。
「‥‥‥」
「おのーれ! 七代までもー祟ってくれるわぁ!」
こうして僕は、訳も解らないまま、ゲーム神【?】により、レトロゲームの世界へと無理矢理叩き込まれたのだった。