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緋色の世界で  作者: 子漆器 鉄火
第1章 南方大陸進出作戦
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3ヶ年計画の実り

 ――3年後、首都シェスティアにてパレードが行われていた。


 シェスティア宮殿の前にある大通りを人々が歓声を上げながら手を振る。

 その大通りの中央部をカーキ色の軍服を着て、手に新型銃であるAK-5を掲げ行進している。

 そして1個師団が通り終わると機甲師団が登場した。マーカ・クルーエル戦車、通称MC-1重戦車である。装甲は120mm傾斜装甲で主砲は122mm砲を採用した恐らく世界でもトップクラスの戦車である。

 その後ろから砲兵旅団のロケット自走砲が登場する。レッドラインの愛称で砲兵から愛されてるマグロク1自走砲だ。


 そして、それら全ての軍人が右斜め上へ手を掲げ、敬礼しながら通っていく。その目線の先はシェスティア宮殿のバルコニーである。

 そう、現在俺はバルコニーに立って手を振り兵士たちを激励している。

 今の人々から見たらそれは奇妙な光景だろう。まるで''戦争に行く兵士たちを見送る''かのようなパレードに見えるからだ。



 ――まあ、戦争は近いんだけどね。



 俺はほくそ笑みながらCIBの仕事ぶりを想像しつつ、その時を待っていた。








 ――ガイツ合衆国 ホワイトハウス


「第二文明圏にて怪しい動きが見られます」


 ガイツ合衆国大統領ルイス・カッシュは秘書のその報告を聞いて困惑した。第二文明圏がガイツ合衆国に楯突いたことになるのだ。


「何が問題なのかね?」


「……我が国が第二文明圏のマルタ王国に輸出している兵器が第三文明圏に流れた可能性があります」


「……それで?」


「まず、自国の兵器を売るにしたって我が国の視線を気にするはずです。そんなこともせず堂々と第三文明圏の手に渡した。その上、彼らには手持ちの兵器もないので自前がないのです」


「なるほどな……我が国に目をつけられてもよいほどメリットがあるわけか」


 その時だった。カッシュ合衆国諜報部の者が電話を入れてきた。


「すまない」


 秘書に一言断ってから電話に出た。


『どうした?』


『大統領……マルタ王国にて怪しいエルフの目撃情報が多数見られます』


『!!』


『恐らく……エルガストスの大国、ヨークテリア大帝国の工作員かと』


『目的はいったい……』


『分かりませんが、この大陸に火種を巻く行為をしているのには代わりありません。裏ルートを使いあちら側に抗議すべきかと』


『うむ、わかった』


 ガチャン、と電話を置いた大統領は、閣僚を集めて会議を開いいた。そして、正式にヨークテリア大帝国へ抗議することが決定した。






 ――ヨークテリア大帝国、王城にて皇帝ガルツァ1世は憤慨していた。


「我が国が工作員を送るわけないだろう!!」


「し、しかしガイツ合衆国の抗議が来ておりまして……」


 宰相は冷や汗を流しながら皇帝へ話をする。

 ガルツァ1世は非常に気性が荒く統治者には向いていないが、その男気のよさから国民の支持率が高い。


(宣戦布告とか言いませんように!)


 宰相は皇帝の気性の荒さを憂いており、いつも尻拭いを担当していた。


「ふむ……この問題を公のものとし、ガイツ合衆国へ抗議する。」


「は! (よかったあ!)」


 宰相は心のなかで安堵するのであった。しかし、彼は知らない。それこそが、とある国家の陰謀だということを。


 そして、ヨークテリア大帝国はガイツ合衆国へ抗議声明を発表した。

 これにより、ガイツ合衆国とヨークテリア大帝国との間に亀裂が入り始めた。







 ――マルタ王国、首都トルン某所にて。


「ほ、本当に……いいのですか!」


「我々の悲願が……」


「やはり先祖の祖国は我々を見捨ててなかった……!!」


 そこに集まっていたのは2人の人族と5人のダークエルフだ。

 ダークエルフ族はエルガストスにて忌み嫌われてしまい世界へとチリチリになった種族だ。エルフとの違いはエルフ族のように体型がスレンダーでないのと肌の色ぐらいだ。つまり、ただの根強い差別でエルガストス大陸を終われてしまった。

 そんな彼らの目標はひとつ、ダークエルフ族の国を作ることだった。そして、その独立運動のうちの1つがマルタ王国でも起きていた。

 そこに二人の人族の協力者が現れた。

 最初はマルタ王国の警察のスパイかと思ったが、彼らはヨークテリア大帝国のものと名乗った。

 エルフ族の犬が! と罵ったがそれでも彼らは挫けずに交渉してきた。

 ――曰く、今の皇帝陛下は先祖がダークエルフにした仕打ちを嘆いている……。


 ―― 曰く、ダークエルフ族には謝罪の意味も込めて独立してほしい、と。


 彼らの真摯な向き合い方にダークエルフ族は次第に信用するようになっていった。

 そして、人族の2人は言った。


「はい、いよいよヨークテリア大帝国から許可が降りました。武装蜂起し、マルタ王国を乗っ取り、ヨークテリア大帝国の同盟国であると宣言を出すのです」


「そして国家樹立後、ガイツ合衆国とは講話して完成です」


「幸い、マルタ王国は何故か(・・・)兵器を他国に対して輸出過剰で自国が疎かになっているようです」


「今しかありません!」


 ダークエルフ族の5人は5部族の長老と呼ばれる者達だったが、彼らは感動にうち震えた。自分が長老のときに国が独立するとは夢にも思っていなかったためだ。

 そんな彼らは満足げに笑う人族2人のカリスマ性に隠れた裏に気づくことはなかった。







 ――マルタ王国、王城の執務室にて。


「して、言われた通りガイツ合衆国の兵器は全て処分したぞ?」


「ええ、ええ、素晴らしいです。これで競争相手のいないマルタ王国に我が国の魔導兵器が渡せる」


「しかし、本当にそれを使えばガイツ合衆国を倒せるのかね?」


「ええ、第二文明圏の東端であるこの国がガイツ合衆国に宣戦布告しても奴等は離れているこの国に手をだすのは懐にダメージを受けます。そこへ我がヨークテリア大帝国の魔導兵器によりガイツ合衆国軍が粉砕されたとき、かの国は戦争継続能力は失われるでしょう」


「なるほどな!」


 そして、大陸統一を夢見るマルタ王国の王、ジョージ1世を協力者は冷めた目で見ていた。

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